新型コロナ対策によって高まるBCPの必要性
2022年度診療報酬改定で訪問看護ステーションにBCP策定を義務化
厚生労働省は2022年度の診療報酬改定で、訪問看護ステーションに対し、新たに業務継続計画(BCP)の策定を義務付ける方針を固めました。
BCPとは、「Business Continuity Plan(ビジネス・コンティニュティ・プラン)」の略称で、企業などが、テロや災害などに遭遇した際でも、重要な業務が継続できる方策や戦略を記述した計画書のことです。
BCP策定に取り組むにあたり、重要な点が5つあります。
- 各担当者を決めておくこと(誰が、何をするか)
- 連絡先を整理しておくこと
- 必要な物資を整理しておくこと
- 上記を組織で共有すること
- 定期的に見直し、必要に応じて研修・訓練を行うこと
介護事業所において進められてきたBCP策定とは
コロナ禍以前、介護事業所ではBCPの策定があまり進んでいませんでした。厚労省が社会福祉施設などを対象に行った2019年のアンケート調査によると、高齢者関連施設の策定率は29.7%にとどまっています。

BCPを策定していない理由には、「事業活動の中断が重大なレベルまで達したことがほとんどない」(30.8%)、「策定したいが専門知識が不足」(29.5%)などが挙げられています。
そのほかの回答も参照し総合的に分析すると、BCP策定の必要性を感じていない施設と、感じているものの知識・人材不足などで策定できていない施設というパターンがありました。
しかし、新型コロナウイルスの流行によって、マニュアル作成の必要性を感じた介護事業所が増えてきました。
介護労働安定センターの調査によると、各サービスの総施設数のうち、2~3割の施設が「新型コロナウイルス流行を機に(BCPを)策定した」と回答しています。
BCP策定の現状。対応が遅れる理由
BCPが実際に役割を果たしてきた場面
BCPは本来的な役割として、災害時に効果を発揮します。
先述した厚労省のアンケートで、被災した社会福祉事業所などに「BCPが役に立ったか」と尋ねたところ、「非常に役に立った」が8%、「概ね役に立った」が50.0%で、全体の6割程度の施設が役に立っていると実感していることが示されました。

BCPで取り決めていた中でも特に役に立った対策として、「電気が止まった場合の対策」(71.4%)、「職員との連絡」(65.1%)、「地震が発生した場合の職員の参集ルール」(63.5%)、「備蓄」(58.7%)が挙げられています。
一方、役に立たなかった対策には、「内容があいまいだった」(34.1%)、「想定上の被害だった」(9.8%)、「実現性に欠ける内容だった」(9.8%)とあります。
53.7%を占める「その他」を選んだ理由の中には、「マニュアルを見る余裕がないため」という声もありました。
BCPには欠かせないマニュアルの運用状況が芳しくない理由
2021年度の介護報酬改定によって、すべての介護事業所では感染症対策のためのBCP策定が義務づけられました。
しかし、介護労働安定センターの調査によると、「一部しか運用されていない」「まったく運用されていない」という回答は、管理職で約20%、主任・まとめ役で約15%、一般職で約11%ありました。
運用が進まないのは、事業者が策定しても、それを現場にまで浸透させることに難しさがあるのではないかと推測されています。今後は現場の実態を把握したうえで、BCPの内容を改善していく必要があるのです。
医療・介護分野へBCPを浸透させる鍵は、人材確保と体制構築
一般企業におけるBCPの有効性
一般企業における感染症対策のBCPは、主に勤怠管理やテレワークの推進といった働き方の改革です。
経済産業省が紹介している医療用器具開発メーカーの事例では、2013年から感染症対策のマニュアルを策定し、社内で共有していました。さらに、マニュアルに沿って、発熱者に対する出社禁止などの措置を迅速に実施したのです。
今では、感染予防と業務継続の両立を図るため、働き方改革の一環として導入していた時差勤務制度を拡充し、通勤時間を割り振るなどの対策を講じています。
その際、対応がうまくいった理由の一つとして、社員の理解が深かったことが挙げられています。
深い理解を得られたのは、BCPが社員一人ひとりの業務フローに対応できるように策定されていたことが、大きな要因と考えられています。
鍵を握るのは人材確保
一方、介護事業所では直接利用者を支援することから、テレワークを推進するのは困難です。そのため、優先すべき業務を明確にして、適切に業務分担をすることが大切です。
しかし、こうした対策を講じるにも、多くの人員が必要となります。慢性的な人員不足に悩む介護業界では、介護職員が一人欠員するだけでも、深刻な人材不足の状況に陥ります。
介護労働安定センターの調査によると、コロナ禍によって人員の不足感が強まったと回答した介護従事者の割合は29%に達しています。

こうした事態に対応するには、アウトソーシングやワークシェアリングなどを活用して人員を確保することが大切です。感染症流行時に迅速に対応するためには、平時より関係団体と連携し、人員を確保できる体制を構築しておくべきではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定