福祉関連の受験料が一斉に値上げ!
介護福祉士という国家資格の受験料値上げが決まりました。値上げ幅は現行1万3,140円に対して1万5,300円となり、実に2,160円の上昇となります。

合わせて社会福祉士、精神保健福祉士なども値上がりするのですが、社会福祉士は7,540円から1万5,440円、精神保健福祉士は1万6,400円から1万7,610円となります。社会福祉士に至っては、ほぼ倍になっているのです。
厚生労働省は値上げの理由として、以下のようなものを挙げています。
・同じ年度で複数の資格に挑戦できるよう、試験日を違う日に設定するための経費
・受験料の引き下げに使っていた「社会福祉振興・試験センター」の積立金枯渇
・受験者数や受験料などの売上と経費にバランスを取った
介護福祉士は昨年の受験者数が前年に比べて半減したことが大きな話題となりました。実務経験を使っての受験に450時間程度の実務者研修が加えられ、難易度が上がったことが原因とされています。
受験者が減少しているのに料金の値上げ!?
受験料が2,160円値上げになったことで、ただでさえ自己負担割合が大きい介護スタッフ関連の研修にまたひとつ負担が増えてしまいました。国は介護士を増やし、処遇改善加算などの手当でなんとか介護士の質と量を確保しようと躍起になっています。
もともと介護士の給料は非常に低く、生活はギリギリの水準となっています。 そんな中にあっての介護福祉士資格はキャリアアップにおける第一ステップになるはずが、受験者数の大幅な減少を示しているというのが現状です。
それでも実行される受験料値上げ、そして何より受験要件の厳格化は正しい方向性なのでしょうか。この先、介護福祉士の未来がどうなっていくのか悩ましいところです。
介護福祉士の受験者数は急激に減少
一方ここ10年ほど10万人を超えていた介護福祉士の受験者数ですが、昨年その数が一気にダウンしました。これは7万6,250人もの減少であり、政府が介護福祉士の普及に力をいれた10年前の水準に戻っています。

実務者研修が受験者資格に追加され、経験の浅い人が受けられなくなってしまったため、受験人数が大幅に減ってしまったのです。
介護の現場で働いている人は受けるための資格があり、受験可能な人は多数いるでしょうが、現場での業務をこなしながらでは余裕がないとも考えられます。
10年前の社会はすでに少子高齢化しつつあったのですが、今ほど介護士の環境が悪いということがクローズアップされていなかった時期です。
合格率は微増しているのですが、受験者の総数が減っているという事実は、資格の魅力が下がっているということかもしれません。
また、受験は完全自費ですので、そうした点もネックになっていることでしょう。
「要件が厳しくなるので駆け込み需要もあったのではないか」と国はこの現象について弁解していますが、過去10年の受験者数増加を考えると、駆け込み需要ということは考えにくいかもしれません。
実務者研修それ自体は介護士スキルの底上げにもなり、悪いものではありません。
しかし、仕事を休んで研修を受けることや、受験の対策本を何冊も購入することがずべて自費というのは現状厳しいものでしょう。
それに加えて高い受験料では受ける気をなくし、現場で働いていた方が良いのではないかと考える介護士が増えるのも仕方のないことです。
受験者の減少を歓迎する介護福祉士会
ところで介護福祉士の集まりである介護福祉会は、受験者数が減ったことを歓迎する声明を出しています。「資格への信頼性を獲得するための土台となる」と実務研修の厳格化について養護しているのですが、介護福祉士会はあくまで、既に合格した人たちの集まりです。
受験要件が厳格化すれば、彼らの利益は守られることになり、これはある種の既得権益化を意味します。ただでさえ労働環境があまり良くない介護士の現場ですら、有資格者と無資格者の格差が広がる懸念があるのです。
今のような現状の認識では、介護福祉士の減少を防ぐことは難しいでしょう。
国や政府の側も危機感を持って議論を行っていく必要があります。
どうすれば介護士の待遇を改善することができ、高齢者に幸福な老後を過ごしてもらえるかについて介護の現場に寄り添って真剣に考えていかなくてはなりません。
まずは国が、行った政策の結果を十分に考慮し、適正な受験者となるように要件を整えていくことなど方策の見直しを絶えず行っていくことが待たれます。
介護職員の給与はやっぱり低い!
介護士は心身ともに大変な仕事です。ときには人の命が関わっていることもあり、高い倫理観も要求されます。大変な業務内容の割には給与が低く、社会問題となっている一方で、メディアではあまり大きくクローズアップされていません。

介護職員の給与は2016年9月の時点で17万9,680円。
2015年9月が17万6,890円だったことを考えると、2,790円の上昇です。
上昇しているという事実自体は、処遇改善加算などによる若干の前進であると考えられますが、他の医療関係職と比較すると圧倒的に低く、職場環境の割に恵まれない給与で働いている人がいるということになります。
介護福祉士という資格は、その後キャリアを積んでケアマネージャー等になっていくための重要な資格である一方、そのケアマネージャーの受験者は2016年度において前年比で1万人ほど減っているのです。
合格率は13.1%とあまり高くないように難関の資格であり、受験者数と合わせて合格者数も減少しています。
ケアマネージャーは独立することもできるのですが、舵取りは難しく、多数が施設に所属することで毎日のケアプラン作成に奔走することになります。こちらも大変な仕事で、給料はあまり高くはないというのが現状です。
給料アップを見据え、希望が持てるキャリアアップを
いま、介護士の現場にはモチベーション向上や処遇の改善などの労働環境改善が求められています。
そのためには「やりがい」「温かみのあるケア」などの数値化できない指標ではなく、現実的に給与として支給するトータルの額、そして介護士の手元に残る手取り給与のアップなどの問題を解決することが必要となるでしょう。
給与をアップさせるには、国が補助を出すことや介護施設が売上を向上させるなどのアプローチが考えられます。
国はすでに処遇改善加算を出していますので、施設側が売上向上を目指すということが建設的でしょうか。
そのためには、まず介護の質を向上させること。
その結果として正当な対価を受け取ることで市場が最適化されるという形が理想的です。
できるところはテクノロジーで効率化し、どうしても人の手による介護が必要なところは優秀な職員に任せる。その上で優秀な介護職員にはキャリアパスを用意することも考えられます。利用者もそれ相応の費用を負担することで、経済全体を回していくことが重要です。
ここまでみてきたように、介護福祉士の受験料アップにはさまざまな諸問題が付帯していることがわかります。介護福祉士資格所持者の減少や既得権益化、質の向上など、考えていくべきことがたくさんありそうです。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 93件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定