ケアマネ試験の受験者・合格者の状況
来年度のケアマネ試験日程が10月10日に決定
3月9日、厚生労働省は2021年度の介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)を10月10日(日)に実施すると発表しました。合格者の発表は12月2日(木)に行われる予定で、受験の申し込みは5月から受付開始の見込みです。
ケアマネ試験はケアマネージャー(ケアマネ)になるために合格する必要のある試験。都道府県ごとに年1回行われ、試験に合格して実務研修を修了し、都道府県に登録することで晴れてケアマネージャーとして働くことができます。
受験資格を得るには、以下のいずれかの条件を満たすことが必要です。
- 医療、保健、福祉に関する国家資格を保有し、これら資格に基づく実務経験が通算5年以上で従事日数が900日以上
- 生活相談員や支援相談員、主任相談支援員、相談支援専門員として相談援助業務に通算5年以上従事し、従事日数が900日以上
実際の受験資格は都道府県によって多少異なる場合もあるため、詳細については各受験地の要綱で確認しておくとよいでしょう。
ケアマネ試験の形式は5つの選択肢から正しい回答を複数選ぶ「五肢複択方式」で行われます。
問題数は「介護支援分野」から25問、「保健医療福祉サービス分野」から35問の合計60問。
合格ラインは正答率70%程度が基準ですが、問題の難易度により毎年補正が行われています。
なお、厚労省は2021年度の試験について、コロナ禍や自然災害などの影響により、試験の直前に日程の調整が見込まれる可能性が高いとも説明。今年度の受験を考えている人は、試験日程の急な変更もあり得ることを覚えておきましょう。
今年度は8,200人が試験に合格
昨年10月に実施されたケアマネ試験は、受験者数4万6,415人に対して、合格者数は8,200人。合格率は17.7%となっています。
ケアマネ試験の受験者数と合格者数は、2014年度~2017年度当時だと受験者数が約12~約17万人、合格者数が約1万6,000人~約3万3,000人で推移していました。
ところが、2018年度試験から受験要件が厳格化。
2017年度までは介護の実務経験が10年以上(初任者研修の修了者などは5年以上)あれば受験できましたが、2018年度からは受験資格を持つのは「法定資格(国家資格)の保有者」と「相談援助業務の従事者」に限定されたのです。
その結果、2018年度試験の受験者数は4万9,332人、合格者数は4,990人となり、2017年度の受験者数13万1,560人、合格者数2万8,233人から大幅に減少しました。

その後、2019年度から2020年度にかけて受験者数、合格者数ともに微増し、増加傾向がみられるようになっています。
ケアマネ試験の合格率については、2014年度が19.2%、2015年度が15.6%、2016年度が13.1%、2017年度が21.5%、2018年度が10.1%、2019年度が19.5%、2020年度が17.7%と推移しています。
合格率も受験資格が変更された2018年度に大きく落ち込みましたが、その後は再び上昇しました。
ケアマネの負担は増加している
ケアマネの人手不足は深刻化
近年、介護現場ではケアマネの人手不足が深刻化しています。
介護労働安定センターの『令和元年度介護労働実態調査』によると、従業員の過不足状況について介護事業所に尋ねたアンケートでは(n=3,899)、ケアマネ不足を感じている割合が約3割に上っていました。
具体的な数値は「大いに不足」が3.8%、「不足」が8.4%、「やや不足」が18.2%で、合計値が30.4%です。

人手不足はケアマネも含めて介護業界全体で生じていることですが、介護事業所に介護職の人材が不足している理由を尋ねるアンケート(複数回答)では、全体の約9割が「採用が困難である」と回答しています。
さらに、採用が困難な理由を質問したところ、最多回答となったのが「同業他社との人材獲得競争が激しい」(57.9%)でした。地域内の介護人材に対する介護事業所間の奪い合いが深刻化しているのです。
ケアマネの人手が足りない事業所では、ケアマネ1人あたりの業務負担量はどうしても増えてしまいます。日々膨大な量の仕事に追われ、激務が続くという働き方を余儀なくされるでしょう。
経営改善のためにケアマネの担当人数は増加可能に
近年、ケアマネの主たる就労場所である居宅介護支援事業所の経営状況がよくありません。
厚労省の『令和元年度介護事業経営実態調査結果』によると、2019年における居宅介護支援事業所全体の収支差率は-1.6%と赤字。
実は2001年の調査開始以来、ずっと赤字が続いています。
こうした状況に対し、厚労省は居宅介護支援事業所の経営改善を実現すべく、今年4月からケアマネ1人が担当する利用者の数を増やす方針を決定しています。
現行制度では、ケアマネの担当利用者数が40人超になると、介護報酬が段階的に減少する仕組みです。
これが新年度からは、ICT(情報通信技術)の導入や事務員の採用といった条件を満たした場合、45人超まで減算されない仕組みへと変更されます。
厚労省としては、ケアマネがより多くの利用者を担当できるようにすることで、居宅介護支援事業所全体の収入を底上げしたいという狙いがあるわけです。
しかし、現場のケアマネの業務量は、人手不足もあってすでに限界に近い状況。4月からの担当人数引き上げに対し、悲鳴の声も上がっています。
ケアマネの負担増をICTが解消するか
サービスの説明義務化も大きな負担になりかねない
4月からのケアマネへの負担増はこれだけではありません。
2021年度の介護報酬改定では、居宅介護支援事業所が利用者に対して、過去6ヵ月のケアプランにおけるサービス割合、およびサービスごとに同一事業所が提供した割合について説明することが運営基準に追加されます。
居宅介護支援事業所が利用者に行う新たな説明は、次の2点です。
- 過去6ヵ月の間に作成したケアプランにおいて、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与(販売)、地域密着型通所介護の各サービスをどのような割合で盛り込んだか
- 過去6ヵ月の間に作成したケアプランにおいて、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与(販売)、地域密着型通所介護の各サービスで、同一事業所により提供された割合はどのくらいか
文書を発行し、口頭で説明のうえ、利用者からの確認を得ることが求められます。これに違反すると、「運営基準減算」が適用されます。
厚労省としてはこの新ルールを設けることで、介護保険サービスの利用者に対する公正中立なケアマネジメントを確保したいとの目的があるのでしょう。しかし現場のケアマネにとっては、さらなる負担増につながる恐れがあります。
今後はICTの活用が不可欠
現在、ケアマネの業務負担を減らせるとして注目を集めているのがICT(情報通信技術)です。
三菱総合研究所がケアマネを対象に行った調査研究(2018年実施、n=231)によると、ケアマネ1人あたりの平均利用者数は、ICT導入有りの場合だと33.31人、ICT導入無しの場合だと30.75人。
ICTが導入されている方が3人多いという結果が出ています。
また、ケアマネ1人あたり1ヵ月間の労働投入時間を調べる調査(n=352)では、ICT機器導入ありの場合は171.8時間、導入無しの場合は184.1時間で、導入している方が少なくなっていました。

これらの結果をみる限り、ICT機器の導入はケアマネの業務改善策のひとつになるとは考えられます。今後は、現場のケアマネにとってより目に見える形で業務負担軽減につなげられるように、活用を進めていく必要があるでしょう。
今回はケアマネ試験の日程発表のニュースをもとに、ケアマネを取り巻く就労環境について考えてきました。
人手不足の解消と業務効率化の実現は、増え続けるケアマネの負担を減らすうえで大きな課題。
今後、国や厚労省はどのような対策を取っていくのか、引き続き注目を集めそうです。
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2020年9月7日 制定