先月27日、東京都新宿区西新宿の区道で、横断歩道を渡っていた歩行者3人が軽乗用車に次々とはねられ、うち1人の男性会社員(22)が頭などを強く打って意識不明となる交通事故が発生。
男性は、その後意識を取り戻し、幸いにも命には別条はありませんでした。
この軽乗用車を運転していたのは、82歳の無職男性。
認知症を患っていたといいます。
近年、このような高齢ドライバーが交通事故の加害者となる事例が頻繁に報道されるようになりました。
加齢により判断力が減退し、交通事故の加害者にも被害者にもなりやすくなっている高齢者。今回は、そんな高齢者の交通事故の現状や課題と、運転免許の自主返納の取り組みについて見ていきましょう。
75歳以上の高齢者は要注意!事故時、重大な過失を犯しやすい
警察による交通安全キャンペーンなども功を奏しているのか、交通事故死亡者数は年々、減少しています。2005年度には6,937人だったものが、10年後の2015年度には4,117人と約2,800人も減少しました。
しかし一方で、死亡者数全体における65歳以上高齢者の割合は増加。人数こそ減ってはいるものの、割合で見ると2005年度=42.6%だったものが、2015年度=54.6%と10%以上も増加しているのです。
2015年度中の人口10万人当たり死者数を見ると、65歳以上においては全年齢層の平均を超え、80~84歳に至っては、全年齢層の3倍以上となっています。このグラフから判断するに、75歳以上になると、死者数が急増しているとわかります。

高齢者の交通事故は、どのような状況で起きているのでしょうか。
警察庁によると、「歩行中」が約5割、次いで多いのは「自動車乗車中」「自転車乗用中」です。
さらに、高齢歩行者の死亡事故が発生した時間帯を見ると、夜間の割合は昼間の約2倍に達しています。
つまり、辺りが暗くなる夜に、事故に遭う危険性は高まると判断できます。
健康状態などにもよるため一概には言えませんが、交通事故や死亡事故に遭わないために、75歳以上の高齢者が夜間に外出する際は、細心の注意が必要でしょう。
高齢ドライバーの増加は止まらない。事故は「アクセル・ブレーキの踏み間違い」から発生する
日本の高齢化率は26.7%(2015年10月1日現在)。
総人口が減少するなかで、高齢化率は右肩上がりを記録しています。
この傾向は2042年まで続き、その後、高齢化率は減少に転じると推測されています。
高齢化率が高い状態のあいだは、運転免許保有者の高齢化も続くでしょう。
下記の表は、年齢別、男女別運転免許保有者数を2015年度と比較したものです。
「70~74歳」のみ-2.8%と減少したものの、「65~69歳」は7.6%増、「75~79歳」は5.5%増、「80~84歳」は8.6%増、「85歳以上」に至っては9.1%増となっています。
年齢別運転免許保有者数の前年比較
| 2014年末 | 2015年末 | 増減率(%) | |
|---|---|---|---|
| 70~74歳 | 4,845,760 | 2,977,543 | -2.8 |
| 75~79歳 | 2,669,548 | 2,817,522 | 5.5 |
| 80~84歳 | 1,325,947 | 1,439,697 | 8.6 |
| 85歳以上 | 478,968 | 522,749 | 9.1 |
高齢ドライバーはどのような理由で死亡事故を起こすのでしょうか。
警察庁のデータによると、アクセルとブレーキの踏み間違いやハンドル操作の誤りなどの「運転操作不適」が15.8%、「安全不確認」が10.1%、「脇見運転」が9.0%、「一時不停止」が7.5%、相手の自動車や歩行者を発見しても「~しないだろう」と思い、気にせず運転する「漫然運転」が4.7%などとなっています。
一方、現役世代においては、死亡事故理由は高齢者と異なり、「漫然運転」「脇見運転」「安全不確認」の割合が高く、「運転操作不適」は高齢者の約2分の1の割合に過ぎません。
何十年も運転し、自動車操作には慣れていると思われる高齢者ですが、「運転操作不適」による死亡事故が多いことに驚かされます。
原付以上の車両運転中の高齢者による主な法令違反別死亡事故構成率
| 運転操作不適(15.8%) | |
| 漫然運転(4.7%) | |
| 安全不確認(10.1%) | |
| 脇見運転(9.0%) | |
| 一時不停止(7.5%) | |
| その他(42.9%) |
| 運転操作不適(7.5%) | |
| 漫然運転(18.6%) | |
| 安全不確認(9.5%) | |
| 脇見運転(16.2%) | |
| 歩行者妨害(8.1%) | |
| その他(40.1%) |
法改正や自治体による施策など、自主返納への取り組みが続々と登場
高齢ドライバーが関与する事故が増加するなか、警察では運転免許の「自主返納」を呼びかけています。警察庁のデータによると、自主返納者は2012年以降に急増しているようです。
急増した主な理由は、道路交通法の改正です。
2012年3月31日以前に交付された「運転経歴証明書」は、交付後6か月を経過してしまうと、本人確認書類として使うことができませんでした。
しかし、2012年4月1日以後交付された「運転経歴証明書」は、本人確認書類として永年有効となりました。
つまり、本人確認書類として運転免許証を所有していた高齢者が法改正により、自主的に返納したと考えられます。

近年は、自治体が自主返納をサポートするケースも見られます。
大阪府では、交通事故の件数が減少を辿るなか、高齢ドライバーによる交通事故件数は2007年と比較して約1.2倍になっています。
これを重く見た大阪府は「高齢者運転免許自主返納サポート制度」を創設。
運転免許証を自主返納後、運転経歴証明書を発行し、サポート企業にそれを提示すると、一定の特典(例:店頭価格から5%割引、ポイント3倍進呈、粗品進呈など)が受けられるというものです。
サポート企業は、商店街の個人商店を中心で小売やレジャーなどさまざまな業種に渡ります。

岩手県一関市安全交通対策協議会では、昨年、「運転免許証自主返納サポート乗車券交付事業」を実施。
当初の予想(40件)を大幅に上回る230件の交付実績を上げました。
この事業は、運転免許証を自主返納した高齢者に対し、バス、タクシー利用時に使える1万2000円分の乗車券を交付するもの。
昨年の実績を受け、本年度は予算増で対応するそうです。
80~90代の高齢者が申請の中心だったようで、ほとんど車を使わない人がこの機会に返納に応じただけという見方もありますが、乗車券などの現金交付型の施策が返納に一定程度効果があるとみられます。
70歳からの高齢者講習、75歳からの認知検査は自主返納のきっかけになり得る
数年おきに定められている運転免許更新時は、自主返納を検討するタイミングになり得ます。
70歳以上の人が更新する場合は「高齢者講習」が、75歳以上の場合は「講習予備検査(認知検査)」が義務づけられています。
「高齢者講習」は、交通ルールの再確認のほか、動体視力や夜間視力を計測し、実際に車を運転、指導員から助言を受けるものです。
「講習予備検査(認知検査)」は、「高齢者講習」に加え、記憶力および判断力検査を実施し、結果次第では認知症専門医などの受診を促すものです。
そして、認知症と診断された場合には、運転免許が取り消されます。こうした講習および検査は、自主返納のきっかになるだけでなく、認知症高齢者の発見に役立ち、水際で免許交付を阻止する役割も果たしています。
今後、高齢化率の上昇にともなって、ますます高齢ドライバーが増加する見込みです。痛ましい交通事故を防止するために、国、自治体を挙げた自主返納の取り組みが必要と言えるでしょう。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 9件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定