共生型サービスとは?
共生型サービスとは、障害福祉サービス事業所が要件を満たすことで、介護保険サービスも提供できるようになる仕組みです。2018年度の介護保険制度改正で新設され、障がい者が65歳以上になっても、なじみの事業所でサービスを継続して利用できるようにすることを目的としています。
高齢化が進む中、介護人材の確保が大きな課題となっています。共生型サービスは、限られた人材を有効活用しながら、地域のニーズに合わせてサービス提供を行うことを可能にする制度と言えるでしょう。実際に共生型サービスの指定を受けた事業所の81.8%が「利用者や家族から継続利用の希望があったから」と回答しており、利用者や家族のニーズの高さがうかがえます。

共生型サービスのメリット・デメリット
利用者のメリット・デメリット
共生型サービスの最大のメリットは、利用者が65歳を迎えても、それまで利用していたなじみの事業所で引き続きサービスを受けられることです。
介護保険サービスに移行する際、新しい環境に適応するのは容易ではありません。特に、障害特性のある方にとって、環境の変化は大きなストレスとなります。共生型サービスであれば、同じ場所で、顔なじみのスタッフからサポートを受けられるため、利用者の安心感は大きいでしょう。
一方で、共生型サービスに移行すると、それまで無料だった障害福祉サービスとは異なり、利用者負担が発生します。低所得の方にとっては、サービスの利用を控えざるを得なくなる可能性もあります。ただし、一定の要件を満たす場合、自治体による利用者負担の軽減措置が受けられるケースもあるので、詳細は市区町村の窓口に相談するとよいでしょう。
事業者のメリット・デメリット
共生型サービスを実施することで、事業者は障害福祉と介護の両方のサービスを提供でき、幅広い利用者のニーズに応えられるようになります。一方で、共生型サービスでは、基本報酬が通常の介護保険サービスの93%または95%に減算されるため、事業収入の確保が課題となります。
実際、共生型サービスの指定後、33.3%の事業所が「事業所の収入確保」を課題に感じています。

加えて、サービス提供体制を整えるための職員の確保・育成、介護保険の事務手続き対応など、事業者の負担は少なくありません。共生型サービスに取り組む際は、こうしたデメリットも考慮した上で、運営体制を整備していく必要があります。
共生型サービスの対象と指定基準
共生型サービスの対象となるのは、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護の3つのサービスです。それぞれ、居宅介護や重度訪問介護、生活介護や自立訓練、短期入所といった障害福祉サービスに相当します。
共生型サービス事業所の指定を受けるには、障害福祉サービスの指定を受けている事業所であること、サービスを提供する場所が一体的であることなどの要件を満たす必要があります。人員配置基準や設備基準、運営基準についても、一定の条件の下で障害福祉サービスの基準が適用されます。ただし、介護保険の基準を満たしていない場合、報酬が減算される点には注意が必要です。
共生型サービスの報酬体系と加算・減算
共生型サービスの報酬は、通常の介護保険サービスの93%または95%に設定されています。一方、通所介護と短期入所生活介護では、生活相談員の配置や夜勤職員の配置状況に応じて、加算を算定できる場合があります。ただし、障害福祉サービスでは算定可能だった加算が、共生型サービスでは算定できないケースもあるので、報酬額のシミュレーションを十分に行うことが大切です。
共生型サービス事業所になるための手続き
共生型サービス事業所の指定を受けるためには、通常の介護保険サービスの指定申請に比べて簡素化された手続きが用意されています。まずは、事業所所在地の市区町村や都道府県の担当窓口に事前相談を行い、必要な書類や手順を確認しましょう。
申請にあたっては、「共生型サービス事業所指定申請書」など所定の書類を提出する必要があります。審査を経て、要件を満たしていると認められれば、共生型サービス事業所としての指定を受けられます。指定の有効期間は6年間で、更新手続きが必要となります。
介護事業者が共生型サービスを始めるためのポイント
共生型サービスを始めるにあたって、介護事業者が留意すべき点は大きく分けて2つあります。
1つは、障害特性を理解し、一人ひとりに合ったサービス提供を行う体制を整備することです。障害福祉の経験が豊富な職員を配置したり、研修を実施したりするなど、専門性を高める取り組みが求められます。利用者との信頼関係を築き、安心して過ごせる環境づくりを心がけましょう。
もう1つは、事業の継続性を担保することです。共生型サービスは事業収入が減少するリスクがあるため、利用者の確保や効率的な運営により、安定的な事業運営を図る必要があります。加算の算定要件を満たすことで収入を確保したり、地域のニーズを踏まえて柔軟にサービス提供を行ったりするなど、創意工夫が求められるでしょう。
事業者視点でも認識が異なる
共生型サービスは、障害福祉と介護のサービスをつなぐ新たな取り組みです。利用者や家族のニーズは高く、サービスの普及が期待されている一方、事業者にとっては収入面などの課題もあります。実際、共生型サービスの指定を受けている事業所の69.7%が「普及していくことが必要」と考えている一方、未指定の事業所では51.1%にとどまっており、認識の違いがみられます。

介護事業者には、共生型サービスの意義を理解し、地域の実情に合わせてサービス提供体制を整備していくことが求められます。関係機関と連携しながら、利用者や家族の思いに寄り添ったサービス提供を行うことが何より大切です。共生型サービスの推進により、誰もが安心して暮らせる地域共生社会の実現につながることが期待されています。
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2020年9月7日 制定