第33回介護福祉士国家試験の結果を発表
合格率は過去3番目に高い71.0%
厚生労働省は、今年度の第33回介護福祉士国家試験の結果を3月26日に発表しました。
受験者8万4,483人のうち、5万9,975人が合格しています。合格率は、過去3番目に高い71.0%で、2018年度の73.7%、2016年度の72.1%に続いています。

合格者を受験資格別にみると、介護職員やホームヘルパーなど、現場で活躍している方が8割超を占めます。そのほかは、養成校や福祉系高校の学生などです。
男女別でみると、男性は30.6%、女性は69.4%となっています。依然として女性に人気の職業であることがわかります。
また、年齢別でみると、30歳以下が33.5%で最多です。続いて、41~50歳が26.2%、31~40歳が20.3%、51~60歳が16.5%。介護福祉士国家試験に受験年齢の制限はありませんが、20代の若い方も多く受験していることがわかります。
介護福祉士国家試験は、筆記試験と実技試験のふたつ。筆記試験では、人間の尊厳と自立、介護の基本や人間関係、コミュニケーション技術などの問題が出題されます。
また、実技試験では介護に関する専門的な技能が身に付いているか試されます。実際の介護現場で適切に対応できるかチェックする問題です。安全性や介護施設利用者の尊厳、自立支援などを総合的に判断する必要があります。
合格率が回復した背景は実務者研修の必須化
第33回介護福祉士国家試験の結果を受けて、累計の介護福祉士国家試験の合格者数は147万9,605人となりました。毎年、多くの介護福祉士が誕生しているわけです。
特に2016年度から、これまで以上に質の高い介護サービスを提供する人材の育成を目的として、介護現場で知識や技術を身に付けながら介護福祉士の資格取得を目指す「実務経験ルート」の要件に実務者研修が加わりました。
それまで合格率は6割程度を推移していた介護福祉士国家試験ですが、実務者研修の必須化以降、合格率は7割程度を推移し、高水準を維持しています。
2016年度の受験資格改定で受験者が大幅減少
介護福祉士になるための3つのルート
介護福祉士の受験資格を得るためには、福祉系高校のカリキュラムを選択することで得られる「福祉系高校ルート」、養成校を卒業することで得られる「養成施設ルート」、実務経験に加えて研修を受けることで得られる「実務経験ルート」があります。
「福祉系高校ルート」では、福祉系高等学校や特例高等学校の卒業後に、国家試験を受けることで資格取得を目指します。
福祉系高等学校では卒業後に筆記試験の合格、特例高等学校では卒業後9ヵ月以上の実務経験を積み、筆記試験と実技試験を合格することで資格を取得することができます。
また、「養成施設ルート」では、大学や専門学校などの養成施設に通って資格の取得を目指します。このルートではこれまで養成校を卒業した段階で資格を取得することが可能でしたが、今後は国家試験の受験が義務付けられる見通しとなっています。
そして、最後に「実務経験ルート」。このルートでは介護施設で実務に携わりながら、国家試験を受験して合格を目指します。
2016年度以前は、対象となる施設や事業所で従業期間が3年(1,095日)以上、かつ従事日数が540日以上あることで受験資格を得ることできていました。
しかし、2016年度の介護福祉士国家試験から、この「実務経験ルート」の受験要件に「最長で450時間の実務研修を修了していること」が加わり、受験するにあたってのハードルが上がりました。
。
より基礎的な研修となる「介護職員初任者研修」を修了していれば320時間程度に短縮されますが、それでも負担は少なくないでしょう。
実務研修の必須化により受験者数は減少
受験要件に実務研修が加わったことは、合格率アップの要因のひとつです。しかし、一方で受験者数の大幅減少も引き起こしました。
2014年度の受験者数が15万3,808人、2015年度の受験者数が15万2,573人であるのに対し、2016年度の受験者数は7万6,323人と大きく下がっています。
翌年度は、9万人台と少し回復しましたが、その後も受験者数が10万人を超えることはありません。

実務者研修を必須にしたことにより、受験者数の大幅減少と合格率アップは表裏一体の関係であるといえるでしょう。
介護福祉士国家試験の受験者数の大幅減少は、厚生労働省も問題視しており、「実務経験3年以上」という受験資格について、2016年度からは受験年度末までに要件を満たす場合は受験可能となる「見込み受験」を認めています。
従事日数を試験実施年度の3月31日まで通算することで、受験申し込み時に実務経験を満たしていなくてもよいわけです。
実務者研修とは別の条件のハードルを下げて、受験機会を増やそうとしたのです。しかし、思うように受験志望者を呼び戻せていない状況が数字で明らかとなっています。
介護福祉士を増やす必要性とその対応策
2025年までに55万人の介護福祉士が必要
2016年度の実務者研修の必須化により、大きく受験者数が減少し、国が施策を講じますが、その後も増加傾向がみられません。
しかし、高齢化によって起こりうる課題には早急に対応すべきです。
団塊の世代が75歳以上となる2025年には65歳以上人口が3,677万人に達すると見込まれています。
その後も、65歳以上人口は増加傾向が続き、2042年に3,935万人でピークを迎えると推計されています。
日本全体における総人口が減少する中で、65歳以上人口が増加することにより、高齢化率は上昇を続けます。2036年に高齢化率は33.3%になり、3人に1人が65歳以上になります。
介護現場を支える介護福祉士の確保は必要不可欠です。
そこで、国は介護福祉士の人材確保対策として、研修受講後のマッチングや介護ロボットの導入支援、介護を知るための体験型イベントの開催なども積極的に行い始めました。
また、厚生労働省は2019年から「特定処遇改善加算」を創設しました。特定処遇改善加算とは、令和元年介護報酬改定のひとつで、介護職員の賃上げを図ったものです。
介護職員は勤続年数が増えても、思うように賃金に反映されないといった不満が多かったため、ベテラン職員への待遇を手厚くして、介護職の将来性を高めることが目的です。
介護福祉士の待遇が改善されれば、資格を取得しようと考える人も増えていくはず。しかし、現状では受験者数の増加につながっているとはいえません。
そのため、介護福祉士国家試験の受験時の費用負担を減らすべきだという考え方も出てきました。
国は受験費用負担の軽減に取り組む
受験時の費用負担を減らすべく、国は「実務者研修受講資金貸付制度」を整備しています。
実務者研修受講資金貸付制度とは、実務者研修施設において研修を受講し、卒業後に介護福祉士の業務に従事しようとする方が対象の制度。最大20万円の貸付を実施しています。
というのも、2016年度の介護福祉士国家試験の受験を見送った理由を複数回答で聞いたアンケート調査によると、「受験費用が負担だから」という回答が最多で、55.4%にも達しています。
次いで、「研修時間が長いから」(44.8%)、「通学による講義が負担だったから」(44.4%)と続きます。
。

実務者研修の受講のためには10万円前後の費用がかかるうえに、最大450時間の講義や演習が求められます。受験費用や時間を捻出する必要があるのです。
国は、働きながらでも可能な限り負担を軽減した形で実務者研修を受講し、介護福祉士資格を取得できるような取り組みを実施。介護福祉士を目指す方はこういった制度を積極的に活用していきたいところです。
ただし、実務者研修受講資金貸付制度の認知度が低い点は課題だといえるでしょう。広く知られることにより、介護福祉士を目指す方を増やしていきたいところです。
今回は、今年度の第33回介護福祉士国家試験の結果と介護福祉士確保についてみていきました2016年度の実務者研修の必須化は、合格率アップと受験者数減少の両方に影響を与えました。
介護福祉士を目指す方にとっては時間的にも費用的にも負担が大きくなったため、実務者研修受講資金貸付制度に続く、国のさらなる施策にも期待したいところです。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 9件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定