高齢者の救急搬送が増加傾向に
高齢者による転倒が死亡事故にまで発展している事実をご存知でしょうか。今、高齢者が転倒によって救急搬送される事例が増えているのです。今回は、なぜ高齢ほど転倒しやすいのか、そして何をきっかけにして転倒を起こしているのかを考察していきます。
高齢者にとっての転倒が意味すること

東京消防庁の調査によると、転んで救急搬送される高齢者が増えており、日常生活において交通事故以外で救急搬送された高齢者の数は7万2,198人となりました。
これは2016年のデータですが、前年よりも5.9%増加、そのうち81.5%が転倒を原因としたものでした。
転倒は幼いころにはよくあることですが、高齢になっても転倒事故は発生しているのです。救急搬送されるほどの転倒事故が起こるということは、それだけ転倒という行為が危険であることを意味します。世間ではまだまだバリアフリー化が行き渡っておらず、高齢者やハンデのある人に優しいまちづくりが不充分な状況です。
では、高齢者が転んで救急搬送される事実において、年齢との相関はどのようになっているのでしょうか。
人口10万人ごとに救急搬送された人数を確認すると、その数は年齢とともに増加していることがわかります。
80歳を超えた頃から大幅に増え、95歳でピークを迎えることに。
99歳以上の救急搬送者も非常に多く、とても危険だということがわかるでしょう。
特に高齢者の転倒事故が約8割以上だということを留意しなければなりません。
高齢者が転倒してしまう背景にあること

救急搬送された約7万人の高齢者のうち、約8割が転倒事故だと冒頭でお伝えしました。
これは2016年における東京消防庁のデータですが、その数は年々増え続け、2014年の4万2,625人から右肩上がりとなっています。
これには超高齢社会の中で高齢者の絶対数が増えていることが大きく影響しているでしょう。
また、救急搬送された人数を年齢別に見てみると、83歳がピークとなっています。
これは、男性約80歳、女性約85歳の平均寿命をちょうど平均したあたりの数値です。
転倒という動作が青年に与える影響は少ないですが、高齢になると重大な事故につながってしまうという懸念がデータから導き出されます。
引き続き東京消防庁のデータを見ながら転倒事故はどこで発生しているのかを確認しましょう。実は全体の55.9%が住宅の内外で起こっており、そのうち9割以上が屋内で発生しているのです。
つまり、転んで救急搬送された人のうち、半数以上が家の中で転んでしまった事故によるものなのです。さらに詳しく見ていくと、転倒事故発生場所で最も多い箇所は「居室・寝室」となっています。
これに続くのは「玄関・勝手口」「廊下・縁側」など、住宅内で段差があるところです。
一番事故が起こっている居室・寝室ですが、年間1万9,580人もの救急搬送者が出ており、主にベッドで転んだ、ちょっとした段差で躓いたといった事故が多いものと考えられます。
家の中をリフォームして完全バリアフリー化したとしても、ベッドの段差まで変えることはできません。こうした事故事例を参考にしながら、たとえ何もない寝室であっても、手すりをつけるといった工夫が必要でしょう。
高齢者による転倒の被害は大きい…

高齢者が転んで救急搬送された結果、怪我の度合いはどのような診断がなされているのでしょうか。全体的にみてみると、60.5%が軽症と診断されていますが、残りは中等症以上、つまり入院が必要なレベルの深刻な状態です。
その中でも重症が181人、生命の危機に陥った人が37人となっており、中には死亡した人もいるのです。絶対数は少ないながらも命が脅かされる場合もあり、高齢者の転倒がいかに危ないかを痛感させられます。
この問題を解決する方法のひとつとして、家の中に手すりをつけるといったリフォームの選択肢があります。もし高齢者の住まいを安全にするためのリフォームであれば、介護保険による補助がでる場合もあり、自治体に相談してみることも一考でしょう。
また、転びにくい体づくりも当然大切となります。
日頃から下半身を中心とした軽い筋トレを行い、足腰を鍛えていくと良いでしょう。
ウォーキングや自重を利用したスクワットも有効です。
高齢になると筋力が衰えますが、適度なトレーニングを行えば、年を取ってからでも十分に筋力をアップさせることができるという報告もあります。
第343回の「ロコモ」をテーマとした回でもお伝えしたように、ロコトレを行っていくことが大切です。まずは、転倒ということがいかに危ないかを自覚し、手すりやバリアフリーなどの環境面を整え、同時にロコトレで転びにくい体を整えていきたいところです。
高齢者の転倒症例
最後に高齢者がどのようなときに転んでしまうのか、症例を見ていきましょう。例えば、玄関の段差で転び意識不明となった場合。玄関はどうしてもバリアフリーの盲点になりがちです。
また、椅子に座ろうとしてバランスを崩し、床に転倒してしまったなどのケースも挙げられます。症例を見る限り、気をつけようとしても玄関や椅子など、これ以上工夫のしようがないものもあります。
このようなケースにおいては、転びそうなところにマットを敷くといった予防策も必要でしょう。外出先ではできる限りエレベーターを利用し、段差のある乗り物や階段を使わない工夫も大切です。
今回は、高齢者の転ぶ事故がとても多いことを見てきました。
事故の約半数以上が、室内での転倒によるものです。
転ぶことは高齢になるほど発生しやすく大きな怪我に進展しがちということもわかりました。
死亡事例まで出ていますので、高齢者や家族が十分に気をつける必要があります。
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2020年9月7日 制定