介護食っていったいどんなものなの?
介護食とは、嚥下機能の落ちた高齢者に対しての食事で、高齢者それぞれの食べる能力に応じて、さまざまな種類に分けられます。
実は、噛む力(咀嚼機能)や飲み込む力(嚥下機能)にあわせて、それぞれにふさわしい食事の形態を選ぶことで、誤嚥防止や食事中に“むせる”などを防止する他、自分で食事することができるようになります。
<主な介護食の種類と特徴>
| 特徴 | ○ 向いている人 |
× 向いていない人 |
|
|---|---|---|---|
| きざみ食 | 食べ物を小さく刻んで食べやすくした食事 | ・噛む機能(咀嚼機能)の低下した人 ・義歯が合わない人 ・開口障害がある人 |
・唾液の少ない人 →飲み込むときにまとめられず、むせやすくなる ・入れ歯を使っている人 →食品の入れ歯と歯茎の間に入りやすくなる |
| 軟菜食 (ソフト食) |
よく煮込んだり茹でることで柔らかくした食事 舌でつぶせる硬さである食事 |
・噛む機能(咀嚼機能)の低下した人 ・食塊の形成が難しい人 ・飲み込む機能(嚥下機能)の低下した人 ・胃腸が弱い人 ・箸がうまく使えない人 |
ー |
| ミキサー食 | ミキサーにかけて液体状にした食事 誤嚥を防ぐためにトロミ剤でトロミをつけることもある |
・飲み込む機能(嚥下機能)の低下した人 | ・食塊の形成が難しい人 →誤嚥しやすくなる |
| 嚥下食 | 柔らかく調理したものをミキサー等でペースト状もしくはゼリー状にした食事 | ・飲み込む機能(嚥下機能)の低下した人 | ー |
| 流動食 | 液状のおかずや重湯 (粥の上澄みの液) |
・手術後や高熱で胃が弱くなった人 | ・低栄養の人 →エネルギー・栄養素が少ないため注意が必要 |
食事を自分で摂ることができるのはとても大切です。
そのため医療施設のみならず介護施設でも、いろいろな介護職を準備し対応しています。
体調や食べる能力に合わせて、刻み食、軟菜食(ソフト食)、ミキサー食、嚥下食、流動食などさまざまな形状があります。
介護食を提供する側はそれぞれの特性を理解して、利用される高齢者の体や状況をかんがみてそれぞれを選ぶことが重要です。
介護食づくりって、大変!?
そんな介護食ですが、自宅で作ることに関して家族はどう考えているか、また在宅の介護者の間では介護食に関しての専門知識をどこで身につければ良いのでしょうか。
日清オイリオのリサーチによると、「介護食づくりを大変だと思っているか?」というアンケートでは、「非常に大変だと思っている」が29%、「ある程度大変だと思っている」が40%で、合計69%もの人が介護食づくりに関して、困難さを抱いていました。
| 非常に大変だと 思っている(29%) |
|
| ある程度大変 だと思っている(40%) |
|
| あまり大変だとは 思っていない(24%) |
|
| 全く大変だと 思っていない(7%) |
介護食は、口から食べてもらうことが肝心です。
口から食べてもらうほうが栄養吸収の面からも、介護の重症化を防ぐためにもとても大切なことなのです。
自宅で介護をする人の側も、手作りの介護食を口から食べてもらいたい、自分の手で食べさせてあげたいという気持ちは、切実な願いとして感じていることでしょう。

しかし、介護食づくりは大変だと多くの人が感じています。
病院で作るようなやわらか食、ペースト食を作ることは特に大変です。
老々介護や家族がたくさんいる場合、家族の分と分けて介護食を作る手間が必要で子供さんがいるご家庭では、赤ちゃんの分、食べ盛りのお子さんの分、大人の家族の分、介護食と、いろいろ分けて作らなくてはならず、とても大変です。
食事をいろいろなパターンで作らなくてはならず、食事を作る側に大きな負担がかかってしまいます。
嚥下機能が低下したお年寄りのためにとろみをつけるとき、片栗粉を使う場合は温かい料理にしか使えません。ですが市販のとろみ調整食品を使えば、冷たい食事でもとろみをつけて食べやすくできます。
また、濃度なども調整することが可能です。市販の介護食品を上手に取り入れることで、噛む力や飲み込む力がおとろえた高齢者にも、上手にそれぞれに合わせた介護食を提供することができます。
ドラッグストアやスーパーなどで手に入れることができます。
とくに調剤薬局は、介護者を抱えている人にとっては頻繁に利用する場所でもありますので、将来的に調剤薬局などでバラエティに富んだ介護食を手に入れることができるようになれば、介護食にかかる家族の負担は大きく軽減されます。
調査によると、介護食に関して専門家のサポートを受けたことがあるのは35%
日清オイリオの調査を引き続き見ていきましょう。
「どのような食事を提供したらよいのか専門家に指導を受けたことがあるか」という調査においては、35%の人しか、「はい」と応えていません。
65%の人が、専門家の指導を受けないままに、家族に介護食を提供し、食べさせていました。
訪問医療制度などが進んできていろいろなジャンルを横断した専門家が、在宅での介護をサポートしどんな食事の形態が理想的なのか、また栄養状態などは適切なのかを教えてくれます。
医師、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、言語聴覚士などを、専門家として頼ることができます。
口の中の状態を良くして、噛むことや飲み込むことの機能を維持し回復させていくことも、栄養状態を良くするには重要です。
介護食、手作りは何が大変?
では介護食を作っていくことに関して、何がとても負担に感じられるのでしょうか。リサーチ結果を見ましょう。
「介護食作りの何が大変か(複数回答)」によりますと、1位が「いつも決まった食材、メニューになってしまう」が46%、2位が「家族の食事とは別につくらないといけないので、面倒であり食材が無駄になる」が39%、同率2位が「エネルギーや栄養素が足りているのか心配」でした。
さらに「どんな食事がよいのかわからない(どのぐらい手を加えればよいのかわからない)」が36%と続きます。「手間や時間がかかる」なども35%を超えており、複数回答で答えてもらった結果、第5位までが30%を超えていました。
国立長寿医療研究センターが在宅療養中の高齢者の状態をリサーチしたところ、栄養状態が悪くて「低栄養」と判断された人は、全体の36.0%となっています。
「低栄養のおそれがある」と判断された人も、全体の33.8%となっています。
合計すると、約7割の方が、栄養状態に問題を抱えた状態で、在宅生活を送っていることが判明しました。
| 低栄養(36.0%) | |
| 低栄養の恐れあり(33.8%) | |
| 栄養状態良好(26.3%) | |
| 欠損(3.9%) |
これらは、高齢者の栄養を吸収する力が落ちていることに加えて、食事量が落ちてしまっていること、家族が高齢者にしっかりとした栄養を取ってもらっていない、介護食に関する知識がない、手間がかけられていない、などの問題点があることを物語っています。
ニーズに従って、配食事業が伸びている。しかし課題も。
そのような状況をニーズにして、配食事業が伸びています。6年間で1.8倍に成長した配食事業には、厚生労働省なども注目しています。配食事業の市場規模が、拡大傾向にあるのです。

しかし、配食事業には、まだまだ課題もあります。おもな配食事業の課題点は、以下の4つとなります。
1.管理栄養士や栄養士の存在が欠かせないが、いないまま運営している事業者もある。その場合、栄養価計算をしていないまま、介護食を提供しているなどのケースがある。このような事業者を、安いからという理由で使っていると、栄養面での問題が出るおそれがある。
2.摂食嚥下機能の低下がみられる在宅の利用者は多いものの、業者の用意する食事形態が、不十分であるケースが見られる。
3.配食の利用開始時に、事業者と利用者の間で交わされるアセスメント(価値の評価)が不十分であるケースがある。
4.食事療法、食事形態の適合に疑問符がつく食事が提供されている、全部食べられないなどの例も多く、その割に、配食への要望が特にないと答えている人が半数ほど見られる。
また、要望を持っていても、事業者に十分伝わっていない。
利用者が食事の栄養についての意義などを十分に認識できておらず、配食が栄養教育の教材となっていない、事業者が利用者の声を十分吸い上げられていないなどの可能性も。
などなど、配食にかかる期待は大きいものの、同時に多くの課題も含んでいるものと考えられます。
この点などを、克服していくことでビジネスとしての成長をスケールアップし、介護者、要介護者ともに満足のできる将来へとつなげていくことができるようになるのではないでしょうか。配食は今後も非常に重要なキーワードとなってくるでしょう。
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2020年9月7日 制定