老老介護で相次いで悲劇が発生
介護ストレスが原因で無理心中や殺害が発生
65歳以上の高齢者が自分と同じ65歳以上の高齢者を介護する「老老介護」のため、長年蓄積したストレスが原因で無理心中を図ったり、要介護者を殺害したりする事件が相次いでいます。
2019年には福井県敦賀市の民家で介護をしている義父母(93歳・95歳)と夫(70歳)を殺害したとして妻(72歳)が逮捕される事件が発生しました。
被告人は「こんなに苦しいなら楽になりたい」と話していた義母の言葉が頭に思い浮かんだことをきっかけに、犯行に及んだと言います。
被告人は義妹や娘などの周囲に助けを求めることはしていませんでした。献身的な介護を続けるなかで心神耗弱状態だったと言います。
介護負担が大きい老老介護に対しては、周囲の人間が気を配り、サポート体制を整える必要があります。しかし、2020年から発生した新型コロナウイルス感染症の影響が相まって、老老介護状態にある世帯の孤立が深刻化しています。
老老介護の割合は全体の59.7%
厚生労働省が2020年に発表した『2019年 国民生活基礎調査の概況』によると、自宅で介護を受けている高齢者のうち、「老老介護」の割合は59.7%も占めていることがわかっています。

2001年では老老介護の割合は40.6%でしたが、その割合は徐々に上昇し、2019年には59.7%にも達しているわけです。
また、介護者と要介護者がともに75歳以上の割合が33.1%もあります。介護者と要介護者の双方が75歳以上の場合「超老老介護」と呼ばれますが、その割合も次第に高まっているわけです。
老老介護は核家族化により深刻に
核家族化が進んで老老介護が急増
これほどまでに老老介護が進んでいる大きな理由に核家族化が挙げられます。
核家族世帯とは、夫婦のみ、あるいは夫婦と子ども、ひとり親と子ども、という世帯のことです。核家族世帯は徐々に上昇傾向がみられ、2035年には89%になると予想されています。

核家族化が進んだことにより、以前は複数人で負担を分けていた介護や育児などが一人にのしかかることも少なくありません。
そのため、国や市町村の介護や育児に関するサービスの役割が大きくなってきています。介護や育児の悩みを一人で抱え込んでしまっている方を救わなければいけないわけです。
超老老介護や認認介護も浮き彫りに
また、日本では介護者と要介護者の双方が75歳以上の介護である「超老老介護」や、介護者と要介護者の双方が認知症である「認認介護」が深刻化しています。
軽度の認知症を発症している方が、中度~重度の認知症を発生している方を介護するケースが多くなっています。
しかし、認知症は進行スピードに差があるとはいえ、少しずつ悪化していくものです。介護者の認知症の症状が悪化してしまうと、介護者と要介護者の双方が食事を摂ることを忘れてしまい、低栄養状態に陥ってしまうこともあります。
また、火の不始末や介護放棄、最悪の場合は虐待が発生してしまうこともあります。実際、認認介護の介護者が要介護者を殺害した事件も起こっています。しかし、被告人は殺害したという事実すら理解できていませんでした。
高齢化が進む日本では、認知症の数も増加しています。厚生労働省によると、2025年には約470万人にも達すると見込まれています。
無理心中や殺害という悲劇を起こさないためには、国や市町村によるサポートが必要不可欠です。
孤立させないために第三者の介入が必要
介護でのストレスが原因で虐待が発生することも
国や市町村によるサポートが必要なのは、介護ストレスが原因となって起こった虐待件数からもわかります。
長年の介護疲れが原因となった虐待などで死亡した事例が発生しています。

毎年20件前後が発生しており、そのなかには第三者の介入があれば、このような事態には陥っていなかったのではないか、と思われるケースもあります。
また、老老介護では、精神的な負担だけでなく、経済的な負担が重くのしかかることも少なくありません。高齢者施設を利用したくても、その費用がまかなえないケースも確認されています。
先に紹介した福井県の事件でも、被告人は、「経済的にも苦しく、楽にしてあげたかった」と供述しています。周囲から生活保護を活用した高齢者施設の入所を勧められていましたが、「人様のお金で助けてもらいたくない」と頑なに拒んでいたようです。
「他者に迷惑をかけたくない」「自分でどうにかしなければいけない」と思い込んでしまっている方に対して、国や市町村がアプローチし、適切なサポートを行う必要があります。
第三者による介護サービスの適切な供給が求められる
介護が必要な世帯を孤立させないためには第三者の介入が必要不可欠です。
特に、コロナ禍では外出を控えるように求められているため、周囲が危機的な状況に気づきにくい状況になっています。
離れている家族や親戚が少し気にかけ、必要に応じて介護サービスの利用を促し、周囲に助けを求める必要性について伝えなければいけません。
高齢者施設を利用することは、負けでも、無責任でもありません。自ら助けを求めることができない方々もいる中で、支援者側から手を差し伸べる必要性もあるでしょう。
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2020年9月7日 制定