糖尿病の発症者未発症者とくらべて2~3倍認知症になりやすい
脳が萎縮し心身機能が低下する脳内糖尿病とは
日本人の11人に1人が罹患し、今や国民病とも言えるのが糖尿病です。発病すると失明や手足の痛み、腎臓病など辛い症状を患者に与え、悪化が進むと人工透析まで必要になってしまい、多額の医療費が家計を圧迫することになります。
そんな多くの日本人を苦しめている糖尿病ですが、現在、新たな糖尿病が注目を集め始めているのです。
それは、脳内が糖過剰の状態になってしまう「脳内糖尿病」。脳内が「糖まみれ」になってしまうことで神経細胞が破壊されてしまい、脳が委縮し、心身機能が低下していくという病気です。
脳はブドウ糖を養分とする器官であり、糖質は不可欠の栄養素。
しかし、日常的に生活の中で糖分を多く摂取していると、脳はその状態に慣れていき、その摂取量を維持しようとしてしまい、常に「多くの糖分を摂取せよ!」と指令を出すようになります。
そうした状態が続くと、やがて脳内糖尿病状態を作り出して、アルツハイマー型認知症になるリスクを格段に上昇させてしまうのです。
糖尿病患者数は15年間で約47万人も増加
厚労省が3年ごとに行っている「患者調査」(2014年実施、全国の医療機関、外来患者の情報を元に調査)によると、2014年時点における糖尿病の患者数は全国で316万6,000人(男性176万8,000人、女性140万1,000人)となり、過去最高を記録しています。

前回調査時(2011年)における270万人から46万6,000人も増えているのです。
また、同じく厚労省の「国民健康・栄養調査」(2016年実施、全国2万4,187世帯を対象)によると、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は、1997年時点では8.2%だったのに対し、2016年では12.1%と3.9ポイントも上昇。
特に男性における伸び率が大きく、1997年は9.9%だったのが2016年には16.3%となり、6.4ポイントも上がっています。
糖尿病予備軍と呼ばれる「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合は2007年以降徐々に減ってはいるのですが(2007年は15.1%、2016年は12.1%)、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は、現在も右肩上がりの状況が続いているのです。
ブドウ糖の摂取量に気を使うことが認知症にならない秘訣
ブドウ糖の過剰摂取によるもの
自動車がガソリンをエネルギー源として動くように、人間の体は血液内のブドウ糖をエネルギー源として動きます。
ブドウ糖は、炭水化物(米、パンなど)やイモ類、お菓子、砂糖などの糖分に含まれており、これらを食べることによってブドウ糖が血液中に溶け、それが全身に運ばれることによって脳、内臓、筋肉が動くようになり、生命を維持できるようになるわけです。
中でも脳は、体内にあるどの臓器よりも多くのエネルギーを必要とするにもかかわらず、エネルギー源として使われるのは、通常ブドウ糖のみ。
他の臓器では有用となるタンパク質や脂肪などは、「血液脳関門」(脳毛細血管の内皮細胞)において厳しくチェックされ、エネルギー栄養素として脳内に通されることはないのです。
しかし、脳が蓄えておくことのできるブドウ糖の量はわずかなものでしかありません。
脳は安静状態であっても1日あたり120グラム、1時間当たり5グラムのブドウ糖を消費するため、食事を通して常にブドウ糖を補充していく必要があるのです。
ただし日ごろから過剰に糖分を摂取し続けると、先に論じた通り、脳内糖尿病の要因にもなるので注意する必要があります。
15年で17倍にも増えたアルツハイマー病
厚労省が、先に挙げた「患者調査」(2014年実施)を元に作成した資料によると、2014年時点におけるアルツハイマー病の患者数は約53万人で、1999年当時の約3万人から17倍以上も増えています。
日本では高齢者の数が年々増えつつありますが、高齢者人口の増加率よりも高い割合で、アルツハイマー病の患者数は増えているというのが現状です。

また東京都が配布しているパンフレット「知って安心認知症」によれば、認知症の原因となる病気の60%がアルツハイマー病で、以下脳血管障害を原因とする認知症が20%、レビー小体病が10%、その他が10%となっています。
アルツハイマー病が認知症を引き起こすというケースが最も多いわけです。
アルツハイマー病のメカニズムは、まだ完全にわかってはいません。
ただ現在のところ、悪玉たんぱく質が異常なほど沈着することで脳内のいたるところにアミロイド斑ができること、そしてタウたんぱく質からなる神経原繊維にも変化が生じる、といった症状が起こり、その影響によって脳が委縮して認知症を発症する…ということが、医師・研究者によって明らかにされています。
糖尿病にならないために規則正しい生活を送るには
糖尿病になると15年で海馬の容積が6%も減少
九州大学の研究チームは2016年のアメリカ糖尿病学会で、糖尿病患者は脳の海馬部分(記憶を司る部位)の萎縮が進んでいる、との研究結果を発表しました。
研究は福岡県久山町に住む65歳以上1,238人(うち糖尿病患者286人)を対象に、頭部MRIにて脳容積を測定するという形で行われました。

その結果、糖尿病歴が10~16年の人は糖尿病ではない人よりも海馬の容積が約3%少なく、病歴が17年以上になると約6%も少ないことが明らかにされたのです。糖尿病は体だけでなく脳内にも大きな影響を与えていることが、改めて証明される結果となりました。
糖尿病が脳に与える影響については、現在も研究が進められているという状況で、医療分野においても認知度自体まだそれほど高くないというのが現状です。
しかし、九州大学が発表した研究結果を踏まえると、暴飲暴食や偏食を避ける食生活を送ることが、糖尿病を防ぎ、ひいては脳の萎縮を防いで認知症の発症を予防することにつながると考えられます。
日ごろから栄養バランスの取れた食事を心がける、適度に脳に刺激を与えながら運動に取り組み汗をかく、といったかたちで体・脳を活性化するような生活を心掛けることで、糖尿病・認知症を遠ざけることができるのではないでしょうか。
1975年型の食卓…一汁三菜が優れた効果を発揮する
栄養バランスを考えた食事を普段から食べることが大事…という場合、疑問に感じられるのが、「栄養バランスがとれた食事とは、いったいどのような食事なのか?」ということ。
栄養学の専門家ならばともかく、一般人が普段から栄養素を意識して食事を作るのは難しい部分もあるでしょう。
ただこのことに関して、興味深い研究結果があります。
東北大学の農学研究科食品化学分野の研究グループによると、「1975年頃に食べられていた日本食」に高い健康有益性がみられ、加齢にともない増える2型糖尿病、脂肪肝、認知症を予防し、寿命を延伸することを明らかにしたのです。
1975年当時の日本食とは、
- 主菜と副菜で合計3品以上
- 煮物、蒸し物、生食を優先し、揚げ物、炒め物を控える
- 大豆製品、魚介類、野菜、海藻、きのこ、果物を積極的に摂取する
- 出汁と発酵系の調味料(醤油、味噌、酢など)を利用し、砂糖、塩を控える
- 一汁三菜(ごはん、汁物、主菜、2つの副菜)を基本に、多様な食材を摂取する
などの特徴を持つ食事のこと。こうした食事形態を心がけることで、エネルギーをきちんと摂取でき、糖尿病、認知症の予防に繋がると、同研究グループは説明しています。
今回は糖尿病が脳に与える影響について注目し、そのメカニズム、予防法のあり方について考えてきました。糖質の過剰摂取を防ぎ、認知症を予防するためにも、今一度自分の生活習慣を見直し、食事内容をチェックしてみてはいかがでしょうか。
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2020年9月7日 制定