なぜ?介護福祉士の受験者数が16万人→8万人と半減!
社会福祉振興・試験センターによると、国家資格である介護福祉士の、今年度の受験者数は7万9113人。昨年は16万919人だったため、1年で半減しています。これは、実務経験を重んじる試験内容に変わったことが影響しています。

実務経験ルートの条件として、最大450時間の実務者研修を受けなければならない、ということがその原因なことは明らかです。
資格試験のハードルが上がってしまったため、受講者が大幅にダウンした結果となりました。
また、実務経験も3年以上必要で、資格試験を受けられるまでにかなりの時間を要するようになってしまいました。

厚生労働省は、介護の専門家を育成するために、資格の取得を後押ししています。
そのため、厚生労働省による資格取得のバックアップ制度も準備されています。
例えば、施設などで勤務しながら資格取得を目指す介護職員に対して、実務者研修に通うための受講費用を、最大20万円を上限として貸し出す制度があります。
それらは、2年間介護職員として勤務した人は、返済が免除されるなどの特例がついています。
そうした職員が勤める側の勤務先にも支援制度が設けられており、職員が実務研修に行っている間、人材不足にならないために、かわりの職員を雇う部分の人件費などを支給しています。
各都道府県の福祉部局や社会福祉協議会などを窓口を通して説明を行っており、こうしたバックアップ体制を取ることによって、資格取得を後押ししていきたい考えです。
厚生労働省は、介護福祉士の資格を上位に位置づけている
介護の現場では、介護士の関係資格を持っていない人、介護職員初任者研修修了者、介護福祉士を持っている人が、それぞれ独立せず混ざった状態で、高齢者に介護を行っています。
そのため、現場では有資格者も無資格者も混在し、あまり資格の有無は関係ないように感じてしまうのは、介護の現場を知っている人であれば、ご存知かと思います。
ですが、この状態を厚生労働省はあまりよく思っておらず、介護の仕事を細分化し、資格に応じた機能分化を行っていきたい考えです。
そのためには、介護をプロフェッショナルの仕事と位置づけ、介護福祉士の資格を一定のステータスとともに上位に位置させ、介護スタッフが自主的に介護福祉士の資格取得を目指すような環境づくりが必要です。
そのため、厚生労働省は介護人材のキャリアパスを描き、最終的には高度な知識を持った専門職やマネジメント職を頂点として、チームケアにおける介護福祉士の資格を上位に持って来ています。

その方がより介護の質も向上し、人材が定着して流動性が低くなると考えているようです。
これは確かに一理あります。
これまでは資格が、形骸化してしまっていたからです。
仮に知識や技術をそれほど有していない無資格の介護者を、女性や高齢者をターゲットに受け入れるとして、その上位に介護福祉士の資格を据えれば目標になりますし、キャリアパスになり、キャリアアップを実感できるからです。
そのために国は、金銭的なバックアップ制度を準備し、介護福祉士の資格を優遇しています。介護福祉士になるには、実務経験を3年以上積んで、実務者研修を受ける実務ルートか、各種養成校を卒業するなどのルートがあります。
国と厚生労働省が、介護人材増加のためにさまざまな支援策を打ち出していますが、それらが起爆剤になるとは考えづらく、今後はそこそこ資格取得のハードルが上がり、さらに受験者の数が少ない状態で推移することだと予想されます。
介護福祉士の資格、取ったら良いことはある?給与は?
では現状、介護福祉士の資格を手間かけて取ったら、良いことはあるのでしょうか。
厚生労働省の調査によると、介護福祉士の平均勤続年数は6.0年、平均実賃金は236,596円となっています。
無資格者は196,432円、介護職員初任者研修合格者は212,120円と、無資格および下位の資格よりは稼げているのですが、わずか1割高いと差を感じられません。
介護職員の保有資格別賃金
| 保有資格 | 平均実賃金 | 平均勤続年数 |
|---|---|---|
| 看護師・准看護師 | 286,138円 | 5.2年 |
| 介護支援専門員 | 274,471円 | 7.6年 |
| 介護福祉士 | 236,596円 | 6.0年 |
| 介護職員初任者研修 | 212,120円 | 4.1年 |
| 無資格 | 196,432円 | 2.9年 |
資格としては、それほど魅力的に思えず、また、介護の現場でも、介護福祉士の資格があってもなくても同じ、などと揶揄されることもあるのはご存知のとおりでしょう。
しばらくは介護福祉士の受験者数は増えない?
介護人材は、2025年には30万人不足するとされています。
2025年といえば、さまざまな問題が表出するとされる時期です。
人口の多い団塊の世代が一斉に後期高齢者になり、後期高齢者の数が2,000万人を突破すると予想されます。
少子高齢化も相まって、労働人口そのものが不足し、介護に流れる人も減っていくでしょう。
そんな中、介護はまだまだ薄給で重労働、長時間労働で肉体も酷使するため、ハードな仕事だとして敬遠する人が多いのです。
せっかく、介護福祉士の資格を取得しても、介護の現場に入りたがらない人も数多くいて、現在も介護現場は人手不足に悩まされています。

そんな中、介護福祉士の受験資格に実務者研修450時間が追加されたことで、この実務者研修をクリアしなければならないため、直近の2年~3年は、受験者の数そのものが横ばいになり、増加はしないものだと考えられます。
介護福祉士養成校の入学者数も減っており、養成施設からの供給も少ない今、人材難はますます進むでしょう。
人手不足はさらに深刻化し、非常に厳しい状況と言わざるを得ません。
介護福祉士の先を見据えた改革で、人材難は解消できるか
介護福祉士は、養成校ルートと実務ルートがあります。
実務ルートで今回、450時間の研修が義務付けられたわけですが、養成校ルートのほうは改革が進んでいません。
卒業後5年間、受験資格と暫定的な国家資格を付与し、卒業後5年以内に資格を取得、もしくは継続して現場の実務に従事すれば、継続して国家資格が与えられるなど、特別措置が講じられています。
養成校ルートと実務ルートで、改革が揃って行われていなかった理由として、若者が介護職を目指してくれないという現実が待ち受けているのが挙げられます。
養成校も定員が過半数割れし、学校数も減少しています。
奨学金の制度を設ける、また、ハローワークの失業給付を延長して職種転換を測る、学校の学費を雇用保険から代わりに支払うなどの対策を講じていますが、介護福祉士の人材不足は増えるばかりです。
試験制度を改革し、質の向上をはかると同時に、国家試験のハードルがあがるとともに広がる人材不足・志願者不足によって、介護の現場が人手不足に陥ることを防ぐための案が、養成校ルートの特別措置です。
国は今後、さらに「認定介護福祉士(仮称)」を設定することも視野にいれています。より上級の資格を導入することで、利用者は質の高いケアを受けることができると考えているものです。
ですが、資格を取ることそのものが目的になってしまっては本末転倒です。
大切なのは、資格を取ることではなく、資格を取り、実務の現場についた後に、安心して働ける環境、そして納得して働ける待遇の改善なども同時に行っていくことです。
介護の現場は今、多方面からの改革が求められていることは間違いないといえるでしょう。
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2020年9月7日 制定