高齢者の前立腺肥大症が増加傾向に
年をとると排尿に悩むという事態は容易に想像がつくかもしれませんが、それには「前立腺」が関係しています。特に前立腺肥大症は高齢者に起こりやすい病気だということをご存知でしょうか。
前立腺は男性だけにある臓器で精子を司るとても大切なものです。その前立腺が肥大してしまい、尿が漏れたり反対に出にくくなるなどの症状が高齢者を中心として起こります。
夜間頻尿は前立腺肥大症の可能性!
そもそも前立腺は、膀胱の出口にある臓器で男性にのみ存在します。
これは尿道を覆っており、精子を作って精液を押し出す大切な器官のため、これが広がってしまうとそれらの機能に支障が出てしまいます。
尿道を取り囲んでいるために肥大によって尿の通り道が狭くなり、夜間頻尿や失禁などが起こってしまうのです。

科学技術振興機構に掲載されている資料によると、夜間頻尿は高齢者に多くなっています。男女とも夜間頻尿は老化に比例して増加し、夜中に4回以上トイレに行く男性は21.2%、女性は11.4%です。
夜間頻尿が多くなると、前立腺が肥大している可能性が高くなります。高齢になると大人用おむつなどが必要になりますが、これは前立腺肥大症などをきっかけとして排尿を自分の力で管理できなくなるからです。
また、高齢になると動作もゆっくりとなるためトイレに間に合わないといった事情もあり、排尿のトラブルは多くなります。
前立腺肥大症による悪影響とは
このように、前立腺肥大症になると尿が出づらくなり、その結果夜間のトイレ回数が多くなります。
トイレへの行き帰り回数が増えることで、転倒や骨折などのリスクを増大させる結果となってしまうのです。
高齢者の場合、これらが体の自由を奪い、寝たきりや合併症による死亡などにつながる恐れがあるので注意が必要です。
一方で治療するかどうかは医師と患者の相談で決まります。日常生活が正常におくれないほどの影響があるならば、服薬を含めた治療を考えていく必要があるでしょう。その際は排尿をうながすための薬や男性ホルモンを調整する薬が処方される場合が多くなります。
しかし、服薬は勃起障害などの副作用が出る可能性があるため、ケアは慎重にしていかなくてはなりません。前立腺は性の問題と関わっているため、医師もデリケートに扱う傾向があり、どのように治療していくかはセンシティブな問題です。
ところで、前立腺といえば「前立腺がん」というワードも聞いたことがあるでしょう。前立腺肥大症が悪化して前立腺がんになると誤解されることもありますが、それは正しくありません。
正確には前立腺がんとなった結果として前立腺肥大症になるのです。これらには同時に発症するケースもあり、高齢者は意識していかなければならない病気です。
前立腺肥大症にかかる原因は?
この前立腺肥大症に大きな影響を与えているのは、男性ホルモンだという説が一般的です。思春期から青年期にかけて、子孫を残すため精子を作るよう体内の男性ホルモン量が増加し、前立腺を成長させます。
一方で、年を重ねるとともに男性ホルモンの分泌量は変化し、それが前立腺肥大症へとつながっていくという考え方です。
そもそも男性ホルモンは、前立腺を成長させるために欠かせないもので、十分な成長が行われた後でも分泌され、それが前立腺を大きくすることへの刺激となります。年齢を重ねると同時に男性は前立腺が大きくなる傾向があるのはこのためです。
しかし、厳密には未だに前立腺肥大症の原因ははっきりとわかっていません。ただ、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが関係していると考えられているのです。
それと同時に、肥満や生活習慣なども前立腺肥大症と関連するので注意です。これらはホルモンバランスを乱して動脈硬化などを引き起こし、結果として前立腺肥大症が起こりがちになります。
肥満や生活習慣病が大きな要因となる

調査でも、メタボの原因となる因子が多い人ほど夜間頻尿が多いという報告もあり、肥満はどのような形でも体によくありません。
中性脂肪の増加、肥満などがメタボを引き起こしますが、これらの要因が少ない人に比べて、多い人は2倍以上の確率で前立腺肥大症になることも知られています。
そして、ホルモンを抑制する薬や漢方薬を始めとする各種治療がありますが、副作用や薬自体が患者によって合わないといったケースがあり、慎重に治療を進めなければなりません。
薬で改善が見られない場合は手術という方法もあり、レーザー治療や開腹手術を使いながら大きくなりすぎた前立腺を切除する治療が選択されます。
しかし、1~2週間程度の入院が必要なことと同時に体への負担はとても大きなものとなり、高齢者に手術を行うのをためらう医師もいるのは事実です。その点に関しては医師と患者で体の調子を見ながら相談していかなければなりません。
超高齢社会で増える前立腺肥大症患者

上記のように、主な原因は明らかになりました。では、前立腺肥大症に悩む患者はどの程度いるのでしょうか。
男性が50歳を超えると約2割の人が前立腺肥大症になっているとされますが、この割合は70歳以上で約7割となります。
厚生労働省の患者調査によると、推定患者数は2014年の時点で3万5,400人。1996年には2万9,600人でしたので、超高齢社会が進み、世の中に高齢者が増えるとともに、前立腺肥大症の患者数も増加しているといえます。
前立腺肥大症となった人のうち、約25%がすぐさま治療を必要とする状態です。男性の病気としてとても数が多く、高齢になるとほとんどの人が前立腺肥大症になり、排尿障害を起こしがちになります。年をとると排尿に悩むというのはこのためです。
前立腺肥大症の対策は?
前立腺肥大症が加齢とともに起こりがちになるなら、予防できないと考えてしまうのであれば早計です。実際はそうではなく、日常生活における心がけ次第で前立腺肥大症の対策は可能です。
- お酒は控える
- 刺激が強い食べ物を食べすぎない
- 水分補給を行う
- 便秘を改善し、気をつける
- トイレを我慢しすぎない
- 体を冷やさない
これらの6か条を適切に守ることで、前立腺肥大症の予防になるでしょう。
今回は前立腺肥大症について取り上げました。高齢になると、男性の臓器である前立腺が肥大し排尿障害につながります。おしっこがでづらくて寝る時間にトイレにいくため、夜間に頻繁に起きる傾向があるのはこのためです。
前立腺肥大症の治療における主流は薬物療法で、それでも悪化したら外科手術となります。放置して進行すると尿閉と呼ばれる、おしっこがでなくなる症状に発展してしまうため、適切なケアが大切です。
しかし、日常の生活習慣によって予防できる、進行を抑えられる病気であるのもまた事実。今回見てきたことに気をつけながら、前立腺肥大症の対策を行うことができればベストでしょう。
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2020年9月7日 制定