財務省が介護報酬の引き下げを検討中
介護報酬は厚労省の管轄ですが、私達の保険料と税金で賄われているために税を管理する財務省も関与していることをご存知ですか?その財務省が2018年に迫った介護報酬改定に関し、マイナス改定の検討をスタートしたのです。
マイナス改定を検討する背景とは
まず、介護報酬とは介護サービスを提供する介護事業者の売上へとつながり、介護労働者の給与になるものです。そのため、この介護報酬が上下することで売上や給与が異なるのですが、使い方や額に関しては厚生労働省や財務省で検討されます。
その財務省が「財政制度等審議会」の分科会において、2018年に迫った介護報酬改定のマイナス改定の検討をスタートしました。
財務省は国の財政を担っているため、年間給付費が9兆円を超えた介護給付費や、年々上がり続ける介護保険料による国民負担の増加を警戒しているからです。
今回特に課題とされたのが、利益率の高い訪問介護および通所介護、サービス回数の上限設定や、居宅介護の総量規制です。
これから年末にかけて政府への意見書をまとめ、実現したいという考え。
この利益率が高いと介護人材の待遇改善につながるのですが、財務省は中小企業との利益率と比較して高いと判断し、介護報酬の引き下げを検討しているようです。

図の通り中小企業の利益率が2.6%なのに対し訪問介護は5.5%、通所介護は6.3%となり、数字上では倍以上の利益が出ていますので、ここに検討のメスが入る形となりました。
不正な事業所をさらに取り締まる動きが
さらに今年度は介護人材の待遇改善として処遇改善加算があり、給与が平均1万円ほど改善しています。そのため来年度の改定はマイナスにしたいという考えです。
訪問介護や通所介護のサービス詳細が厳しく審査され、本来ならば不要である介護まで行われ無駄な報酬が支払われていることなどが検証されました。
その中で財務省は、訪問介護に関してケアプランに回数制限を設けること、1日あたりの介護報酬における上限を定めることなどを指示しました。通所介護に関しては機能訓練が発生しない事業所では基本報酬を減らしたい見通しです。
財務省にはサービスの過剰や不適切な介護報酬の支払いを改善し、適正化していきたいという思惑があるようです。余計なサービスが現場で提供されていると、給付も膨らみますし高齢者の自立も妨げます。
介護報酬マイナス改定を反対する人達
一方でそれを反対する人々も存在します。国の財政が悪化していることは周知の事実である中、なぜ反対するのでしょうか。
反対の理由は介護関連事業の収益差率は他産業と比較してかなり低くなっており、利益が伸び悩んでいることが問題としてあげられているからです。これにより人件費を削ることになってしまい、介護業界は人出が不足しています。

現に、現状の介護労働者における不満は「人手不足」が53.2%となっており、とにかく仕事量が多く人手が足りていないという言葉が介護の現場から上がっているのです。
不満が溜まっていけば環境は悪化していきますし、施設での虐待につながる懸念もあります。ただでさえ介護職は体力仕事なのにも関わらず、無理にでも人件費を削ると一人あたりの負担がますます重くなり、介護職員の負担は高くなるでしょう。
そうなると、介護サービスそのものが破綻してしまいます。介護という制度の破綻にもつながるので、あまり事業者側としては介護報酬の引き下げは望ましくないというスタンスです。
また、つい先日も介護関連12団体が集結し、署名運動を展開して引き下げに反対するニュースがありました。介護報酬を受け取っている事業者側には死活問題となっています。
介護報酬がさらに下がるとどうなるのか?
実際に介護報酬が下がると何が起こるか考えてみましょう。
高齢者は現在増加傾向にあり、特養には52万人の待機者いて介護サービスを受けられない人が急増しているのが現状です。
そのサービスを受けられない人を誰かがケアしなければならないため、結果として家族や身内が介護離職してしまう問題があります。
この介護離職が多発するとGDPが減少し、家計も苦しくなります。
それに介護が終わってからのキャリア復帰も現状の日本では厳しく、経済的にも恵まれない境遇へと追いやられるパターンが多いのです。
超高齢社会の中で、このように介護離職をする人が増えれば国全体の勢いが失速する懸念があります。
国の苦しい台所事情を考えると、介護報酬の引き下げは仕方のない側面があるかもしれませんが、それによってしわ寄せが来るのはすべて介護労働者と要介護者なのです。
過去にマイナス改定となった時、何が起こったのか

今回、話題としている介護報酬ですが3年に1度、見直しが行われます。前回の改定時(2015年)、なんと介護報酬が2.27%マイナスとなり9年ぶりに減少しました。すると、それまで増加傾向にあったデイサービスの数が翌年に減少したのです。
デイサービスは地域コミュンケーションの核となる施設で、そんな場所が失われれば引きこもりになる高齢者もいるでしょう。そうなると介護をする家族の負担も増え、すべてを家庭で抱え込まなくてはならなくなり、いつか社会問題として顕在化してしまいます。
また同時に厚生労働省が推進する地域包括ケアシステムにとっても悪影響で、住み慣れた地域で安心して最期まで暮らす、という理念の元で設計された制度が破綻に。大げさなようですが、介護報酬が引き下げられるということはそのような事態を招きかねないのです。
介護サービスの質が減少
また、介護報酬の引き下げが起こるとサービスの質も低下します。売上が減っているのに同じレベルのサービスを提供し続けることは難しいからです。
財務省は通所介護と訪問介護の利益率を問題視していますが、利益が高いことに文句をつけて引き下げようとするようでは社会がうまく回りませんし、サービスが低下すれば満足度も下がります。
今の若い人たちと比べて恵まれているとされる高齢者ですが、かといって介護報酬をカットして恵まれた高齢者福祉を引き下げれば他が幸せになるとも限らないのです。
今回は介護報酬の引き下げ可能性について見ていきました。訪問介護と通所介護の利益率が高いことを皮切りに、財務省が引き下げの検討に入っています。これは介護に関わるすべての人に関係してくることで、看過できない問題です。
この介護報酬の結末に関しては年末に向けて方針がまとめられる様子で、引き下げになれば各施設に大きな影響を与えます。
それらは高齢者のQOLにもそのまま直結してくるため、無関係ではいられないのです。
介護報酬改定が今後どうなるか、気に留めておく必要があります。
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2020年9月7日 制定