生活保護の受給世帯が過去最多
最低限度の生活を営むための施策
2017年11月に生活保護を受給した世帯数は、前月より64世帯多い164万2,971世帯となったことを厚生労働省が明らかにしました。
これは7ヵ月連続の最多更新という状況ですが、中でも、生活保護受給者のうち高齢者世帯が全体の5割以上を占め、そのうち約9割が単身世帯。
超高齢社会の進行状況を鑑みると、とても見過ごすことはできない事態となっています。
そもそも生活保護には「世帯単位で行う」という要件がありますが、この”世帯”が生活保護受給に値するのは以下3つのような状況においてです。
- 資産がない
- 働ける状態にない
- 援助してくれる親族がいない
この要件に加え、生活保護には憲法第25条「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」の条文に基づいているという事実が存在しています。
生活に困窮する”世帯”に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行うことで健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的として生活保護は行われているのです。
そんな生活保護は厚生労働大臣が定める基準によって計算される最低生活費から、年金などの収入を差し引いた差額として支払われます。以下の8種類が内訳で、必要に応じて併給されていくわけです。
- 出産扶助
- 住宅扶助(住宅費用)
- 葬祭扶助(葬祭費用)
- 介護扶助(介護サービス費用)
- 医療扶助(医療サービスの費用)
- 生活扶助(日常生活に必要な費用)
- 教育扶助(義務教育を受けるために必要な学用品費)
- 生業扶助(勤労に必要な資格など習得にかかる費用)
生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(2017年度版)に合わせて計算してみると、例えば、東京都八王子市に住む一人暮らしの65歳女性の場合、基準額として「第1類(食費、被服費など)」の3万8,990円、「第2類(光熱水費や家具など)」も4万800円を合計した計7万9,790円にプラスして、住宅扶助や介護扶助、総裁費用等の実費が定められた範囲内で支給されることになります。
これとは別に、医療や介護のサービスを受ける際の費用が医療機関や介護事業者へ直接支払われるのです。
高齢者が生活保護を受け取ら”なければいけない”理由
厚労省の調査によると、生活保護受給者に占める高齢者世帯は52.9%と半数を越えています。
総務省統計局による2015年家計調査では、60歳以上の単身無職世帯の実収入は月に約12万円となっており、そこから税金や社会保険料などを除くと、約11万円が残るだけです。

その一方で消費支出は月に約14万4,000円と、年金などの収入だけでは毎月の収支が赤字になってしまうのです。十分な貯金があれば良いのですが、実際には生活保護に頼らざるを得ない実情が慮(おもんぱか)られます。
定年退職した多くの方にとっては年金が一番の資金源となるわけですが、一口に「年金」といっても、国の制度である「公的年金」や企業が従業員への福利厚生制度として設けている「企業年金」、民間の生命保険会社などが提供する「年金保険」が存在。
どの年金制度を利用しているかによって、年金の額にも大きな違いがでてきます。
もし現役時代に年金保険料を滞納していたり、最低限の国民年金しか納めていなかったりすると、十分な年金を手にすることができずに生活保護の対象となることが考えられるのです。
生活保護受給者が増え続ける理由
超高齢社会の進行による医療扶助費の増加
昨年の敬老の日に総務省が公表したデータによると、高齢者の推計人口は3,514万人と年々増加し、人口全体に占める割合も27.7%と過去最高。今後の高齢者人口増加に伴い、ますます高齢者の生活保護受給世帯が増えると予想されています。
この増加に比例して増えているのが、医療扶助の割合です。2017年度の生活保護費負担金の予算(事業費ベース)は3.8兆円ですが、その約半分を医療扶助が占めているのです。
厚生省保険局調査課による最近の医療費の動向調査結果(2017年8〜9月)においても、75歳未満の概算医療費は対前年同期比で4.5%増と、75歳未満の0.7%増に比べて大幅に膨れ上がっています。
このことから、高齢者世帯の生活保護受給率の上昇は、国が負担する医療費の増加に直接の影響を与えることは明白でしょう。
結局、高齢者はお金持ち?貧困?
オレオレ詐欺などの高齢者を狙う詐欺の認知件数がここ数年右肩上がりに増加するなど、世間の一部では「高齢者は裕福だ」というイメージが先行していますが、ここまでみてきた事実からは、一概に裕福とは言えないようです。

厚生労働省が高齢者世帯の生活意識について調査したところ、65歳以上の高齢者世帯の52%が「大変苦しい」や「やや苦しい」と答えているのに比べ、「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と答えた人たちはわずか4.6%と少数派。
先ほどの家計調査の実情をみても、高齢世帯の懐事情が苦しいことは明らかです。
かつては子ども夫婦に扶助してもらうことはよくあることでしたが、今の実年層以降は核家族が多数。
非正規雇用やニート、未婚世帯など、自分の世帯を養うのに精一杯な状況であることも多く、頼りにはできません。
それどころか、ワーキングプアや引きこもりで、逆に親に援助されている例さえあります。
生活保護に付随する問題は2つ
生活保護の不正受給者が過去最多に
最低限度の生活を保証するために用意された生活保護。最後に、この制度の問題点についてみていきましょう。その最たるものに挙げられるのが、不正受給。
不正受給とは、収入や生活できるだけの貯蓄があるのにもかかわらず、生活保護を受給していたり、受給後に収入を隠したり、あるいは少なく申請する行為をいいます。

厚労省の調べでは、その金額は通算169億9,408万円(過年度の支出分を含む)で、不正受給の件数は4万3,938件と過去最多。
2014年7月に改正生活保護法が施行され、罰金の上限を引き上げたほか、不正をした際の返還金にペナルティーの上乗せなどが盛り込まれましたが、2015年の状況では不正受給数は過去最多となっています。
生活保護の支給額は年金よりも上!?
また、国民年金よりも生活保護を受給するほうが、手元に残る額が高いということも問題となっています。
例えば、夫が平均的収入のサラリーマン世帯を例にとってみてみましょう。会社員として40年間厚生年金を払い続けたとします。すると、厚生年金と夫婦の老齢基礎年金を合わせて、月に約23万円程度の年金が入ってきます。
ところが、同じように40年間働いていたとしても、自営業などで国民年金にしか加入していなかった場合、夫婦合わせても月の年金受給額は13万円ほどにしかなりません。
都心で暮らす夫婦のケースではおよそ18万円前後の生活保護受給額となることから、生活保護支給額のほうが合理的な選択になってしまうのです。
以上のようなの問題を考慮して、政府は生活保護受給額のうち、食費や光熱費など生活費相当分について、2018年10月から3年かけて段階的に削減する方針を決めました。
これは国費ベースで年160億円(約1.8%)の削減計画です。
当初は最大1割程度減らす案もありましたが、受給者の生活への影響が大き過ぎるとの反発を招き、減額幅に最大5%の上限を設けることになったようです。
また、生活保護費負担金の半数以上を占める医療扶助費を減らすため、後発医薬品(ジェネリック)の使用割合を2018年度中に80%以上とするなどの経済・財政再生計画を立てています。
高齢化と生活保護の増加、そして国費負担の増加は密接に関わりあっています。この問題をないがしろにすることは、この時代では不可能なことなのでしょう。
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2020年9月7日 制定