ニュータウンに住み続けたい理由
住み続けたい自治体ランキングの結果
リクルートは10月5日に「住み続けたい自治体ランキング」を発表しました。関東圏における自治体の中でトップは東京都武蔵野市で、以下2位東京都中央区、3位東京都文京区と、都内の自治体が上位を占めました。
その中で、14位神奈川県横浜市都筑区、25位千葉県印西市、36位東京都稲城市、39位東京都多摩市と「郊外大規模ニュータウン」エリアが比較的上位に入っていました。
こうした大規模ニュータウンは、高度経済成長期に造成され、日本の各地に点在しています。しかし、すでに40年以上が経過していることから「オールドニュータウン」とも呼ばれ、建物の老朽化や住民の高齢化など、さまざまな問題が起きています。
高齢化しつつもコミュニティ意識は強い
高齢化の波は、全国のニュータウンに押し寄せています。
東洋経済オンラインによると、神奈川県横浜市栄区にある「上郷ネオポリス」というニュータウンでは、高齢化率が約50%にも上るとしています。
『令和3年版高齢社会白書』で、高齢化率の全国平均は28.8%ですから、いかに高い水準かがわかります。
その一方で、長い間同じ街で生活をともにしてきたため、住民のコミュニティ意識は強いようです。
日本都市計画学会の論文『オールドニュータウンの立地適正化計画上の位置づけと現状と課題に関する研究』で「地域のつながり」を尋ねたところ、全体の約7割以上が「感じる」と回答しています。

また、居住意向も76.8%と高いことがわかっています。ただ、その理由としては高齢者のため、移住を考えられないという傾向があるようです。こうした高齢者の意向が住み続けたい自治体ランキングにも反映されているのではないでしょうか。
オールドニュータウンの課題
福祉施設やインフラの不足
高齢化が進んだオールドニュータウンでは、介護も大きな課題の一つです。もともと高度経済成長期に若い夫婦を対象に販売されてきたため、介護福祉施設がニュータウン内部に設置されてはいませんでした。
そのため、高齢者が多いにもかかわらず、福祉・介護施設が不足しているニュータウンは少なくありません。
また、当時の日本はモータリゼーションの最中にあったため、歩行者用道路やバリアフリーなどの対応が遅れています。公共交通もバスなどが多く、陸の孤島となっているニュータウンもあります。高齢者が生活するには厳しい環境になりつつあるのです。
緊急時の対応に懸念がある
施設やインフラが整っていない場合、急病で倒れた場合など、緊急時の対応に不安が残ります。
特に問題が起きやすいのが単身高齢者です。
朝日新聞が国内46ヵ所のニュータウンを調査したところ、6割のニュータウンで65歳以上の単身世帯の割合が全国平均を上回りました。
こうしたニュータウンの高齢者は頼るべき人が近くにいないケースが多いとされています。
京都府京田辺市が市内のニュータウン・大住ケ丘団地で、「緊急時に連絡を取ることができる家族などの人数」を調査したところ、63%が市内に一人もおらず、85%が市外に住んでいると回答。
多くの世帯で頼りになる家族が近くにいないことがわかっています。

ニュータウン全体で介護の意識を高める
ニュータウン再生に向けた取り組み
こうしたオールドニュータウンの再生に向けて、国や自治体ではさまざまな取り組みが行われています。例えば、近畿地方整備局がニュータウン研究を基に導きだした方針は次の通りです。
- 住環境の保全・活用
- 公共公益・福祉機能の改善
- 移動円滑化
- 地域活性化
そこで求められているのは、コンパクトで機能的なまちづくりです。
国は、オールドニュータウンなどの課題を抱える各自治体に立地適正化計画の策定を求め、生活環境の改善を促しています。
2021年7月時点で全国で594の都市が具体的な取り組みを行い、そのうち398都市が計画を作成・公表しています。

もともとニュータウンは、居住区域と商業施設、学校などが地区内で完結できるようなまちづくりが行われてきました。
そのため、その地域だけで生活を送れるコンパクトシティの典型例と言えなくもありません。
オールドニュータウンを適切に再整備することができれば、高齢者向けのコンパクトシティをつくることも不可能ではないのです。
支援スペースで活気を創出
1971年に入居が開始された東京都にある多摩ニュータウンでは、現在高齢者が集える場所の整備が進められています。そのうちの一つが「福祉亭」というコミュニティスペースです。
福祉亭は、囲碁やおしゃべり、待ち合わせ、昼寝など日々の暮らしを近隣の高齢者とともに過ごすための場です。関西大学が行った福祉亭での継続調査では、こうした支援スペースが高齢者に与えるメリットとして次の4つを挙げています。
- 交流
- 趣味活動や談話などの場を提供することで、高齢者と地域社会とをつなぐ
- 見守り
- 利用者同士での見守り機能を果たす。周囲の人が異変に気づきやすく、緊急時に対応しやすい
- 生活支援
- 福祉亭では食事の提供と配達を行うことで、食生活をサポートしている
- 相互扶助
- 利用者がサービス提供者にもなることが多く、自分の役割をもつことで高齢者の自己実現を図る場にもなる
このような福祉施設やコミュニティカフェの存在によって、オールドニュータウンの高齢者が抱えるリスクを軽減することができます。
ニュータウンの再生問題は、高齢化を防ぐだけではなく、高齢化したニュータウンの生活環境を改善するという視点も大切だと言えるでしょう。
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2020年9月7日 制定