
2015年10月、兵庫県はカードゲームや麻雀、パチンコなどを利用したデイサービスや高齢者施設に対する規制を行うための法改正を行いました。
兵庫県内では、8月に神戸市が「カジノ型デイ」の規制に踏み切っています。
今回、兵庫県は対象を特別養護老人ホームや介護老人保健施設まで広げました。
新しいデイサービスとして、ニュースなどでも取り上げられることが多かった「カジノ型デイ」。
肯定的な意見も多くある一方で、射幸心をあおる、税金で遊ぶのはどうか、などの批判の声も出ていました。
「県内にはまだこうした施設はないが、先行して対応することにした。
高齢者がギャンブル依存症に陥る可能性もあり、見過ごせなかった」と兵庫県はコメントを出しています。
法改正に先立ち実施されたパブリックコメントには、様々な意見が寄せられています。他にもネット上では「カジノ型デイサービス」を認める声も多くありました。
<肯定的な意見>
- 麻雀やトランプなどの遊戯は指先を使うので機能訓練になる
- 他者とのコミュニケーション能力が向上する
- すでにカジノ型デイは普及していて、認知症予防に効果的
- 折り紙や塗り絵など、これまでのデイサービスに興味を持てない など
通所サービスを利用しない要介護者や認知症を患っている高齢者は多く存在します。
こうした高齢者は、デイサービスは自分には合わないところだという先入観を強く持っています。
軽度の認知症を患っている人は、デイサービスで行われる体操や折り紙などに抵抗感を感じることもあるようです。
<否定的な意見>
- 税金が投入される介護施設にふさわしくない
- 高齢者がギャンブル依存症に陥る危険 など
今回の法改正では、事業者は「機能訓練として利用者の射幸心を煽るおそれや依存性が強くなるおそれのある遊技について日常生活を逸脱して提供してはいけない」とあります。ほかに、下記のものの使用が禁止されました。
- 擬似通貨
- 居宅サービスの計画内容を超えた不要なサービス
- 賭博や風俗営業を連想させる外観・内装・設備・名称
兵庫県知事は、この条例設定についての質疑応答で、「ギャンブル依存症を助長しないことが介護施設の運用の基本」と述べています。賛否あるなかで、法改正を行った背景には何があるのでしょうか。
多様化するデイサービス。「カジノ型デイサービス」が生まれた背景とは?
自宅から通う通所介護・デイサービスの事業所数は年々増加しています。

デイサービスが始まったころ、事業所は開設すれば、どこも定員が埋まりました。
しかし、今はデイサービスも過当競争の時代になり、デイサービスの倒産件数も増えています。
2001年には、9,726件しかなかった事業所数は、翌年には1万1,429件になり、それから10年後の2012年には3万5,453件にまで増えています。
2001年からの11年間で、デイサービスは、3.6倍に増えた計算になります。

施設種別ごとの正確な数字は出ていませんが、デイサービスを含む老人福祉施設の倒産件数は、2000年から~2006年の間は毎年1~7件でしたが、2007年に23件と急増し、2013年には最多の46件、2014年は45件と推移しています。
介護報酬の引き下げや、居住費用や食費が介護保険給付対象から外されるなどで利益が出にくくなっていることや、人材確保の難しさが大きな倒産理由ですが、施設数が増えたことで利用者が「デイサービスを選ぶ」ようになったことも理由の一つでしょう。
そこで、増えてきたのが既存のデイサービスとは異なる差別化を図った介護施設です。様々な趣向で高齢者をもてなしているのが大きな特徴です。
兵庫県の法改正の影響…クルーズ船でカジノを楽しめたデイサービスは今

朝日新聞やニュース番組で取り上げられたクルーズ船を模したデイサービスは、兵庫県姫路市にあります。
マンションが立ち並ぶ一角に突然、クルーズ船を模した建物が現れます。バスから降りてくる利用者を出迎えてくれるのは、船員服姿の介護スタッフ。運営しているのは医療法人です。
施設内通貨を使ったカジノが楽しめた施設でしたが、兵庫県の法改正を受けて、施設内で使っていたルーレットは倉庫に撤去したといことです。
姫路市は介護事業所の指定や指導の権限を持つ中核市のため、今回の法改正の適応外になります。しかし、法改正を受けて自主的に撤去したということです。
こちらの館内にはプールがあり、理学療法士によるリハビリウォーキングも行われています。この施設では、音楽療法、園芸療法も行われていて、趣味を深めるメニューも豊富にあり、カジノは数あるメニューの一つでした。
カジノに特化したデイサービス-首都圏で急増中-
2014年に東京都足立区と神奈川県横浜市にできたのが、「デイサービス・ラスベガス」。建物の外観もカジノ風で、バカラやブラックジャックなどが施設内にあり、ラスベガス気分を楽しめます。
ゲームで使う架空通貨は、ストレッチなどの運動を行うことで貯まる仕組み。運動とゲームを組み合わせた、新しい形のデイサービスとして、注目を集めました。設立から2年、すでに12施設まで増えています。
既存のデイサービスでは男性利用者は2割程度ということに着目。これまでのデイサービスは苦手だという人に家から出て楽しんでもらおうと、カードゲームや麻雀を取りいれているそうです。
急速に事業所を増やしている現状を考えると、利用者がカジノを取り入れたデイサービスを楽しんでいるのは、まぎれもない事実のようです。
カジノ型・アミューズメント型介護施設の今後は?
現在60代後半にさしかかった「団塊の世代」。今後の高齢者施設の利用者は、高度成長期を支えた団塊世代が増えてくるでしょう。
2012年に内閣府が団塊世代を対象に行ったアンケートがあります。それによると、要介護になったときには、介護老人福祉施設や病院ではなく、自宅や過ごしたいと望む人が38.2%と最も高くなっています。
| 自宅(38.2%) | |
| 子どもの家(0.6%) | |
| 兄弟姉妹など親戚の家(0.1%) | |
| 特別養護老人ホーム(16.1%) | |
| 介護老人保健施設(8.6%) | |
| 病院などの医療機関(12.4%) | |
| 民間の有料老人ホーム(5.5%) | |
| その他(0.5%) | |
| わからない(15.9%) | |
| 無回答(2.1%) |
また、今後力を入れるべき高齢者対策は、「介護や福祉サービス」が最も高く68.4%です。

自宅で暮らすことを希望する団塊世代にとって、デイサービスは必要不可欠なもの。この世代がどのように介護施設を利用していくのかが、カジノ型デイが定着していくかのカギになりそうです。
「変わるデイサービス」娯楽施設化は受け入れられるのか?

初期の認知症高齢者や介護度の低い高齢者は、デイサービスなどの介護サービスを受けていないケースが多くあります。自宅で一日引きこもり状態になるために、症状が悪化することも。
アミューズメント施設のようなデイサービスは、こうした軽度の要介護者にとって通いやすい場所です。まだ自分は高齢者ではないと介護施設を敬遠する人にも抵抗感がない施設といえるでしょう。
ただし、その運営費用の多くの部分を税金でまかなっていることを考えると、娯楽に特化した高齢者向け施設が増えることに異議を唱える人も出てくるのも致し方のないことかもしれません。
現在あるカジノ型デイは、体操やリハビリも組み合わせた介護も重視した施設です。しかし、こうした施設を認めることで、ギャンブル性だけを追求した介護施設が生まれてしまう危険性もあります。
管轄する厚生労働省は、「今後の動向を注視しながら適切な対応を考えていく」という態度で規制への動きは見せていません。
カジノ型といってもさまざまなサービスが実践されていてギャンブル一辺倒ではない施設が多くあります。
認知症の改善にゲームなどが役立つということも考慮して、慎重に検討をしていく姿勢が必要なのは間違いないでしょう。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 42件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定