終末期のがん患者の在宅療養が増えている
がん介護に対応するデイサービス施設
医療技術の進歩によって、がんは「治る病気」と考えられるようになってきました。しかし、1990年から2019年に至るまで、がんは日本人の死因第1位です。がんの生存率が高まる一方で、高齢化によって罹患率と死亡者数は増え続けています。
そうした中で注目されているのが、がんの「緩和ケア」です。WHO(世界保健機関)では、緩和ケアを次のように定義づけています。
緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。
(引用:日本緩和医療学会「WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002)」定訳)
日本でも2017年に「第1回緩和ケア関連団体会議」が開催され、国内での導入が進められています。
主に緩和ケアの中心的な役割を担うのは、病院などの医療機関です。
その一方で、がんの進行で体力が低下した患者に対する生活面でのケアを施す施設の少なさを指摘する声も、少なくありませんでした。
そういった状況を受けて誕生したのが、がん患者向けの支援を行うデイサービスなどの介護施設です。こうした施設では、がんの進行抑制や発症予防などのプログラムのほか、終末期でも過ごせるように医療機関と密な連携を取る施設もあります。
コロナ禍で在宅での「緩和ケア」に関心が集まっている
がん患者の介護に対応する通所系施設が増加することには、終末期でも在宅療養がしやすくなるというメリットがあります。
日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団がまとめた『ホスピス・緩和ケアに関する意識調査2018年』によると、「がんで余命が1~2ヵ月になったら、自宅で最期を迎えたい」と考える人が、どの年代でも約7割を超えていることがわかりました。
一方、「自宅で過ごしたいが実現は難しいと思う」と答える人も4割を超えています。
その傾向は、高齢世代になると高まり、50代で44.8%、60代で50.8%、70代で42.6%となっています。

こうした要望に加え、コロナ禍の影響で病院などでの面会が制限されたことから、特に在宅での緩和ケアに注目が集まっています。終末期のがん患者を在宅でケアする際にポイントとなるのは、痛みなどを緩和するための医療行為を伴うケアです。
がん患者の在宅療養の現状
在宅療養の背景にあるリソース不足
在宅療養が注目されるようになった背景として、国が推進する「地域医療構想」が挙げられます。2025年に「団塊の世代」が75歳を迎えるに当たり、医療や介護の需要拡大が見込まれています。
しかし、こうした需要に対して、現状は病床が足りていません。
2025年に必要な病床数は、全国の合計で高度急性期13.1万床、急性期40.1万床、回復期37.5万床、慢性期28.4万床の合計119.1万床だとされています。
しかし、現状では病床の多くが急性期(56.9万床)に偏っており、回復期の病床(17.1万床)が大きく不足しています。

問題点は緩和ケアの専門医の人材不足
最期を自宅で迎えたい人が多いため、在宅療養を推進することは双方にとってメリットが大きいと考えられます。しかし、現状では在宅医療を支える緩和ケアの専門的な人材が足りていません。
日本緩和医療学会が認定する緩和ケアの専門医は、自治体によって人数に大きく差があります。最多は東京都の52名ですが、最少の山形県では1名しかいません。このような状況で、医療的ケアを必要とする終末期の在宅医療を実施するのは困難です。
また、緩和ケアの専門外来に訪れるタイミングで最も多いのは「全身の状態が悪くなってから」だとされています。その際、緩和ケア病棟がある場合は入院できますが、ない場合は在宅療養しか選択肢がないケースもあります。
望むような在宅での緩和ケアが整備されていないと、家族にかかる負担は大きくなります。
多様なニーズに応える環境の整備が必要
介護施設は苦痛が少なく過ごせる
国立がん研究センターが遺族を対象に『がん患者の療養生活の最終段階における実態把握事業』を実施。痛みや苦痛が少なく過ごせた場所を調査しています。
それによると、「体の苦痛が少なく過ごせた」施設は、緩和ケア専門病棟(PCU)に次いで介護施設(介護老人保健施設・老人ホーム)の割合が高くなっています。
さらに「おだやかな気持ちで過ごせた」という項目では、自宅の63.5%に次いで介護施設が57.6%となっています。

このように、緩和ケア専門病棟や在宅療養以外にも、介護施設も終末期のがん患者にとっては過ごしやすい場であると考えられます。
終末期医療の多様化に対応できる環境づくり
厚生労働省は「地域医療構想」を掲げて、終末期医療のあり方などを模索しています。しかし、その実態は病床再編に集中しています。
患者のニーズや家族の生活などを考慮して、緩和ケア専門病棟、在宅療養、介護施設など多様な選択肢を用意することが大切ではないでしょうか。
その際、ポイントとなるのは不足している医療人材。
全国にはオンラインツールを活用して、デイサービス施設と医療機関が連携して終末期のがん患者をケアした例もあります。
少ない医療リソースを有効に活用する方法を模索し、患者本人やその家族が望む形での最期を迎えられるような体制づくりが求められているのでしょう。
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2020年9月7日 制定