社会問題化する老老介護
社会をうつす老老介護問題
日本の平均寿命は、2020年時点で、男性81.64歳、女性87.74歳と報告されており、男女ともに過去最高を記録しました。
2020年の国勢調査では、全47都道府県において、65歳以上の割合が21%以上となっています。すでに超高齢社会を迎えた日本では日々、老老介護、超老老介護問題が深刻化しています。
「老老介護」とは、高齢者の介護を、高齢者が行うことをいいます。
65歳以上の高齢の夫婦や親子、兄弟間など、さまざまなケースがあります。
さらに、介護者と被介護者が共に75歳を超えている場合は、「超老老介護」と呼ばれます。
社会から孤立してしまい、しかるべきサービスを受けることができずに、「共倒れ」という結果に陥ってしまうというのが、老々介護における大きな問題です。
アパートやマンション暮らしをする高齢者が増え、一昔前ではごく当たり前に行われてきた「ご近所付き合い」が希薄になりました。
また、本来ならば介護サービスの対象であっても、「他人に迷惑をかけたくない」「自分のことは自分でしたい」という気持ちが強いために、他者に頼ることができない人もいます。
さらに、行政が行う高齢者支援は、課題や問題のある高齢者が優先されるため、課題や問題の訴えが無い場合、支援の対象から外れてしまうこともあります。
増加する老老介護、超老老介護世帯
厚生労働省が行った2019年の「国民生活基礎調査」によると、老老介護の割合は全体の約6割の59.7%を占めており、過去最高を記録しています。
75歳以上同士の超老老介護の割合も過去最高の33.1%となり、家族間で介護をしている世帯において、3世帯に1世帯が超老老介護をしていることが明らかとなりました。

この「国民生活基礎調査」のデータは、全国の約7400人を対象にしたアンケート調査の結果のため、実数を表しているわけではありません。
プライバシーの問題もあり、老老介護、超老老介護世帯が、実際のところどのくらい存在しているのか把握することは難しいのです。
老老介護が社会問題化する背景と求められる支援
ライフスタイルの変化や「恥の意識」も要因に
老老介護が増えた一因に、平均寿命と健康寿命に差があることが挙げられます。「健康寿命」とは、日常生活に制限のない期間のことを指します。
厚労省が公表した健康寿命に関する2019年のデータを見ると、健康寿命と平均寿命の差は、男性で8.73歳、女性で12.07歳となっています。この開きが、介護を必要とする可能性が高い期間です。
核家族化もまた、老老介護が増加する一因となっています。2019年の「国民生活基礎調査」によると、65歳以上の高齢者がいる世帯は、全世帯のうち49.4%を占めています。
世帯構造は、「夫婦のみの世帯」が最も多く32.3%、「単独世帯」28.8%、「親と未婚の子のみの世帯」20.0%と続き、「三世代世帯」は9.4%にとどまっています。
時代とともに、「単独世帯」「夫婦のみの世帯」「親と未婚の子のみの世帯」は増加し、「三世代世帯」は減少しているのです。

核家族化により、「子ども家族と同居していない」、「晩婚化が進み親の介護と育児の時期が重なってしまう」、「女性の社会進出」などが影響し、高齢者自身が子どもに頼りにくい状況であることがうかがえます。
また、排泄や入浴などデリケートなケアを他人を頼ることへの抵抗感や、「人に迷惑をかけたくない」という思いから介護サービスの利用を控えた結果、老老介護以外の選択肢がなくなってしまうケースも少なくないのです。
老老介護解決に求められる支援策
老老介護は、介護者の負担が重すぎることが最大の問題です。
介護は体力を使うので、高齢であれば尚更体に負担がかかってしまいます。介護者が体力の限界を迎えているにもかかわらず、それでも介護を続けなければならない状況では、精神的にも疲弊してしまいます。支援の手が少ないと、さらに深刻な精神的負担につながります。
介護者が心身共に疲弊してしまうと、次第に外出する機会も減り、社会とのつながりも希薄になっていきます。介護者、被介護者共に社会から孤立してしまい、安定した生活を送ることが困難になり、共倒れとなってしまうのです。
こうした老老介護の問題点を解決するためには、介護者の負担の緩和と老老介護世帯を孤立させない支援が重要です。
共倒れを防ぐのは、情報の周知と積極的なサービス利用
地域包括ケアシステムの中核を担う地域包括支援センター
問題解決の糸口として、期待したい施策のひとつが、地域包括ケアシステムです。これは、2025年を目処に「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」が一体的に提供される体制で、地域全体で高齢者を助け合う仕組みを目指しています。
この地域包括ケアシステムの実現において、中心的な役割を担っているのが地域包括支援センターで、いわば高齢者のための総合相談窓口です。日本全国すべての市町村にあり、2021年4月末現在で、5,270カ所設置されています。
地域包括支援センターには、保健師や看護師、主任ケアマネージャー、社会福祉士が常駐しており、医療や介護における悩みや不安を、無料で相談することができます。
専門家に相談することで、本当に必要なケアを、本人も被介護者も受けられるようになります。こうした相談は、介護に行き詰まったり、ひとりで抱え込んだりしてしまう前にこそ、真価を発揮します。
まずはこのようなサポートが行政から提供されていることを、老老介護世帯にしっかりと周知することが求められています。行政機関に老老介護世帯であることを知ってもらうことで、孤立してしまう可能性を格段に減らすことができるのです。
介護者の負担減らす「レスパイトケア」の活用
行政に報告するだけでは、介護者に対する支援が十分でない可能性もあります。そこで推奨されているのが、「レスパイトケア」と呼ばれるサービスです。
レスパイトケアとは、介護者が少しの間でも介護から解放され、心身の休息ができるよう、代理の機関などが一時的に介護をおこなうサービスです。言い換えれば、介護者のためのケアサービスなのです。
レスパイトケアの中には、訪問介護やデイサービス、短期入所など介護保険適用のサービスもあります。短期入所療養介護の利用目的をみると、通常のショートステイではレスパイトが最も多く、64.0%を占めています。

レスパイトケアは、介護者の心と体の負担を軽減するのはもちろん、少しの間介護から離れた介護者が元気になることで、被介護者にとってもメリットがあります。家族の介護を誰かに頼ることに、引け目を感じることがなくなるからです。
いつまで続くのか先が見えない不安も、老老介護問題を深刻化させる要因のひとつです。 まずは、行政へ相談したり、サービスを積極的に利用したり、状況を深刻化させないよう動くことが大切です。
老々介護は、本人たちだけでは解決できない問題です。共倒れとなってしまう前に、必要な情報を届け、しかるべき支援を受けられるよう手助けすることが、国や支援者には求められているのです。
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2020年9月7日 制定