不適切なケアマネジメントの実態
現場のケアマネの3割が問題意識を持っている
近年、ケアプランについて問題視されることが多くなっており、厚生労働省は実態調査を実施し、『サービス付き高齢者向け住宅等における適正なケアプラン作成に向けた調査研究』としてまとめました。
この調査は、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームを対象(以下、高齢者向け住まい)に、適切なマネジメントが行われているかどうかを現場のケアマネージャーにアンケート調査をしたものです。
高齢者向け住まいで利用者本位のケアマネジメントが実践されているかどうかを尋ねたところ、「実践されている」が21.7%、「やや実践されている」が45.5%でした。
一方で、「やや実践されていない」25.3%、「全く実践されていない」と考えている回答者も7.4%いることがわかっており、約3割のケアマネージャーが現状のケアマネジメントを適切だと感じていないことが明らかにされています。
さらに、ケアマネージャーは、「利用者や家族等よりも住宅・ホームを運営する法人の利益や都合を優先せざるを得ない場合がある」(44.6%)、「(認知症の方など)本人のニーズを引き出すことが難しい」(29.5%)、利用者や家族等にサービス付き高齢者向け住宅・住宅型有料老人ホームの制度を理解してもらうことが難しい」(26.8%)などの課題を挙げています。

「個別性の欠如」「過剰なサービス」…不適切なケアマネジメントの特徴
ケアマネジメントは、利用者の状態や置かれた状況などそれぞれに合わせて個別のケアプランを立て、それに基づいて支援を実施することが望ましいとされています。
しかし、高齢者向け住まいでは各利用者に関係なく、画一的なサービスを行っているケースもあり、利用者の意思や状態などのアセスメントが不十分な事例も見られます。
不適切だとされているケアマネジメントの事例は、次の5つの特徴があるとされています。
- 1.個別性の欠如
- 利用者の意向や課題がケアプランに反映されず、画一的なものになっている
- 2.過剰なサービス
- 高齢者向け住まいと併設されている同一法人の介護事業所のサービスを必要以上に提供している
- 3.サービスの不足
- 利用者が必要としているサービスがケアプランに組み込まれていない。または検討さえされてない
- 4.事業所選択の権利侵害の懸念
- 利用者の意向を踏まえずに同一法人内の介護サービスを受けさせており、ケアマネージャーもそれに同調している
- 5.ケアマネジメントサイクルの問題
- 法的に定められた期間以外で、ケアプランの見直しがほとんど行われていない
例えば、在宅介護をしているときは週に2日だったデイサービスが、高齢者向け住まいに入居してから週5日通うようにいわれたり、専門的なリハビリを必要としているのに、通わせてくれなかったりするような事例が起きています。
不適切なケアマネジメントが相次ぐ背景
同一法人内の併設によって「囲い込み」が起きる
問題の背景にあるのは、高齢者向け住まいの運営法人による「囲い込み」です。これは、高齢者向け住まいと通所介護や訪問介護などの事業所が併設されているか、同一法人内で運営されているときに起こりやすいとされています。
例えば、利用者に対して特定の介護保険サービスの利用を契約条件にしたり、同一法人内のサービス利用で入居費用を割り引いたりするケースが当てはまります。
囲い込みが生じる主な原因は、2011年に「高齢者住まい法」が全面改正され、増加に転じたことが発端とされています。実際、サ高住は2016年時点で19万9,056戸でしたが、2020年には26万854戸にまで増加しています。
そのため、高齢者向け住まいを提供する介護事業者による競争が激化し、利用者の囲い込みにつながっていると考えられています。
厚生労働省の資料によると、介護保険事業所を1つ以上併設・隣接している高齢者向け住まいの割合は、全体の67.9%に達しており、不適切なケアマネジメントが生じる原因となっています。

こうした不適切な事例を是正するのは、各市町村の役割ですが、実態把握が困難なため、現状では具体的な対策に乗り出せていません。
適切なケアマネジメントを実施する施設には入居者も集まる
また、適切なケアマネジメントを実施することで高齢者向け住まいにもメリットがあるとされています。
上述のアンケート調査の分析によると、「適切なケアマネジメントが実践できている」と回答した事業者ほど、入居率が高くなっていることが示されています。

さらに、適切なケアマネジメントが実践されている事業者ほど、介護職員が定着し、利用者や家族からのクレームが少ない傾向もわかっています。
ケアプラン点検はより厳しくなる
行政上の措置で停止命令が下ることもある
高齢者向け住まいが不適切な事例を行っていることがわかると、高齢者住まい法や老人福祉法に基づいて行政上の措置を取られることがあります。主な措置の対象は次の通りです。
- 1.是正指示
- 契約締結前の書面交付・説明、入居契約に沿った生活支援サービスの違反など
- 2.改善命令
- 入居者の処遇に関する不当な行為・運営に関して入居者の利益を害する行為など
- 3.事業制限・停止命令・罰則
- 1や2のような行為があり、入居者の保護が必要な場合など
実際に停止命令まで下るケースは多くはありませんが、利用者やその家族からの報告などにより、自治体の調査に至るケースもあります。
ケアプラン点検の徹底が不可欠
不適切なケアマネジメントを是正するため、厚生労働省は自治体によるケアプラン検証・点検の制度を徹底するよう求めています。
自治体は、高齢者向け住まいに併設されている居宅介護支援事業所(ケアマネージャー)に対し、ケアプランを点検することができます。
この点検では、主に「サービスの種類や量が適正か」が検証されます。その結果を踏まえ、不適切だと判断されるとケアプランの変更を促されます。
ただ、市町村が勝手にケアプランを変更することはできないため、検証結果をケアマネージャーと利用者本人などに説明するなどの対応が取られます。
しかし、ケアプラン点検の実施状況は低調で、全国平均で6割ほどにとどまっています。そのため、厚生労働省はケアプランの点検をより強化していくよう自治体に促しているのです。
今後、高齢者向け住まいと併設されている居宅介護支援事業所のケアプラン点検はより厳しくなることが予想されます。事業者・利用者を問わず、適切なケアマネジメントが行われているかどうかチェックすることが大切ではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定