医療ソーシャルワーカーの役割とは?
患者と家族への多面的な支援
医療ソーシャルワーカー(MSW)は、病院やその他の医療機関で働く福祉の専門家です。患者やその家族が直面する心理的、社会的な問題に対して、多面的な支援をしています。具体的には、病気の告知を受けた際の不安や、退院後の介護サービスの利用、障がいが残った場合の制度利用についての相談に応じます。
また、社会にスムーズに再適応できるように助けることも業務のひとつです。医療チームの一員として、他の医療職と密接に連携を取りながら包括的に支援することで、患者や家族が困難を乗り越える上で非常に重要な役割を果たします。
退院・退所後の支援は、介護サービスの選定や転院、在宅医療への移行、住居問題の解決など。社会復帰するために、職場や学校との調整、社会復帰に向けた心理的・社会的問題の解決などの援助や、医療サービスを適切に利用できるような支援も行います。
ほかにも、社会福祉や社会保険制度を活用した経済的課題に対する支援など、多面的に支える役割を担っているのです。
資格とキャリアパス
医療ソーシャルワーカーになるためには、特定の資格が法律で定められているわけではありませんが、多くの場合、社会福祉士や精神保健福祉士の資格が求められます。これらの資格を取得するためには、大学、大学院、短期大学、専門学校などで社会福祉や医療福祉に関する学びを深め、国家試験に合格する必要があります。
福祉系の4年制大学で指定された科目を学び、国家試験の受験資格を得るのが一般的なルートで、試験合格者の大多数は現役の学生です。合格率は例年20~30%を推移していましたが、2023年の合格率は44.2%と大きく上昇しています。

福祉系の学部がない大学や短期大学、専門学校を卒業した場合でも、所定の条件を満たした後、社会福祉士養成施設で1~2年学ぶことで受験資格が得られます。
医療ソーシャルワーカーとしてキャリアをスタートさせた後は、経験を積みながら専門性を高めることで、より高度な支援が可能になります。専門性の高い医療ソーシャルワーカーは、教育や研修、地域福祉の企画・運営など、さらに幅広い分野で活躍することができるでしょう。また、ケースワーカーや生活相談員、児童指導員など、活躍の場によって異なる名称で働くこともあります。
社会的認知度と将来性
医療ソーシャルワーカーの認知度は徐々に高まっており、その役割と重要性がより広く理解されつつあります。しかし、実際に医療機関で働いている医療ソーシャルワーカーの数は数名~10数名程度と比較的少数であるため、病院内で重要な役割と責任を担っています。しかしながら、患者とその家族に寄り添う姿勢は変わっておらず、社会への貢献度も高いとされています。
また、少子高齢化が進む中で将来性も高まっています。医療と福祉の連携の重要性が増していくにつれ、社会的ニーズは今後も増加することが予想されます。社会の変化に応じて、病気や障がい、加齢などによる苦境にある人々への支援も重要視されてきているため、今後も認知度は上がっていくと考えられるでしょう。
医療ソーシャルワーカーの現状と課題
年収の現状
医療ソーシャルワーカーの年収は、勤務形態や勤務地によって大きく異なります。地域による差は、その地域の人口密度や医療機関の数、医療ソーシャルワーカーへの需要などによって変わってくるため、年収を上げたい場合は勤務地選びも重要になります。
公益財団法人社会福祉振興・試験センターの調査によると、2019年の社会福祉士の年収は男性平均473万円、女性平均365万円です。

年収アップを実現させるためには、長く同じ職場で勤務しキャリアアップを図るか、社会福祉士や精神保健福祉士などの資格を取得することが有効です。特に資格は、資格手当が付くことも多いだけでなく、キャリアの幅を広げることもできます。ただし、特に公立病院では非正規雇用の採用が多く、医師や看護師に比べ医療ソーシャルワーカーが人件費のコストカット対象にされることも少なくありません。
以上を踏まえると、専門性を高めたり、資格を取得することで、収入向上のチャンスが見込めると言えます。また、職場選びにおいても、自身のキャリアプランに合った環境を選ぶことが重要です。
医療ソーシャルワーカーの人数と将来性
社会福祉士のうち、医療ソーシャルワーカーとして働いているのは全体の約10%です。

相談員、ケアマネージャーに次いで多くの人が医療ソーシャルワーカーとして働いており、社会福祉士の職種としても比較的人気だと言えるでしょう。
社会福祉士の職場は医療機関だけに留まらず、介護施設や教育機関、さらには学校や企業内の相談室など多岐にわたります。それぞれに良さはありますが、大規模な施設や公務員として働く場合は比較的安定した待遇が期待できるため、安心してキャリアを重ねることが可能です。
しかし、医療ソーシャルワーカーの処遇改善はまだ先の話とされており、特に公立病院では非正規雇用も多いのが現状です。医療ソーシャルワーカーを増やすことは年々難しくなっており、その配置人数は施設基準によって制限されていることから、小規模病院では必要最小限の採用に留まることもあるでしょう。看護師や介護士のような肉体労働が必要な職種と比べて、医療ソーシャルワーカーの採用人数は少ない傾向にあり、満足できる給料の職場に出会えない場合もあります。
将来性に目を向けると需要は高まる一方で、求人状況や処遇改善の速度には課題が残る状況です。これから医療ソーシャルワーカーを目指す方々は、専門性を高める研修の機会を積極的に活用し、長期的なキャリア形成を意識することが重要と言えるでしょう。
医療ソーシャルワーカーを目指すべき理由
社会貢献という仕事のやりがい
医療ソーシャルワーカーの大きなやりがいは、社会的にニーズが高まっている中で、重要な役割と責任を担うことができる点にあります。少人数のため、病院内で重要なポジションである分、大きなやりがいを感じることができるのです。また、社会への貢献度も非常に高く、仕事に対する大きな意義を感じられるでしょう。
活躍の場は、病院やクリニックだけでなく、保健所や介護施設など多岐にわたります。医療機関の種類によって、医療ソーシャルワーカーの仕事内容や役割にも違いがあり、それぞれの場所で求められる支援やサービスを提供します。
医療ソーシャルワーカーによる、医療と福祉の架け橋となる献身的なサポートは、多くの人々がより良い生活を送るために重要で、社会的意義の高い仕事です。この点をやりがいに感じられるかどうかは医療ソーシャルワーカーを目指す上で重要になるので、しっかりと考えておくようにしましょう。
将来性と安定性
医療ソーシャルワーカーの活躍の場は、介護現場や医療機関、教育機関など多岐にわたり、最近では学校や企業内の相談室に配置されるケースも見られます。これらの場で、利用者の多様な問題に寄り添って支援をするため、福祉の専門家としての需要は今後も高まり続けることが予想されます。
また、医療ソーシャルワーカーは医療専門職ではなく、福祉専門職としての位置付けにあります。医師や看護師とは異なる視点から、患者やその家族の支援を行うことも役割の一つでしょう。
将来性に関しては、医療ソーシャルワーカーとして働くためには社会福祉士や精神保健福祉士の資格が重要になります。資格がない場合と比較して、資格を持つ医療ソーシャルワーカーは病院における診療報酬に影響を与えるため、資格取得を採用条件にしている病院も少なくありません。
総合的に見ると、医療ソーシャルワーカーは社会的なニーズの高まりとともに、その需要が増加しており、将来性が高い職業と言えるでしょう。福祉の専門家として、彼らの役割は今後も社会において重要なものになります。
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2020年9月7日 制定