介護派遣の実態とは?
介護派遣とはどういった働き方?
介護派遣とは、人材派遣会社と雇用契約を結び、介護施設や事業所で働く雇用形態です。正社員やパート・アルバイトのように直接施設で雇用されるのではなく、派遣会社を通じてさまざまな介護現場で勤務する働き方です。
全国の介護現場では、多様な働き方が共存しています。介護施設や事業所で働く介護職員のうち、約7割が無期雇用職員(正社員など)、約2〜3割が有期雇用職員(契約社員やパート・アルバイトなど)という構成になっています。派遣労働者はその中でも特殊な位置づけにあり、介護業界全体で見ると比較的少数です。
派遣という働き方が選ばれる背景には、柔軟な勤務体系を希望する人が増えていることがあります。「家庭と仕事を両立したい」「副業として介護の経験を積みたい」「短期間だけ働きたい」といったニーズに応える選択肢として、派遣が注目されているのです。
介護派遣の特徴として、勤務先が固定されないことが挙げられます。派遣会社から紹介される施設や事業所で、契約期間に応じて働くため、さまざまな職場環境を経験できる一方で、職場ごとのルールやケア方針に慣れる必要があります。
また、派遣先の施設ではなく派遣会社との雇用関係になるため、給与や社会保険の手続きは派遣会社が担うため、施設とは別の窓口になる点が特徴です。
このような働き方は、特に訪問介護の分野で多く見られます。訪問介護は短時間勤務が多いため、派遣という働き方とも相性が良いとされます。
介護派遣の給料はどのくらい?
介護派遣の給料水準について見てみると、厚生労働省の労働者派遣事業報告書によれば、介護サービス職業従事者の派遣料金は1日(8時間換算)あたり平均15,884円となっています。これを時給に換算すると約1,985円程度の水準です。
一方、派遣労働者が実際に受け取る賃金は1日あたり平均10,840円で、時給換算すると約1,355円となります。派遣料金と実際の賃金の差額は、派遣会社の手数料やマージンとして計上されています。
雇用形態別に見ると、無期雇用派遣労働者の場合は日給11,139円、有期雇用派遣労働者では日給10,796円と、無期雇用の方がやや高い傾向があります。

介護業界全体で人材の入職・離職は継続的に発生していますが、これは派遣に限らず正社員やパート雇用にも共通する傾向でしょう。派遣の場合、時給ベースでは一般的なパート勤務よりも高めに設定されているケースが多く、短期間で効率的に収入を得たい人には魅力的な選択肢といえます。
ただし、派遣では賞与や退職金が支給されないことが多いため、年収ベースで比較する際は注意が必要です。安定した収入を長期的に確保したい場合は、正社員や契約社員といった直接雇用の検討もおすすめします。
介護派遣の求人は多い?
介護業界全体で人材不足が続いており、有効求人倍率は4.08倍(2024年時点)という依然として高い水準を維持しています。これは求職者1人に対して約4つの求人があることを意味しており、介護職を希望する人にとっては就職・転職のチャンスが広がっている状況だといえるでしょう。

しかし、派遣に特化して見ると状況は少し異なります。介護労働安定センターの調査によれば、派遣職員を受け入れている介護施設の割合は約21.3%にとどまっており、受け入れている施設でも全職員に占める派遣職員の平均割合は2.6%程度です。
まあ、施設の規模や地域によっても派遣の受け入れ状況が大きく異なります。大規模な施設や都市部では派遣職員を積極的に受け入れる傾向がある一方、小規模な施設や地方では直接雇用(正社員・パート)を中心とした採用が主流となっています。
介護派遣のメリット
時給の高さと柔軟なシフト調整
介護派遣の最大の魅力は、時給水準の高さと働く時間の自由度にあります。前述の通り、無期雇用(正社員)と比較すると、時給単位では有期雇用や派遣職員の方が給与がやや高い賃金設定になっています。
派遣のもう一つの大きな特徴として、短時間勤務や単発勤務といった柔軟な働き方が可能なことです。特に訪問介護の分野では、職員全体の約58%が短時間勤務を選択しており、ライフスタイルに合わせた働き方が浸透しています。
有期雇用職員に限ると、短時間勤務の割合は80.4%に達し、家庭との両立を重視する人にとって現実的な選択肢となっているのです。
「週に2〜3日だけ働きたい」「午前中だけの勤務がいい」「夜勤は避けたい」といった細かい条件も、調整しやすくなります。派遣の場合は、複数の派遣先から自分の都合に合った案件を選べる場合もあるため、無理のない範囲で収入を得ることが可能でしょう。
多様な職場経験を積める
派遣として働く大きなメリットの一つは、さまざまな介護施設や事業所を経験できることです。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、デイサービス、訪問介護など、それぞれの現場で求められるスキルや業務内容は大きく異なります。
正社員として一つの施設に長期勤務する場合、ほかの現場での経験を積む機会は限られます。しかし派遣であれば、契約期間ごとに異なる職場を経験し、幅広いケアスタイルや運営方法を学ぶことができるのです。
施設によって、医療との連携や認知症ケアを重視するところもあれば、レクリエーションや利用者との交流に力を入れるところもあります。
こうした多様な経験は、介護職としてのスキルの幅を広げ、将来のキャリア選択にも大きな影響を与えます。
また、施設ごとの働きやすさや職場の雰囲気を実際に体験できるため、「どのような環境が自分に適しているか」を見極める材料にもなります。
派遣での経験を通じて、将来的に長期的に勤務したい施設を見つけたり、特定の分野への専門性を深めたりする方向性を決められるのも大きな価値といえるでしょう。
介護派遣に向いている人
介護派遣に向いているのは、柔軟な働き方を重視し、多様な経験を積みたいと考える人です。特に以下のような方に適した働き方といえます。
- 家庭と仕事の両立を重視する人
- 派遣の自由度が大きな魅力になります。子育て中の方や親の介護を担っている方にとって、勤務時間や勤務日数を調整できる派遣は理想的な選択肢でしょう。
訪問介護員の場合、女性が全体の83%を占め、短時間勤務を選ぶ人が多いことからも、ライフステージに応じた働き方のニーズが高いことがうかがえます。
- 副業として介護職を経験したい人
- ほかの仕事と並行しながら、週末だけや空いた時間だけ働くといった使い方ができるためです。
また、将来的に介護業界への転職を考えているものの、「まずは現場を体験してみたい」という人にとっても、適した方法といえます。
一方で、長期的な安定や昇進、充実した福利厚生を重視する人には、正社員や契約社員としての直接雇用が向いています。当メディアの求人サイト「みんジョブ」では、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど多様な雇用形態の求人を掲載しており、キャリア設計に合わせて比較検討できます。
派遣で経験を積んだ後、気に入った職場で正社員として働くという道もあります。まずは派遣で現場を知り、その後安定した雇用に移行するという段階的なキャリア形成の方法もあります。
就職や転職の際には、さまざまな求人を比較し、自分のライフスタイルや将来の方向性を考慮しながら職場選びを行っていきましょう。
介護派遣で働く際のポイント
契約条件や福利厚生を確認する
介護派遣で働く際に重要なポイントとして以下2つがあげられます。
- 契約条件や福利厚生の詳細を確認する
- 社会保険の適用条件
まず、契約条件や福利厚生の詳細を事前にしっかり確認することが重要です。派遣は基本的に有期契約となるため、契約期間の長さや更新の可能性について明確にしておく必要があります。
また、社会保険の適用条件も重要なチェックポイントです。派遣労働者でも一定の労働時間や期間を満たせば、健康保険や厚生年金に加入できますが、条件は派遣会社によって異なります。
合わせて、介護業界で導入されている処遇改善加算が適用されるかどうかも確認しておきましょう。
処遇改善加算とは、介護職員の賃金改善を目的として国が創設した制度で、介護報酬に一定の加算を行い、その分を職員の処遇向上に充てる仕組みです。
2024年度の介護報酬改定では、従来の3種類の加算(介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算)が一本化され、より多くの事業所で活用しやすくなりました。
この制度により、2024年度には2.5%、2025年度には2.0%のベースアップが確実につながるよう加算率が引き上げられています。派遣職員の場合は、派遣先が加算を取得しているか、かつ派遣元が派遣職員を対象に含めているかの2点を確認しておきましょう。
現在の介護業界は深刻な人材不足に直面しており、介護業界の有効求人倍率は3.97倍という極めて高い水準にあります。これは求職者1人に対して約4つの求人があることを示しており、働く側にとって選択肢が豊富な状況が続いています。
契約条件を十分理解したうえで派遣を選択することが、将来のキャリア形成につながる第一歩といえるでしょう。
資格取得やスキルアップを意識する
専門性向上や将来の安定のために資格取得やキャリアアップを意識している方も多いでしょう。初任者研修や実務者研修を受講したり、介護福祉士やケアマネジャーといった資格を保有していると、派遣先の選択肢が広がり、時給水準の向上も期待できます。
派遣という働き方の特性を活かし、複数の現場を経験しながら実務スキルを高めることも可能です。施設ごとに異なるケア方法や介護技術を学び、幅広い知識を身につけられるのは派遣ならではの強みといえます。
資格取得に向けた学習支援制度を設けている介護事業所も多く、働きながらスキルアップを図れる環境が整いつつあります。
将来的に正社員を目指す場合も、派遣で培った経験と取得した資格がキャリアの土台となり、より良い条件での転職につながる可能性があるでしょう。
応募時に意識したいキャリアの方向性
介護派遣に応募する際は、将来のキャリアの方向性を意識しておくことが大切です。「まず派遣で経験を積み、その後に直接雇用で安定を目指す」という段階的なキャリア形成は、現在の介護業界では十分に現実的な選択肢となっています。
派遣での経験は、自分に適した職場環境やケアスタイルを見極める貴重な機会になります。実際に複数の現場で働くことで、「どのような施設が働きやすいか」「どんな利用者との関わりにやりがいを感じるか」といった自分の適性を把握できるのです。
介護業界全体の採用状況を見ると、事業所の採用活動がうまくいっている理由として「職場の人間関係がよいこと」(62.7%)、「残業が少ない、有給休暇をとりやすい、シフトがきつくないこと」(57.3%)が上位に挙げられています。

派遣として複数の職場を経験することで、こうした働きやすい環境を見つけやすくなるメリットがあります。
当メディアで運営している求人サイト「みんジョブ」では、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど多様な雇用形態の求人を掲載しており、キャリア設計に応じて選択できる環境を提供しています。
介護業界では、職員の処遇改善や労働環境の向上に向けた取り組みが継続的に進められています。派遣という働き方であれば、自分のライフスタイルと両立しながら、自分なりのキャリアパスを描いていくことができるでしょう。
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2020年9月7日 制定