
深刻な人手不足に直面している介護業界。
政府、事業者が介護人材の確保対策を進めているものの、未だ目立った効果は表れていません。
今年度予算には、介護人材確保策として、離職した介護人材のうち一定の経験を有する者に対する「再就職準備金の創設」や新規に介護職を目指す学生向けに「就学資金貸付制度の拡充」など60億円が盛り込まれていますが、実効性に疑問があり、うまく機能するかどうかは未知数です。
介護業務につきまとうイメージといえば「低賃金」「重労働」。
「低賃金」については、各種データがその実態を証明しています。
(財)介護労働安定センターの「平成26年度介護労働実態調査」の賃金データによれば、介護労働者全体(月給の者)の賃金は23万7,785円。
これは、残業代も含めた数字です。
その内訳は、看護職員が28万8,984円と30万円に近くなっているのに対し、訪問介護員は20万5,088円、介護職員は22万2,445円となっており、介護関連の職種がいかに低賃金であるかということがわかります。
。

一方、「重労働」については、賃金のように実情を表すデータはこれまであまり発表されてきませんでした。しかし、先般、日本医療労働組合連合会発表の「2015年介護施設夜勤実態調査結果」により、介護業界の重労働ぶりが明らかになりました。
小規模な施設ほど「2交替夜勤かつ16時間以上の長時間勤務」が常態化!
介護施設の夜勤形態は、「3交替夜勤」と「2交替夜勤」に大別されます。
一般的に「3交替夜勤」は、1日を3つの時間帯に分け、「2交替夜勤」は、1日を2つの時間帯に分け、勤務者を変える勤務体制のことです(実際は、3交替・2交替夜勤と言っても、介護施設によって勤務時間はさまざまですが、一般的な例を用いて解説しています)。
3交替夜勤の場合、勤務時間は8時間で休憩時間は1時間。
実質労働時間は7時間となることから、身体への負担が少ない勤務形態と言えるでしょう。
一方、2交替夜勤は1度の勤務が12時間と長時間に及ぶため、身体への負担は大きくなります。
深夜勤務ならなおさらでしょう。
労働基準法では、「勤務時間8時間超なら休憩時間は1時間与えればよい」と定められているため、12時間勤務でも休憩時間は1時間です(ただし、独自に休憩時間を与えている介護施設は数多くあります)。
同調査によると、2交替夜勤(2交替と当直と2交替の混合の合計)が88.1%を占めています。
そのうち、7割を超える施設が16時間以上の長時間勤務となっています。
深夜帯に勤務する介護職員の身体負担の大きさを物語るデータです。
一方、3交替夜勤はわずか10.5%(3交替と当直と3交替の混合)に過ぎず、介護職員の厳しい勤務実態が浮き彫りになっています。
| 3交替(12施設) | |
| 2交替・3交替の混合(2施設) | |
| 2交替(124施設) | |
| 当直と3交替の混合(3施設) | |
| 当直と2交替の混合(2施設) |
業態別に夜勤形態を見ると、「グループホーム」「小規模・看護小規模多機能型居宅介護」では、すべて2交替夜勤でした。グループホームにおいては、62.5%の施設が16時間以上の長時間勤務。全業態のなかで最も多くなっていることがわかります。

特別養護老人ホームや老人保健施設など、比較的入所者が多い施設ほど3交替夜勤の割合が高くなっており、どうやら小規模な施設ほど2交替勤務かつ16時間以上の長時間勤務であると推測できそうです。
「ワンオペ」が当たり前。介護職員はまともに休憩も仮眠も取れない
多くの介護施設では、一人で施設内の業務をやりくりする、いわゆる“ワンオペ”(ワンオペレーション)が常態化しているのが現状です。
特に、グループホームや小規模・看護小規模多機能型居宅介護のほとんどがワンオペとなっており、肉体的な疲労が溜まりやすい夜間帯でも1人で高齢者のケアにあたらなければなりません。
当然、なかには認知症高齢者や要医療行為者もいます。
この人員体制では、利用者の安全、安心の確保は万全とは言えません。
ところが、「グループホーム」「小規模・看護小規模多機能型居宅介護」では、制度上「ワンオペ」が認められているのです。
「ワンオペ」では、まともに休憩を取れない状態と推測されますが、現在は容認されている状況です。
| 2交替 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 職場数 | 1人 体制 |
1.3or 1.5人 |
2人 体制 |
2.3or 2.5人 |
3人 体制 |
|
| 特別養護 老人ホーム |
21 | 12 | - | 8 | - | 1 |
| 介護老人 保健施設 |
72 | 18 | 3 | 34 | 5 | 12 |
| グループ ホーム |
36 | 36 | - | - | - | - |
| 小規模・ 看護小規模 多機能型 居宅介護 |
15 | 15 | - | - | - | - |
| 短期入所 生活介護 |
23 | 14 | 1 | 8 | - | - |
もうひとつ注目したい質問項目が「仮眠室の有無」。
夜間の勤務といえど、仮眠でもとらなければスタッフの身体的負担は軽減できません。
しかし、調査の結果から見えてきたのは、グループホームと小規模・看護小規模多機能型居宅介護における仮眠室の有無の実態。
それはたったの2~4割という数字で、労働基準や安全衛生といった観点からも、相当に厳しい労働環境であることがわかったのです。
| 業態 | 有効 回答 施設数 |
仮眠室の有無 | 割合(%) | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 有 | 無 | 有 | 無 | ||
| 特別養護 老人ホーム |
21 | 12 | 9 | 57.1 | 42.9 |
| 介護老人 保健施設 |
43 | 35 | 8 | 81.4 | 18.6 |
| グループ ホーム |
17 | 6 | 11 | 35.3 | 64.7 |
| 小規模 多機能型 居宅介護 |
9 | 2 | 7 | 22.2 | 77.8 |
| 看護小規模 多機能型 居宅介護 |
5 | 2 | 3 | 40.0 | 60.0 |
| 短期入所 生活介護 |
23 | 14 | 9 | 60.9 | 39.1 |
| 合計 | 118 | 71 | 47 | 60.2 | 39.8 |
次に夜勤の回数を見ていきましょう。
「平成26年度介護労働実態調査」によると、施設系の夜勤回数は「5回以上7回未満」が46.7%と最も多く、次いで「3回以上5回未満」(33.5%)となっています。
介護施設によって所定労働日数に差があるため、一概には言えませんが、「週に1度以上は夜勤がある」施設が多いと捉えて間違いないでしょう。
グループホームの約7割は非正規職員が夜勤を任されている!?
こうした厳しい労働環境が周知のものとなり、正規職員の雇用が難しく、慢性的な人手不足に陥っているのが介護業界の現状です。
となると、非正規職員を雇用し、そうした人に深夜勤務を担当してもらうのが業界の常となっている状況も、数字から見て取れます。
グループホームでは約7割、小規模・看護小規模多機能型居宅介護でも約4割、民間に比べれば職員の数に比較的余裕があると見られる特別養護老人ホームでさえ約5割が、それぞれ非正規職員に夜勤を担ってもらっているのです。
| 業態 | 有効 回答 施設数 |
夜勤に 入った 人数 |
うち 非正規 職員人数 |
割合 (%) |
非正規職員 が夜勤に 入った 施設数 |
割合 (%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 特別養護 老人ホーム |
23 | 632 | 67 | 10.6 | 12 | 52.2 |
| 介護老人 保健施設 |
52 | 1,335 | 75 | 5.6 | 18 | 34.6 |
| グループ ホーム |
24 | 235 | 65 | 27.7 | 17 | 70.8 |
| 小規模 多機能型 居宅介護 |
10 | 73 | 16 | 21.9 | 4 | 40.0 |
| 看護 小規模 多機能型 居宅介護 |
5 | 34 | 8 | 23.5 | 2 | 40.0 |
| 短期入所 生活介護 |
26 | 253 | 50 | 19.8 | 14 | 53.9 |
グループホームの「夜勤加算」取得率は約5割。事業規模が小さいため加算対象にならないことも
“3K”と揶揄されることも多く、ただでさえ人手不足になりがちな職場なのに、さらに低賃金や重労働といったファクターが重しとなって求人に足踏みされがちな介護業界。
特に顕著なのが小規模で運営している事業所で、「夜勤加算」の取得率を見てみると特別養護老人ホームが93.8%、老人保健施設が86.2%もの取得率に上っているのに対して、グループホームは56.2%という低い数字。
事業規模が小さいために、夜勤加算の対象にならないといったこともあります。

現在、政府は特別養護老人ホームの増設を急いでいますが、すぐに進むとは考えにくい状況です。 小規模事業所を中心に介護職員は確実に疲弊しています。賃金アップはもちろん、労働環境の整備が求められるということは、上記のデータからも明白と言えるでしょうね。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 71件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定