高齢者とそれを支える現役世代の比率
現在、日本は圧倒的なスピードで超高齢社会を形成していることはご存知だと思いますが、それを実際のデータに基づいて見ていきましょう。内閣府の「高齢化白書」という文書がありますが、こういった調査の存在自体が、ある意味では事態の重大さを表してもいます。
その「白書」によると、高齢化率が27.3%になっており、総人口1億2,693万人に対して、65歳以上の方は3,459万人。
総人口において4人に1人以上が高齢者という数字です。
また、一部では高齢者の定義を75歳以上にしようという動きがあります。
企業で働くことのできる年齢が一般的に65歳程度ということを考えて、生産年齢は15歳~64歳、65歳以上は高齢者、とくに75歳以上を後期高齢者ということができるでしょう。
では、その生産年齢と高齢者の人口比はどのようになっているのでしょうか。

1950年頃は若者が多い一方で高齢者が少なく、12.1人で1人の高齢者を支えていました。これは、まだまだ医療が発達していない時代で、お年寄りは病気になったらあまり長生きせずに亡くなっていた、と言う側面もあるかもしれません。
しかし、それが2000年になると、3.9人に1人と、大幅に減っていることがわかります。この50年で急激に高齢化が進み、グラフのカーブが非常に傾斜していることがわかると思います。
そして、2016年では、2.2人で1人の高齢者を負担しています。
未来を予測してみると、2025年の団塊の世代が後期高齢者に入る時期には、1.9人で1人を支えることになり、さらに時代を進めた2065年には、1.3人で1人を支える計算になります。
未来を見通すことは難しいですが、出生率という、唯一信頼性が高いデータを元にすると、人口の動きだけは明確に見て取れるでしょう。
団塊ジュニアと呼ばれる世代
ところで、日本の人口ピラミッドはひょうたん型をしています。第一次ベビーブームで人口が増えていますが、その方々が団塊の世代と呼ばれる、これから後期高齢者になっていくであろう人々です。
また、大きく人口が膨らんでいる団塊の世代の子どもたちが「団塊ジュニア」と呼ばれ、現在40歳前後で働き盛りの世代です。家庭を持ち、納税をし、大いに社会貢献するのがこの世代なのですが、同時に不遇の世代でもあります。
大学卒業時に不景気の影響が直撃した就職氷河期にあたり、採用人数が大幅に絞られ、それまで特に困難のなかった新卒就職というものに苦労、正規雇用を諦めて不安定な非正規雇用に甘んじている人も少なくありません。
収入が不十分なため結婚して子供を作ることも難しく、すでに若者就職支援の対象外ともなっている不遇の世代なのです。
そして、あと25年も経てば、こうした経済力のない団塊ジュニアが老後に突入し、一気に生活保護などになだれこむことが懸念されており、ますます今の若年層への負担が増大すると考えられます。
65歳以上人口の推移から見て取れる、強烈な高齢化
では、別の図を元にして、高齢化率を詳しく見ていきましょう。調査開始時の1950年頃には、4.9%だった高齢化率は、右肩上がりに65歳以上人口が増え続け、2000年の時点で14.6%になっています。

2016年の時点で高齢化率が27.3%になったのは、上述したとおりです。これが、2025年には30.0%、2065年には38.4%の人が65歳以上の高齢者となるのです。
世界を見てみると、他にも高齢化している国はあります。たとえばドイツは20.8%、イタリアは20.3%の高齢化率となっています。他にもスウェーデン、スペイン、フランス、イギリスなどが高齢化に悩んでいる様子を調査からみてとれます。
アメリカはやや高齢化率が低めです。
これは移民を積極的に受け入れており、その移民がたくさん子供を作って土地に定着し、若い人の人口が増え続けている、というお国柄の事情もありそうです。
総じて、ヨーロッパにおいては特に先進国での高齢化が激しい模様だといえるでしょう。
そして、そんなヨーロッパ諸国よりも高齢化率が高く、おまけに少子化も進んでいるのが、我が国なのです。
仮に、経済に活気があり、現役世代が経済的に潤沢で資産を多く持っていれば、超高齢という問題はまた別の意味を持ち、それほど深刻な状況になかったのかもしれません。
また、現役世代に付言すると、まだ生産年齢人口に満たない14歳未満を扶養しているという側面があります。現実的には、大学を卒業する22歳頃までは子供を扶養していかなければならないでしょう。
それに加えて、昨今ニュースになりがちな労働環境の悪さもあります。
今や会社を飛び出してフリーランスになる人も増えましたが、まだまだ大学を卒業して新卒で入社し、そこで勤め上げるというルートをたどりたい人も多いでしょう。
そこにあるのは、企業側の新卒至上主義や終身雇用、年功序列制度のようなものです。
それにともなう全国転勤やサービス残業、パワハラ、セクハラに付随した精神疾患の増加など課題を多く抱えています。
一旦、会社を辞めてブランクができてしまうと、再就職が非常に困難になる労働環境も相まって、日本の生産性は著しく低いというのは国際的によく知られた事実です。
ドロップアウトする人も増えている中、高齢者を支えることができる生産年齢人口は、実質的にさらに少なくなるというのが現状なのではないでしょうか。
非常に危機的な状況です。
出生数減少が、超高齢社会にさらなる追い打ちをかける
こうした現状に加えて、新しく生まれてくる子どもたちについてはどうでしょうか。
出生数は2016年の時点で97万6,979人と、ついに100万人を割り込みました。
1949年頃、269万人もの赤ちゃんが生まれていたことを考えると、大幅な減少です。
最新のデータでは、微増を繰り返しながらも徐々に減少している傾向にあることが明らかになったのです。

2015年だけは、一時的に増加しているのですが、これは団塊ジュニアが駆け込み出産したものだと見ることができるでしょう。
出生率は下がり続け、2016年には合計特殊出生が1.44人となっています。
一生のうちで女性一人あたり1.5人ほどの赤ちゃんしか生まれないのです。
また、バリバリ働くサラリーマンと家庭で子育てする専業主婦という昭和型家族像が崩れて給料が伸び悩む中、共働きが増えています。子供に良い環境を与えるために女性自身が高学歴化する背景があり、女性の社会進出とともに出産年齢も上昇しています。
第一子出産時年齢は、1975年には25.7歳だったのが、2016年には30.7歳になっています。
ある程度のキャリアを積んでお金を貯めたり、職歴を積んでから出産したりするという女性も増えており、それが第二子の出産をためらわせる原因のひとつにもなっています。
そうしたさまざまな社会の問題が複合的にからみあって、日本の出生数は減り続けています。ここまで見てきた高齢者とそれを支える現役世代の比率が、出生数の低下でさらに芳しくない方向に向いてしまう可能性が高いでしょう。
今後も医療の発達等で高齢者が長生きし、なおかつ増え続けることも確定している一方で、生まれてくる子供の数が減り続けている、それが今の日本の少子高齢化の現状です。
これから来る未来に高齢者が増えることは止められませんが、少子化には歯止めをかけられる可能性があります。この現実をしっかりと見つめる必要があります。
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2020年9月7日 制定