
高齢者の生活保護受給者数が年々、増加傾向。今年8月時点では約76万世帯が生活保護を受けていると厚生労働省から発表がありました。これは、すべての生活保護受給者数の50パーセント近くなっているのですが、この数字を見ると、ある疑問も生じてきます。
それは、「今の高齢者は、払った年金保険料よりも多いリターンを得ている、いわゆる“年金の納め得世代“なのに、なぜ生活保護に頼らざるを得なくなっているのか?」ということです。
「老後破産」という嬉しくないキーワードも世間を騒がせている昨今ですが、高齢者の生活保護をめぐる難題の根本をたどっていくとやはり、社会保障制度の拡充、そして景気の回復という、今の日本が抱える2大問題が浮かび上がってきました。
生活保護受給者における60歳以上の割合は5割以上。高齢者の貧困率もどんどん深刻化…

生活保護受給者数も過去最多記録を更新中。厚生労働省の発表によれば、その最たる理由が「高齢者世帯の増加によるもの」だそうです。つまり、高齢化に伴って生活保護受給者数も伸びているということになります。
実際に、上記のグラフをご覧いただいても分かる通り、生活保護受給者数は右上がり。65歳以上人口に占める生活保護受給者の割合は2.63パーセントで、これは全人口に占める生活保護受給者の割合の1.58パーセントよりも高くなっています。

上のグラフは「相対的貧困率」と呼ばれるもので、簡単に言えば、「平均的な収入を得ている人の、半分以下の収入で生活している人」の割合です。
見ると、65歳以上の高齢者では5~6人に1人、75歳以上の後期高齢者では4人に1人の割合で貧困と定義づけられていることが分かります。

さらには上の円グラフのように、すべての生活保護受給者に占める65歳以上の割合は約4割、60歳以上で見ると5割以上となっていることからも、確かに高齢化によって、高齢の生活保護受給者が増え続けているということも分かります。
こうして政府発表の資料を見ていくと、確かに高齢者の貧困問題が顕在化していることが分かりますし、高齢化が進むのに伴って生活保護の問題が深刻化していることがよく分かりますね。
高齢者の生活保護の増加問題を語るには、高齢者内での富裕層と貧困層に二極化(世代内格差)に注目!?

一方で、以前の55歳以下は年金の「払い損世代」で60歳以上は「払い得世代」⁉なぜ年金の世代間格差があるのかでもご紹介している通り、現代の60歳以上の方々は、納めた年金よりも多い額のリターンを得ている“年金の納め得世代”と言われています。
そう考えると、「たくさんの年金をもらっているはずなのに、それでも生活保護を受けないと生活できないの?」という疑問の声が挙がっても不思議ではありません。
こうした矛盾が表面化してくるのも、年金受給額に関して平均値が取られているからと考えられます。
年金受給額に関しては、年収や就労形態によっても異なるため、平均値で考えること自体がナンセンスであり、生活保護受給問題と並行して考えると本質を見誤ってしまいがちになります。
つまり、このようにも考えることができます。「多額の年金を受給している高齢者の層が平均値を底上げしてしまっているために、少ない年金しかもらっていない高齢者までもが“納め得世代”と捉えられている」。
年金受給額に関して “納め得”と“納め損”という世代間格差に関しての議論も確かに問題ではありますが、実は65歳以上の世代内格差も、高齢の生活保護受給者数を増加させている要因のひとつと言えるのです。
高齢者に働く場を!生活保護を抜けることができれば社会保障費の削減にもつながる!
こうして生活保護をめぐる問題について取り上げると、その数字だけがひとり歩きして、さも衝撃的なものであるかのように受け取られがち(その責任の一端はメディアにもあるのですが)。しかし、問題なのはそこではありません。
生活保護というのは、“最後のセーフティネット”とも言われている通り、社会保障システムが抱える問題点が溜まって表れやすい、つまり欠陥が集中的に表面化しやすいところでもあるのです。
厚生労働省が言うように、高齢化が進み、低い年金、またはまったく年金を受け取れない高齢者を支える受け皿が、現状では生活保護しかないということを如実に表しています。
このままの状態で高齢化が進めば、段階の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年、また団塊ジュニアが高齢者の仲間入りをする頃には、どうなってしまうのでしょうか?高齢者たちが貧困にあえぐだけでなく、それを支える若者にも大きな負担を背負い込ませてしまうのは火を見るより明らかですよね。

では、そうならないためにはどうすれば良いのでしょうか?ひとつ考えられるのは、高齢者の雇用の促進ではないでしょうか。
高齢者自身が稼ぎを得ることができれば、生活保護から抜け出して社会的に自立した生活を送れるようになるでしょう。
なおかつ、社会保障費の削減にもつながるはずです。
もちろん現在も、高齢者の雇用促進に対して国の施策は進んでいます。
代表的なところでは、生活保護を受けなくても良くなった人に対して「就労自立給付金」が支給されることになっており、また生活保護の手前の困窮者に対しては「生活困窮者自立支援法」も施行されています。
また、厚生労働省による雇用関係助成金も。「特定求職者雇用開発助成金」「高齢者雇用安定助成金」「トライアル雇用奨励金」など、高齢者を雇い入れる事業者に対しての助成金を設けることで、広く社会的に高齢者の雇用を奨める施策がとられているのです。
その半面、「在職老齢(ざいしょくろうれい)年金」という制度が、高齢者の雇用促進を妨げている現状があるのをご存知でしょうか?
在職老齢年金とは、60歳を超えて定年を迎えた高齢者が年金を受け取れる年齢になっても、その時点で労働による定期的・安定的な収入があると年金の一部、または全額が支給停止となる制度です。
例えばですが、60歳を過ぎても厚生年金に加入してフルタイムの社員として働き、平均月収が28万円(65歳以上は46万円)を超えると、年金を全額受給することができなくなるのです。
これでは高齢者の労働意欲が低下してしまうのも無理はありませんし、一方で、国としては税収(所得税等)の機会を逃しているということにも。少子化によって労働人口が減少を続ける中、労働力を高齢者に期待しようにも、この制度が大きな壁になっているとは考えられないでしょうか?
高齢者の生活保護問題を解決するためには、それ以前に、年金・医療・介護の社会保障制度の拡充が絶対条件
高齢者の雇用促進に拍車がかかるとどうなるか?期待したいのは高齢者の消費が活発化することによる景気の回復です

こちらも以前の高齢者への負担増は待ったなし…でも、貯蓄額などのデータを見ると「負担増がかわいそう」に矛盾の声も!?でご紹介したデータですが、現状でも2000万円以上の貯蓄がある高齢者世帯が約4割も。
この数字がさらに上がり、なおかつ貯蓄を消費行動に回せば(もしくは、消費したくなるような社会であれば)、景気回復の大きな追い風になるのは間違いないでしょう。
とはいえ、こんなデータがあるのも事実です。

簡単に、高齢者に対して「お金を使って」とお願いしても、病気や介護など“万が一”のための備えが足かせとなっているのが現状。消費よりも貯蓄に回してしまう気持ちも理解できます。
だからこそ、そんな不安を軽減させるための役割を果たすための、社会保障制度のさらなる拡充が求められているとも言えるでしょう。
生活保護という“最後のセーフティネット”について問題解決を図るためには、それ以前、つまり“第2のセーフティネット”とも言うべき社会保障制度の拡充が必須。
高齢者の雇用促進が「世代内格差」の是正につながる一方で、年金や医療、介護、雇用など各種の社会保障制度を拡充することで、生活保護を受給する高齢者の削減につなげていかなければならないのです。
今日にも衆議院が解散!社会保障問題と同時に、新しい政治には景気回復の一手を期待

先日、安部総理が消費税増税の延期とともに衆議院を解散すると明言しました。衆議院は今日、解散となり、12月14日に総選挙が行われることになりました。
今回の総選挙の争点となっているのが、他でもない消費税増税の問題と、社会保障と税の一体化改革、そして何より景気対策です。
ここまで見てきた通り、高齢者の生活保護問題が大きくクローズアップされたことを受けて、その前段階における社会保障制度の改革も避けては通れない道となっています。その抜本的改革の一要因として挙げられるのが景気対策と言えるでしょう。
年金や高齢者の生活保護、介護報酬改定、高齢者の医療費負担問題…と、あらゆる社会保障問題が顕在化しだしたこのタイミングでの総選挙は、もしかすると、政治を見直し、正しい道へと導いてくれる政治家を選ぶ良い機会かもしれませんね。
これまでの日本では、「補助だ」「助成だ」として、国のお金をある意味“使って”きた政治家が選ばれてきました。それがまかり通ってきたのは、経済成長がとどまるところを知らなかったひと昔前の話ではないでしょうか?
少子高齢化が加速度的に進み、人口のピラミッドが逆転した今こそ、有権者の皆さんも投じる一票について考え方を変えてみませんか?「国のお金を使う」という政治ではなく、「国民がお金を使いたくなるような社会を作る」政治に。
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2020年9月7日 制定