高まる身元保証サービスの需要とトラブル
国民生活センターにはトラブル相談が多数寄せられている
超高齢社会の進展に伴って、日本では単身高齢者の増加が危惧されています。
内閣府の「令和3年版高齢社会白書(全体版)」によると、2020年時点で65歳以上人口の占める割合は65~74歳13.9%、75歳以上14.9%であり、人口の約3割が65歳以上となっています。

単身高齢者は近所付き合いが乏しく、社会から孤立しやすいといわれています。また、親族と疎遠だったり、配偶者と死別してしまっていたりすると、身元を保証してくれる人がおらず、高齢者施設にも入所できないという問題が生まれます。
そのため、身元保証サービスの重要性が増しています。
身元保証サービスとは、契約時に必要になる「身元保証人」を代行してくれるサービスのことで、主に法律事務所や社団法人など様々な法人が提供しています。
しかし、身元保証サービスにおけるトラブルが後を絶ちません。国民生活センターが2019年に発表した資料によると、トラブルによる相談件数は2018年で101件となっています。

100万円を請求されたトラブルの事例も
国民生活センターによると、トラブル事例には次のようなケースがあるとされています。
- 契約内容がわからない
- 福祉サービスの窓口に紹介されるがまま、高額の利用料で契約してしまった
- 高額な預託金を請求された
- 諸費用を支払った後に預託金として100万円を請求された
- 契約するつもりのなかったサービスも含まれていた
- 契約書をよく読まずに契約し、100万円ほど支払ったところ、後々になって自分が必要としていない生活支援サービスなどが含まれていることを知った
- 契約時のサービスが適切に提供されない
- 定期的な安否確認などのサービスが提供されずに不満を抱いた
このように、契約内容をよく読まずに事業者に言われるまま契約してしまったり、約束されたサービスが提供されなかったりしたケースが目立ちます。
そのほか、行政に寄せられた相談の中には、所有するマンションの権利書や預金通帳を確認しに自宅に来たりするなど、契約には必要のない行為をする悪質業者の事例もあります。
介護施設が身元保証人を求める理由
社会問題化し厚労省が調査を実施
身元保証サービスが大きな問題となったのは、2016年に公益財団法人日本ライフ協会が起こした事件がきっかけです。
当時、日本ライフ協会では、約150万円の契約金を最初に徴収して、そのうち約100万円を入会金・会費として使用して、残りの約50万円を葬儀費用などに使用するための預託金にしていました。
預託金はあくまで預けている金額なので、解約した場合には契約者に返済しなくてはなりません。しかし、同協会は預託金を従業員の給与などに不正流用するなどずさんな管理を行っていたために、社会問題化したのです。
これを受けて、厚生労働省は実態調査を実施しました。本来、医療保険や介護保険などの制度上では、身元保証人を必要としません。しかし、実際には身元保証人やそれに準じる人のサインが必要とされるケースがほとんどだったのです。
例えば、高齢者施設を対象に「契約書に本人以外の署名を求めるか」を尋ねたところ、「求めている」と回答した割合は95.9%を占めていました。
その署名欄の名称は「身元引受人」が59.5%で最多で、次いで「代理人(者)」が23%、「身元保証人」が20.5%でした。
こうした署名を求める理由として、「緊急時(事故等)の連絡先」(93.1%)、「亡くなった場合のご遺体と遺品の引取り」(90.4%)、「施設利用料金の支払、滞納の場合の保証」(88.2%)が上位を占めていました。

消費者庁は施設側に身元保証人を求めないよう呼びかけ
上記のような調査結果を踏まえ、消費者庁などでは、医療・介護施設側になるべく身元保証人を求めないように呼びかけています。
しかし、仮に身元保証人のいない人が入所中に亡くなった場合、整理に必要な費用は病院・施設側が負担しなければなりません。身元保証人がいればその方が対応することになるので、費用面で大きな差が生じるのです。
亡くなった人の遺品整理は最低でも数十万円が必要となります。こうしたリスクを避けるため、身元保証を求めざるを得ないのです。
今後、さらに単身高齢者が増加すると見られる中、身元保証サービスは入院や施設入所などで必要性が高まると予想されますが、そのトラブルが相次いでいる以上、何らかの対応が必要なのは明らかです。
しかし、制度面での対応はいまだ決まっておらず、消費者庁による身元保証サービスの契約に関する注意を促すなどの啓発活動にとどまっています。
身寄りのない高齢者への支援体制づくりが急務
現状で有効な公的支援は少ない
身寄りのない高齢者に対する公的支援も、充実しているとは言い切れません。
主な支援制度として活用されているのは、成年後見制度と日常生活自立支援事業の2つです。
- 成年後見制度
- 財産管理や介護・福祉サービスの施設入所の契約や利用契約などの行為を、弁護士などに代行してもらう制度
- 日常生活自立支援事業
- 主に認知症や精神障がいなどを患っている人を対象に、社会福祉協議会などが実施する支援制度で、福祉サービスを利用する際の契約などを援助してくれる
いずれも契約などの事務行為を代行してくれますが、成年後見制度で弁護士などに依頼すると相応の費用がかかります。
日常生活自立支援事業はどこまで支援するのか明確ではなく、あまり活用が進んでいない自治体もあります。行政機関などの人員だけでは対応できないという問題もあり、多くの課題を抱えています。
また、いずれも本人の判断能力が衰えた高齢者を主な対象としており、軽度である場合は利用できない可能性もあります。
福祉と金融機関の連携が解決の糸口になるか
行政だけでは対応しきれず、支援制度にも課題を抱えている現状では、今後増加すると見込まれる身寄りのない高齢者は、身元保証サービスなどの民間サービスを利用するしかありません。
しかし、身元保証サービスは100万円以上の高額になることが多く、金額に見合った適切なサービスを提供していたとしてもトラブルにつながることもあります。
こうした問題を解決するためには官民連携によるサービスの提供が解決の糸口になるのではないでしょうか。
例えば、金融庁では身寄りのない高齢者で、成年後見制度などを利用できない人の金銭管理について議論を重ねており、金融機関と福祉機関の連携を模索する方針を提起しています。
具体的には、介護や医療など明らかに本人のための支出である場合など、金融機関が本人の口座から費用を直接振り込むなどの柔軟な対応が挙げられています。
こうした動きが死後事務などでも適用されるようになれば、介護施設などのコストを軽減することができます。
身元保証人がいないことによって生じるリスクを軽減するためには、こうした連携を深めるような制度や取り組みを実施していくべきではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定