介護事業所の指定取り消し・効力停止処分が発生
サービス別にみると訪問介護が最多
3月9日、厚生労働省は、指定取り消し・効力の停止処分を受けた介護事業所の件数が、2019年度は153件だったことを発表しました。
直近5年間の件数は、2015年度が227件、2016年度が244件、2017年度が257件、2018年度が153件。
2019年度は前年度から横ばいの件数となっています。

2019年度に指定取り消し・効力の停止処分を受けた事業所を法人種別にみると、全体の68.6%が営利法人で、社会福祉法人が14.4%、医療法人が9.8%です。約7割を営利法人が占めています。
サービス別にみると、最多となったのが「訪問介護(介護予防を含む)」の33件。
以下、「居宅介護支援」の15件、「通所介護(介護予防を含む)」の11件、「訪問看護(介護予防を含む)」と「小規模多機能型居宅介護」の10件と続いています。
訪問介護が全体の約2割を占めている状況です。
では続けて、介護事業所における「指定取り消し」と「効力の停止」とはどのような処分なのか、みていきましょう。
介護事業所の「指定取り消し」とは
訪問介護や通所介護などの介護保険サービス事業は、誰でも自由に行えるわけではありません。
事業を開始するには、介護保険サービスごとに規定されている指定基準(運営基準、設備基準、人員基準)を満たしたうえで、自治体(都道府県・市区町村)に申請を行う必要があります。
申請先の自治体で審査が行われ、問題がなく介護事業者としての「指定」を受けることができれば、晴れて介護サービス事業を行うことができるのです。
しかし、基準をクリアして事業を開始した後でも、制度上のルールに反する行動をとった場合には、違反内容に応じて自治体により処分が下されます。今回発表された「指定の取り消し」「効力の停止」の処分内容は以下の通りです。
| 指定の 取り消し |
介護サービス事業者としての指定が取り消される ※事業を再開するには再申請が必要 |
|---|---|
| 指定の効力 全部停止 |
一定の期間、指定事業者としての事業がすべて制限される ※再申請の必要はなく、一定期間経過後に事業を再開できる |
| 指定の効力 一部停止 |
一定の期間、特定の事業においてのみ活動が制限される |
自治体による処分には、ほかにも「勧告」「命令」「指導」「監査」「介護給付の返還・加算金の徴収」などがあります。
これらは実際の事業活動を停止・制限する内容ではありません。
「指定の取り消し」や「効力の停止」は、事業が行えなくなるという点で特に重い処罰です。
多くの自治体では、最も重い「指定の取り消し」の処分をした事業者に対して、5~10年間は再指定が行われません。
取り消し処分の理由の多くは「不正請求」によるもの
原因の約6割が介護報酬の不正請求
介護事業所は、何が原因となって「指定の取り消し」や「効力の停止」の処分を受けているのでしょうか。
厚労省のデータによると、2019年度における「指定の取り消し」の件数を100とした場合、「不正請求」の割合が57.7%で最多となっています。
以下、「虚偽報告」の30.8%、「虚偽申請」の24.4%、「法令違反」の16.7%、「運営基準違反」の15.4%、「虚偽答弁」の11.5%、「⼈員基準違反」の9.0%が続いています。
※事由は重複あり

同様に「効力の停止(一部停止と全部停止の合算)」の件数を100としたときの割合でみると、最多だったのはこちらも「不正請求」の58.7%。
以下、「運営基準違反」の24.0%、「虚偽報告」の16.0%、「法令違反」の13.3%、「虚偽申請」の12.0%、「人員基準違反」の8.0%、「虚偽答弁」の5.3%が続いていました。
「指定の取り消し」と「効力の停止」のどちらも「不正請求」が原因となって処分を受けるケースが最も多く、ほかの原因に比べて突出して多くなっています。実際にどのような不正請求が起こっているのか、続けてみていきましょう。
具体的にどんな不正請求が起こっているのか
介護事業所が不正請求を行い、最も重い「指定の取り消し」の処分が自治体により下されるというケースは全国で起こっています。
例えば、昨年10月、大阪府の訪問介護事業所が不正請求により「指定の取り消し」の処分を受けています。その理由は、次の2点にありました。
- 実際には提供していない介護サービスを提供したとして虚偽の記録を作成していた
- 実際には実施していない介護職員への処遇改善の実績を偽って報告していた
自治体によると、この事業所による不正請求額は介護保険法関係で約885万円にのぼっていたとのこと。同事業所は4割の加算金を加えた約1,200万円の返還を自治体から求められています。
3月18日には新潟県で、訪問介護事業所に対する「指定の取り消し」が発表されました(4月1日付けで取り消し)。
この事業所は人員基準をクリアしていない状態で指定を受け、昨年2月~11月にかけて介護報酬を不正に請求。
指定を受ける際は、人員基準が満たされているという書類を作成し、申請していたといいます。
経営難の介護事業所…実地指導で状況は改善するか
介護事業所の経営状態はコロナ禍で悪化している
現在、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受けて、経営が悪化している介護事業所は多くあります。
厚労省が昨年行ったコロナ禍での介護事業所の経営状況に関する調査によると(3万9,199事業所が回答)、収支状況が感染拡大前に比べて「悪くなった」と回答した事業所の割合は、緊急事態宣言下の2020年5月時点で半数近い47.5%でした。

サービス別にみると、通所リハビリテーションでは80.9%、デイサービスでは72.6%にのぼり、通所系の事業所での悪化が目立っていました。
介護事業所全体での収支状況が「悪くなった」との回答は、緊急事態宣言が解除されていた2020年10月時点になると32.7%となり、多少改善してはいます。しかし、なお3割以上の事業所が経営状況の悪化に苦しんでいるわけです。
各事業所には働いている職員の生活を守るため、そして利用者に継続して介護保険サービスを提供し続けるために、事業継続に向けた努力が求められます。
しかし、コロナ禍は2021年4月現在でも鎮静しておらず、再拡大の危険性も指摘されているのが現状。このような状況が続くと、今後、経営難から不正請求が多発する恐れもあるでしょう。
「実地指導」が行われたのは介護事業所の18%ほど
介護事業所の行動に問題がないかをチェックする行政側の機能として、「実地指導」があります。
実地指導とは都道府県・市区町村の担当者が介護事業所に出向き、適正に事業が行われているかをチェックすることです。
虐待防止などの観点から指導を行う「運営指導」、介護報酬の不適正な請求の防止とケアの向上を目的とする「報酬請求指導」という2つの側面から実施されます。
ところが、自治体による実地指導の頻度は、現状高いとは言えません。厚労省によると、2019年度における実地指導の実施率は全国平均で18.0%(事業所ベース)と、2割に届いていないのです。
同省は自治体に対して積極的に実施するよう要請していますが、より適切に実地指導が行われるための方策を考えることも必要でしょう。
今回は介護事業所に対する「指定の取り消し」「効力の停止」の処分について考えてきました。
コロナ禍で苦しい収支状況に直面している介護事業所は多くあります。
行政側には事業所による不正行為を未然に防ぐためにも、実地指導の頻度を高め、さらには適切な支援体制を継続して整備していくことが求められます。
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2020年9月7日 制定