介護の市場にはさまざまなサービスが存在していますが、その中でも看多機(看護小規模多機能型居宅介護)の数が伸び悩んでいるという状況です。
看多機は2015年に複合型サービスから改称された、介護と医療が組み合わせられたタイプの事業。
そのため、サービスの構造が複雑で、利用者にとってわかりにくいことが課題となっていました。
看多機と小多機を比較!
小多機の事業所数
看多機を詳しくみていく前に、名前が類似する小多機(小規模多機能型居宅介護)を確認しておきましょう。
看多機の事業所数は約350程度しかなく、非常に低い数での推移となっているのに対し、現在の小多機は約5,155ヵ所あり、利用者数は約8万5,200人となっています。

小多機は施設に通うことを中心としおり、宿泊および自宅訪問などを適宜、組み合わせて機能訓練などを行っていく施設です。
デイサービスやショートステイなどは利用時間が決まっていて事業者の都合に合わせなければならない一方、必要なときにオーダーメイドで利用できるのが小多機の特徴。
急な泊まりや緊急時などにも対応してくれる柔軟なサービスが魅力です。
看多機も同様に、住み慣れた場所で生活を続けられるよう、通いや泊り、そして訪問看護のサービスを組み合わせたものです。特に訪問看護は24時間対応で、日々の体調の変化や病状の変化などをしっかり管理してくれます。
看多機と小多機の相違点とは?
看多機は、たとえば持病がひどくなって入院し、その後に家族と過ごしたいと思ったときにとても役立つサービス。
看護師が来てくれるので通所・訪問問わずに対応してもらえることに加え、医療処置を受けることも可能。
医療依存度がそれほど高くなくても利用できる一方で、訪問看護のみならず訪問介護を受けることもできます。
看多機は小多機と比べると、看護サービスがついているという最大の特徴があり、サ高住や特養の入居待ちの際にも利用されます。介護と看護は病気がちな高齢者の様子を観察していく上で欠かせないものであることから、非常に有意義なサービスと言えるでしょう。
また、病院から退院すると胃ろうやカテーテルの交換などを日常的に行うため、どうしても家族では対処できないというケースで看多機を使っていくと、介護の手助けにもなります。
しかし、両者を組み合わせて利用するという性格のためにサービスの内容がわかりづらく、利用者にはその利便性が伝わっていないのが現状です。
看多機の登場背景
はじめは”複合型サービス”だった
看多機は2012年当初、「複合型サービス」として訪問看護と小多機を組み合わせた形で誕生しました。ところが、サービス名から内容がイメージしづらいという指摘を受け、2015年に看護小規模多機能型居宅介護に名称が変更されたという経緯があります。
また、看多機は病気を患っている高齢者の利用を想定しているために実際の利用者年齢が高く、平均年齢は80.5歳で80代以上の利用者が実に61.5%。
利用者の要介護度の平均も3.4と高く、要介護度3以上の利用者は74.5%となっています。
末期がん等の利用者も全体の10%近くを占め、医療依存度が高くなっています。
従来は、この医療依存度の高い高齢者を受け入れてくれるショートステイなどがなく、また、高齢の家族を「家で看取る」ということがあまりできない実情がありました。
在宅療養は、家族だけでは困難で、相談窓口などもなかったのです。
そこで、看多機の設置によって、病状がまだまだ安定していない人を受け入れ、介護する家族の都合に配慮し、在宅療養をサポートしていくことが目指されたという背景がありました。
複合型サービスとしての問題点
ところが複合型サービスとして推進していくには課題がありました。以下がその一例です。
- サービスの認知度が低い
- 職員確保が難しい
- 運営側の問題、適切な経営が困難
地域包括支援システムが推進される中、高齢者は地域で暮らしていくことを求められています。
高齢で病気が重くなることによって医療依存度が高くなれば、在宅療養の支援が必要です。
どの地域でもこれは同様で、自治体に対しても、事業者に対しても適切な情報提供と施設運営のサポートが求められています。
しかし、複合型サービスもほかの介護関連施設と同様、人手不足の状況にあります。
特に看護職にある人の確保が困難で、認知度が低いために人が集まらないという課題があったのです。
また、あまり知られていない複雑なサービスでもあるために施設運営が難しく、どのように人員を配置して効率よく運営していくかのノウハウが未成熟という側面もあります。
また、まだまだビジネスモデルが安定的かつ効率的に確立されておらず、あまり経営に積極的な事業者が多くないという点も課題として挙げられます。
これらが問題視されたことから看多機という名称に変更、より周知を図ることで数を増やしていくことが目指されています。
看多機の事業としての参入困難さ
小多機と訪問看護ステーション、それぞれからの参入障壁
訪問看護ステーションや小多機などの事業者が看多機の運営に乗り出す際にはさまざまな参入障壁があり、事業の新規開業が非常に困難になります。
たとえば、土地や建物の問題を考えてみましょう。
事業者のうち、「土地・建物を所有している」と答えた看多機は39.8%。
割合としてはもっとも多い一方、残りの約6割が自社で土地や建物を所有していない状況の中、看多機の運営を行っていることになります。

介護施設を建設するにあたって土地や建物を購入するということは、多額の資金を必要とすること。厚生労働省の調査によると、開設半年の間は76.0%の事業者が赤字、開設4年目になってようやく55.6%が黒字転換という財務上の経営における困難さもあります。
小多機からの参入の難しさは、先程もみた通り看護職員確保の難しさにあります。
看護師は看多機の中心的な存在です。
通いや泊まりだけでなく、リハビリやケアプランの作成にいたるまでサービスが一体化されていますので、看護師にかかる負担も大きくなります。
そのために離職してしまう看護師が多く、結果として人材確保に困るという背景がみてとれます。
さまざまな事情で看多機は伸び悩んでいる
看多機の事業所数は2017年4月時点で全国に350程度しかありません。通いから宿泊に加えて訪問介護まで受けられる優れたサービスである反面、運営が複雑で介護と医療が混同しているため、利用者に特徴が上手に伝わっていないのが現状です。
一方の、通いと宿泊と訪問介護をまとめた小多機は5,155事業所あり、右肩上がりに増えています。小多機に訪問看護をサービスとして加えるだけで、看多機はこれほどまで運営が困難となるのです。
しかし、地域包括ケアシステムが広がり、地域においても在宅で暮らすことが求められている昨今においては、持病があり、医療的ケアが必要な高齢者は看多機を利用することがとても有意義なことになるでしょう。
訪問介護と訪問看護をワンストップで受けられる便利なサービスとして、看多機は位置づけられています。
せっかく看多機のような便利なサービスがあるのですから、名称を変えるだけでなく、さらに利用を推進して利用者の利便性をより高めていく必要があるでしょう。
さまざまな介護サービスがあるなか、看多機もしっかり考慮していけると選択肢も広がっていくでしょう。
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2020年9月7日 制定