高齢者は入浴が大きな楽しみのひとつ

日常にあまり刺激が薄れてくる高齢者にとって、入浴は大きな楽しみのひとつです。
入浴は疲れをとり、嫌なことを忘れさせてくれる至福のひとときとなります。
しかし、油断は禁物。
冬場の入浴は場合によっては、死と隣あわせであることは、間違いないでしょう。
高齢者の入浴事故がどのぐらい多く、何歳前後の方に多くて、どのようなシチュエーションでいつなんどきに起こるのか、その統計をまとめていきます。
高齢者が入浴によって得られる4つの効果とは
入浴が好きだという高齢者は多いと思います。実際に、入浴には高い効果があるとされます。それは一体どのようなものでしょうか。代表的な効果は以下の4つと言われています。
- 皮膚を清潔に保つことができる
- 汗をかくと雑菌の繁殖を招きますが、それらを防いでくれます。そして、床ずれやかぶれなどを予防してくれます。
- 新陳代謝を促進してくれる
- 体を洗ったり、髪を洗ったりすると、刺激が加わります。そこに湯船で体をあたためると、血行が良くなり、新陳代謝が活発化されます。冷えや血行不良に悩み、運動不足などで関節などがこわばっている場合には、入浴することで手軽な解消になります。
- 運動のひとつになる
- 活動量が落ちた高齢者にとっては、入浴も運動のひとつとなります。血行が良くなると発汗するので、疲れが心地よくなります。副交感神経が刺激され、眠りがとても自然になります。
- リラックス効果を得られる
- 食事と同じぐらい、入浴も高齢者にとっては大切な気分転換のひとつとなります。湯船につかる開放感がリラックスさせてくれ、全身を開放してくれます。大きな楽しみとなるのです。
入浴中の事故によって溺死者が増加!高齢者は特に注意が必要
そんな効果の高い入浴ですが、家庭の浴槽での溺死者数の推移を見てみると、2014年の時点で、4,866人となっています。
これは10年前の1.7倍の数字で、高齢者の数が増えているため、家庭での溺死者数も増えているものと考えられます。
9割以上が65歳以上の高齢者で、特に75歳以上の年齢で非常に増加しています。

日本人がお風呂好きというのを考慮しても、欧米に比べて溺死者数が増えています。
WHO(世界保健機関)の調査でも、65歳以上の溺死者数は、人口10万人中日本では19人、フランス3.5人、アメリカ合衆国1.5人、イタリア1.1人、イギリス0.5人となっており、世界でも日本の溺死者は非常に多いことが一目瞭然です。
死因が溺死以外でも、厚生労働省の調査によると、救急車で運ばれた人のうち、入浴中の事故死の数は年間1万9,000人と非常に多くなっています。
全体の5割が12月から2月にかけて発生しているように、特に冬場には注意が必要ですが、逆に言えば、全体の半分は春夏秋に起こっているということでもあり、冬場以外でも入浴中の事故には気をつける必要があるといえます。
肩まで熱い湯につかるという入浴方式は日本人が慣れ親しんだものですが、この入浴方法が浴槽内の事故につながっているとも考えらており、入浴方法については十分に注意する必要がありそうです。
また、既往症がなくとも注意が必要で、原因がはっきりしない事故なども起きている点も見逃せません。
家庭内での浴槽における溺死者数においては、もっとも多いのが75歳から84歳で2,106人。
これは、まだまだ一人で入浴できる年頃だからこそ、かえって事故が多いのだと思われます。
85歳から94歳の事故も増えていて1,359人。
3番目に多いのが65歳から74歳の894人で、やはり65歳を超えると、入浴には注意しなければなりません。
入浴中、「ヒヤリ」としたタイミングは!?
入浴中にのぼせたり、意識を失うなどしてヒヤリとした経験のある人は、全体の9%となりました。
ヒヤリとした状況では、「浴槽に長くつかっていた」が多く、「体調が悪かった」「食事や飲食の直後に入浴した」「熱い湯につかっていた」などが状況として挙げられます。
ヒヤリとした経験
| ある(9%) | |
| ない(91%) |

また、ヒヤリとしたタイミングでは、「浴槽から立ち上がったとき」「浴槽内」「浴槽から出た後」が続きます。具体的にはこのような場面に遭遇したとき、「危ない!」と感じているのです。
入浴中の事故に関して、知識や予防するための対策は行っている?
入浴中に事故が起きることについては、冬場の寒い時期に事故が増えて、とくに高齢者の事故が多いことについては、約8割の人が知識を持っていました。
ですが、持病がなく、普段健康な人であっても、入浴事故に遭う可能性があることを知っている人は全体の1/3にとどまり、元気な人でも入浴事故は関係なく起こるということの知識はまだまだ普及していないようです。

では、寒い日に入浴中の事故を防ぐため、どのような対策を行っているのでしょうか。「浴槽のふたをあけて、室内をあたたかくする」や「暖房機を使用して浴室や脱衣所をあたためる」人もいました。

ですが、36%もの人が、「何も行っていない」と回答しています。
シャワーで湯船にお湯をためて、かんたんに浴室内をあたためるなどの工夫でもいいので、小さなことからしていくと良いものだと考えられます。
「何も行っていない」という回答が多かったことがデータから判断できますが、少しの工夫でもいいので、日頃から注意をしていくことが重要でしょう。
お湯の温度、そして浴槽につかっている時間
お風呂の温度はどのぐらいでしょうか。42度以上のお湯につかっている人は全体の約4割にのぼります。やや危険性の高い高温状態でのお風呂に入っている人がとても多いことがわかりました。

また、10分以上浴槽につかるひとは、約3割にものぼりました。
厚生科学指定型研究 入浴関連事故研究班では、「41度以下で10分以内にお風呂をあがる」ことを推奨しています。
これは事故を未然に防ぐためにも重要であり、逆に高い温度での長風呂はとてもリスクの高い入浴方法なのです。
ですが、温度や時間に関して、安全に入浴していると考えられる人は、約42%にとどまり、約半数以上の方が非常に危ない状態で、日々の入浴を行っていることがわかりました。
これでは、いつ事故が起こってもおかしくありません。
入浴中の事故はいつでも起こりうる!安全に配慮した入浴を
高齢者の方は、「41度以下のお湯で10分以内にお風呂をあがる」を徹底して、できるだけリスクの低い入浴を行いましょう。
また、家族が熱い風呂が好きで長風呂がちの場合は、事前に声をかけあうなどして、入浴中の事故を防ぎましょう。
お風呂をあがるタイミングで見守りをするのも効果的です。
入浴中の事故は、高齢者の増加とともに、増えています。
対策を講じなければ、これからも高齢化社会の到来とともに、入浴中に亡くなってしまう人の数は増えていくと考えられるでしょう。
これらはなかなか、介護施設や行政にできることは少ないですので、家庭内での入浴は、高齢者ご本人や家族の意識付けが重要となります。日頃から何もしていない、と答える人が多く、このままでは、冬場の死亡事故は増えるいっぽうです。
健康で元気な人にでも、入浴中の事故は突発的に起こるものです。
「41度以下で10分以内」を守って、リスクの少ない入浴に切り替えましょう。
安全に配慮しさえすれば、入浴はさまざまな効果をもたらし、とてもよいリラックスになります。
事故に気をつけて、お風呂を楽しみましょう。
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2020年9月7日 制定