今、高齢者の運転に対するあり方が世間に問われています。認知機能や運動能力が衰えた高齢者が車を運転しては事故の元になる可能性が高いとして、都道府県警のうち30本部が代理人(家族)でも免許の返納を認めることになりました。
高齢者の運転免許を代理人が返納
2017年11月1月現在、30都道府県で返納が可能
高齢者は自分ではまだまだ元気だと思っていても、認知症によって昔よりも認識機能や反射神経が衰えている場合があります。
その状態で運転を行い、事故を起こすと死亡者が出る事故に発展することも。
事故原因として主に挙げられるのは、アクセルとブレーキの踏み間違いや追突事故、脇見運転です。

そこで2015年に警察庁は、各都道府県警に対し代理人による返納を求めるよう要請しました。2017年3月の改正道路交通法を受けて、今年の2月以降から新たに18都道府県警が代理人返納を認め、合計30都道府県で代理返納ができます。
入院や、施設に入居している高齢者の家族が運転免許を返納することについて想定しており、施設の管理者や3親等以内の親族が委任状を持っていけば返納できることになりました。
返納することによって公共交通機関の割引ができる運転経歴証明書をもらうことができます。
警察庁の調べでは、過去2年間で高速道路を逆走した件数は447件発生しており、そのうち7割が65歳以上。さらにその中で認知症の疑いがあるのは約4割と、認知症ドライバーによる事故は確実に発生しています。
逆走だけでなく歩行者列への突入や、線路上を走行したりなど、危険な運転をすることも多く危険です。2012年の時点で、認知症ドライバーまたは認知症予備軍は約200万人いるとの試算もあり、早期の対策が求められていました。
現在、75歳以上の高齢者に対し3月からは免許制度の見直しを行い、認知機能検査をより強化して認知症患者の免許返納を促していく方針です。
代理返納が認められた経緯
高齢者の過度な自信
なぜ代理返納が可能となったのでしょうか。
その背景のひとつとして、高齢者による事故が多発していることが挙げられます。
老化によって認知機能が低下していることを高齢ドライバー本人が自覚をしていないケースもあり、「まだまだ大丈夫」「運転には慣れている」と思っていつも通り運転にでかけてしまうのです。
また、住んでいる場所が不便で車が欠かせず、やむを得ず高齢になっても運転を強いられているケースがあります。高齢者自身、自分が認知症であることを認めたがらず、家族が止めても激怒したり勝手に運転したりしてそのまま事故につながったことも。
88歳の男性が軽トラックを運転し、小学生の列に突入して小学生が亡くなってしまう事故も起きたことがあります。この場合は男性に認知症の自覚がなく、不起訴処分となり社会に大きな衝撃を与えました。
半年で3万人が認知症診断の疑いありと申告される
こうした痛ましい事故を受けて、今年の3月に改正道路交通法が施行されました。この法律は、主に認知症対策、認知症の疑いがある人物に対しての対策を強化するものです。
すでに今年3月から9月にかけて全国で111万人が検査を受け、医師による認知症診断が必要とされた人物は3万人を超え、697人が行政処分を受け免許の取り消しとなりました。

この改正道路交通法が誕生した理由のひとつは、やはり高齢者が運転に過度の自信を持っていることでしょう。
MS&AD基礎研究所が日常で運転を行っている1,000人に調査したところ、多くの高齢者が運転において自信があると考えていることがわかりました。
この傾向はより年齢を重ねると強くでており、60代前半では38.0%が自信はあると答えているのに対し、80歳以上では72.0%が自分の運転に自信を持っていたのです。
認知機能が衰えていく高齢者になるに従い、過去の運転経験を過信し自分の運転に自信を持っていることがわかります。しかし年齢を重ねるとともに、身体的な反射神経も事故を予防する認知機能も低下していくことは明らかなため、何らかの歯止めが必要になります。
それが免許に関する制限であり、これまでは簡単なテストだけで運転免許を更新できていたものが、今後は認知機能テストや医師による問診が追加され、75歳以上の高齢者は免許の更新が厳しくなります。
高齢者の事故防止策と免許代理返納の問題点
高齢者の事故防止に有効な対策とは

MS&AD基礎研究所が「高齢者の事故対策をどのようにすればよいか」とアンケートしたところ、もっとも有効だと考えられる対策として、「高齢者に自動ブレーキ装備車だけを運転許可する」といった意見が71.3%。
次点で、「1年毎の免許更新」という対策が54.4%という答えがありました。
高齢者自身も、ハンドル操作やブレーキ操作が遅れてしまい、事故となることを十分に認識し、明るいうちからライトを点灯したり速度を安全なものに落としたりといった心がけを持つ必要があります。
また、70歳以上の人には免許更新時に高齢者講習があり、そうした受講を通じてより安全に留意する必要性もあるでしょう。
さらには、信号や道路標識をより見やすいものにする、といった対策も有効です。
超高齢社会になるに従い、こうした社会の構造的な面から高齢ドライバーの対策を講じていくことも重要ではないでしょうか。
自動ブレーキ搭載車に関しては警察庁も限定免許を検討しており、有識者会議を立ち上げてスイスやドイツといった限定免許をすでに導入している国の調査を参照し、同時に自動ブレーキについてメーカーに聞き取り調査しながら、慎重に検討している段階です。
免許代理返納制度制度の問題点
ところで、高齢者の運転免許を代理人が返納することは、いくつかの問題点も指摘されています。
代理人が勝手に返納してしまっては、高齢者の人権をおびやかす事態に発展する可能性もありますし、高齢者が運転できなくなることで通院が疎かになり、それによって持病の悪化や要介護が進むケースも考えられます。
それに送迎などで高齢者の家族における負担が増えることも懸念され、高齢者自身も気力や判断能力が衰えることも考えられるのではないでしょうか。
これまで外出の際に車を使っていた場合は、すっかり外出しなくなり家に閉じこもりきりになった、ということも起こりえます。
高齢者があまり外出しなくなれば、コミュニケーションを取る機会が減少し、改正道路交通法の対象である認知症患者は、より症状を悪化させてしまう可能性があります。こうした運転の自由を制限する行為は、免許返納のデメリットとして認識しなければなりません。
しかし運転して死者や怪我人が出てからでは遅く、事故が起こってからでは手遅れです。
ある程度の年齢以上になったら、免許の返納は考えていかなければならないことであり、社会も、運転しなくなった高齢者が住みづらくならないよう、対策を講じていく必要があります。
今回は高齢ドライバーの免許自主返納が、家族などの代理人によっても可能であることを見てきました。皆さんは、運転免許証を返納した高齢者もそうでない人も住みやすい社会とはどのようなものだと思いますか。
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2020年9月7日 制定