介護施設の夜勤、長時間で過酷な勤務実態が明らかに
介護の夜勤形態とはどんなもの?
特養や有料老人ホームなど、要介護者が入居・宿泊できる施設では、基本的に夜勤体制がとられています。
仕事内容として挙げられるものは居室の巡回や緊急のナースコールへの対応、食事の介助に加え、排せつ介助、おむつ交換、そして着替えの介助などで、昼間の勤務と大きな相違点はありません。
これらの作業の合間に事務処理を行い、朝(午前9時)になると日勤の職員への引き継ぎが行われるわけです。
この夜勤がどのくらいの長さになるかは、その施設が採用している勤務の交代制が「2交代制か3交代制か」によって異なります。
一般的なのは、日勤の職員が午前9時から午後5時まで勤務し、その後の午後5時から翌9時までが夜勤の職員が働くという2交代制。
3交代制の場合は早番の職員が午前9時から午後2時まで勤務し、遅番の職員が午後2時から午後10時まで、そして夜勤の職員は午後10時から午前9時まで勤務します。
夜勤時の休憩時間は2交代制の場合で約2~4時間、3交代制の場合だと約1~2時間に定めている場合が多いのですが、この場合は勤務時間が合計16時間近くに及ぶことになるので、一般的には3交代制の方が負担が少なくすみ、働きやすい環境と言えるかもしれません。
夜勤を行う利点の一つとしては「夜勤手当」があり、1回の勤務ごとに平均5,000~8,000円が基本給にプラスされるところもあるそうです。
日勤よりも少ない勤務日数で高収入を得られることから、「夜勤専従」という形で夜だけ働く介護職も。
収入のことを考えると、夜勤はそれなりにメリットがあるとも言えるでしょう。
夜勤の勤務時間16時間越えが7割以上

しかし、介護施設における夜勤の実態は、それほど甘いものではないようです。
先日、日本医療労働組合連合会(日本医労連)が全国の165の介護施設を対象に行った「夜勤勤務の実態調査」の結果が公表されました。
それによると、1回あたりの夜勤の勤務時間が16時間以上に及んでいる職員が全体の7割以上にのぼっていることが明らかとなったのです。
また、グループホームや小規模多機能型施設(デイサービスやショートステイなど複数の介護サービスを、1つの事業所で提供する施設)では、夜勤担当の職員数が「1人のみ」である場合が多く、職員用の仮眠室が無いという施設も約半数もあることがわかりました。
いくら定員の少ない小規模施設とは言え、「ワンオペ」(ワンオペレーション:一人で業務を行うこと)の夜勤は相当の負担であることは想像できますが、現在のところは制度上において、グループホームや小規模多機能型施設では、ワンオペが許容されているのが現状です。
特養、老健の場合は利用者数に応じて人数の配置基準が定められており、複数人体制で夜勤が行われることが多いです。しかし、職員の負担の大きい2交代制を採用している施設は非常に多く、3交代制を採用している施設は少数派となっています。
過酷な夜勤は介護職員不足に帰結
高齢者の増加に介護職が追いつかず…
介護施設における夜勤勤務がこれほど過酷なものとなっている背景には、急速な高齢者の増加とそれに伴う介護職の人材不足があります。

1950年当時、日本人の高齢者の数は406万人でしたが、約60年後の2016年時点では約8.5倍の3,459万人となりました。
。
今後も高齢者の数は2040年まで増え続けるだろうと言われています。
それに伴って高齢化率も上昇し続けており、1950年当時は4.9%に過ぎませんでしたが、2016年には27.3%と増え続け、推計として、2025年には30.0%、2040年には35.4%になると言われているのです。
こうした高齢者の人口が増加している中、それを世話するために必要な介護職員の数も増え続けてはいます。
介護保険制度が始まったばかりの2000年度においては、訪問系、通所系、入所系、小規模多機能型居宅介護などの介護職員の総数は約55万9,000人でしたが、2015年度においては183万と3倍近くにまで増加しました。

ところが、現場で必要とする人材数には未だに及んでいないのが現状です。
介護分野の有効求人倍率の推移をみると、全産業平均よりも常時上回っていることが見てとれます。
特に2013年から2016年にかけては介護分野の数値が全産業平均よりも伸び率が急になっており、現場における人材不足が加速化しているようです。
2016年度における介護分野の有効求人倍率は3.02で、全産業平均の約2.2倍となっています。
重い労働が介護現場から人を離す
また介護職の不足に拍車をかけているのが、介護職員の離職率の高さです。
「介護労働安定センター」の調査によると、2015年10月~2016年9月にかけての1年間で、全国の介護職員のうち16.7%が離職しています。
2015年の全産業の離職率の平均は15%ですから、それよりも1.7ポイントも高くなっているのです。
なぜこれほど介護職の離職率高くなっているのでしょうか。
「社会福祉士・介護福祉士就労状況調査(2015年度)」によると、介護福祉士の離職理由でもっとも多かったのが「業務に関連する心身の不調(腰痛を含む)」で全体の27.1%(複数回答、調査対象者数は1万434人)。
また「労働時間・休日・勤務体制が合わなかった」も21.1%となっており、勤務内容の身体上の負担の大きさ、そして勤務時間の大変さゆえに職場を離れた介護福祉士が非常に多いことが分かります。
重労働ゆえに離職者が増え、そのことが介護現場での人材不足をもたらし、そして人手が足りないゆえに介護職員1人当たりの仕事量が増える…という悪循環が生じていると言えそうです。
現場の不満は状況改善への道標
現状、介護職員は何に対して不満を持っている?
では、どうすれば介護職の人材不足を解消することができるのでしょうか?介護職の離職者を減らし、介護人材をしっかりと確保していくには、やはり介護の現場で働く人の不安や不満を解消していくことがポイントになるでしょう。
「介護労働実態調査(2016年度)」では、介護職員の「労働条件などにおける悩み、不安、不満」に関するアンケート調査の結果が公表されています。

このグラフで注目すべきは、「有給休暇が取りにくい(34.9%)」、「休暇が取りにくい(25.7%)」、といった時間に関する項目です。
介護職の人手不足を解消するには、まずは現場の介護職員のために勤務時間、勤務体制を見直し、働きやすい職場を整備することが大事なのかもしれません。
離職者を減らしてキャリアアップできる労働環境を整え、魅力ある職場として社会が認識できるようになっていけば、介護職を志す若者も増えるのではないでしょうか。
そのためには、各施設の努力もさることながら、行政・厚労省による然るべき指導、制度化も必要となりそうです。
2交代制とワンオペの廃止は可能か
また、新しい人材を得るためには、介護職にあるネガティブなイメージを払拭することが大切です。
介護職のネガティブイメージについては、体力や精神面もさることながら、給与水準が挙げられることも少なくはありません。
今回のニュースを踏まえると、「体力的にきつい」は部分的なのかもしれませんが、妥当な感想だと言って間違いはなさそうです。
この問題を解決するには、夜勤においては2交代制ではなく3交代制による無理のない夜勤体制の整備が進むこと、小規模施設においては「ワンオペ」による夜勤状況が改善され、仮眠室もきちんと設置されることが、まずは大事になるはず。
行政・厚労省、そして各介護施設が一体となった介護職員の労働環境を改善は、世間的なイメージ払拭に対するキーとなることは言うまでもありません。
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2020年9月7日 制定