慢性的な人手不足が続く介護業界。政府は「労働環境の整備」や「キャリアアップの仕組み」「潜在介護福祉士の有効活用」などさまざまな人材確保策を講じているものの、目立った効果は表れていません。
介護人材が集まらない主要因が「低賃金」「重労働」。「重労働」については、「深夜労働の過酷さ」が代表例として挙げられるでしょう。介護の夜勤は極めて過酷で「ワンオペレーション(ワンオペ)」や「16時間以上の長時間勤務」が常態化しています。

小規模施設ほどその傾向が強く、「グループホーム」「小規模&看護小規模多機能型居宅介護」では、すべて「ワンオペ」となっており、仮眠はおろか休憩を取ることもできません。
詳細は、「第136回 介護の夜勤は極めて過酷!?「ワンオペ」や「16時間以上の長時間勤務」が常態化する介護職の現場の実態に迫る!」で説明していますのでご一読ください。
2014年までの5年間でうつ病などの精神疾患を発病した介護職員は2倍以上に増加
こうした実態を反映してか、介護職員の精神疾患が大きな社会問題となっています。 仕事のストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症したとして、労働災害(以下、労災と表記)を申請した介護職員が2014年までの5年間で2倍以上に増えたことが分かりました。
労災認定された人も3倍に増加し、業種別の順位も「道路貨物運送業」「医療業」とともにトップ3の常連に。
介護事業所の職場環境の悪化が浮き彫りになりました。
厚生労働省の資料によると、介護を含む「社会保険・社会福祉・介護事業」の精神疾患の労災申請は、2010年度には85人でしたが、2014年度には140人にまで増加。
労災認定も2009年度の10人から14年度には32人に増えました。

うつ病などの精神疾患による労災認定は厚生労働省が定めた「労災認定基準」により行われます。 「労災認定基準」に明記された主なものは以下の通りです。
【労働時間に関する基準】
- 月160時間程度の時間外労働
- 発病直前の連続した2か月間に、1月当たり約120時間以上の時間外労働
- 発病直前の連続した3か月間に、1月当たり約100時間以上の時間外労働
【セクハラやいじめ等に関する基準】
- セクハラやいじめが6か月間継続
- 強姦やわいせつ行為
厚生労働省は、個別の認定事例を公表していないため、認定に至った経緯について知ることができませんが、労災認定基準を見ると、介護職員の多くは相当なストレスを抱える環境下で勤務していると理解できます。
腰痛は一貫して増加。転倒すると重症化し、休業期間が長期化する
「精神疾患」だけでなく「腰痛」や「転倒」、「交通事故」による労災も目立ちます。
「社会福祉・介護事業」における労働災害の死傷者数は2,546人(2015年上半期)。
内訳は、「動作の反動・無理な動作(腰痛含む)」860人、「転倒」841人(33%)、「墜落・転落」176人(7%)、「交通事故(道路)」156人(6%)などとなっています。

「動作の反動・無理な動作(腰痛含む)」では、腰痛が一貫して増加しています。
2014年度は1,023人が腰痛で労災認定を受けています。
厚生労働省の資料によると、腰痛になりやすい人は「29歳未満の若い世代」や「経験年数3年未満の者」。
介護では人を持ち上げるため、特有の技術が必要で場数をこなすことで理解が進むものです。
それだけに、経験年数が少ない者の場合、技術を十分に習得しておらず、無理な体勢を取ることで腰を痛めてしまう可能性が高くなっています。
| 1年未満(27%) | |
| 1年以上3年未満(27%) | |
| 3年以上5年未満(14%) | |
| 5年以上(32%) |
「転倒」は、「滑り」「つまずき」「(階段などの)踏み外し」などが主なもの。
年齢別に見ると、「60歳~」37%、「50~59歳」35%となっており、高年齢者ほど転倒のリスクが高いことがわかります。
転倒災害に遭うと、休業見込期間が長期化する傾向にあります。
「3月以上」もの休業期間が必要なケースも12%あり、重症化しやすいのです。

計画期間を1年残しているが「労働災害防止計画」の数値目標は達成困難な状況に
国が定めた「労働災害防止計画」(計画期間:2013~2017年)には、社会福祉・介護事業における腰痛対策について具体的な数値が盛り込まれています。 計画を詳細に見ていくと「社会福祉施設の腰痛を含む死傷者数を10%以上減少」と明記されています。
ところが、社会福祉・介護事業における死傷者数は一貫して増加することに。計画期間を1年残していますが、達成は困難な状況です。
もちろん、これまで国は「パンフレットなどを通じた腰痛予防教育」や「介護機器や福祉用具の導入支援」「移乗介助法の指導」などさまざまな対策を講じてきました。
しかし、介護職員の腰痛は改善する兆しは見えません。
今後は、より実効性のある対策が求められていると言えるでしょう。
腰痛だけでなく精神疾患の防止も急務。介護事業所に求められる対策とは?
これまで、社会福祉・介護事業における労働災害といえば、「転倒」や「腰痛」を意味していました。
実際、前述した「労働災害防止計画」においても、腰痛予防が明記され、重点的な対策が講じられてきました。
しかし、最近5年間で社会福祉・介護事業における労働災害の様相は変わりつつあります。
「精神疾患」による労災認定が急増したことから、メンタルヘルス対策の策定は急務となっています。
「低賃金」「重労働」という労働実態が要因となり、人手不足に陥っている介護業界。
肉体的、精神的に追い込まれる介護職員がこれ以上増えれば、今以上に不人気業種となることは明白です。
政府や都道府県労働局などが主体となり、より実効性のある労働災害防止策を講じることはもちろん必要ですが、介護事業所の努力も不可欠です。
職員研修のカリキュラムの再検討のほか、過酷な労働環境の改善に着手することも求められます。
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2020年9月7日 制定