「リアル」だけではなく「デジタル」の終活もしなければならない時代に
約5割のシニアがスマホを使う現代
総務省の「通信利用動向調査」によると、2016年のインターネット利用率を年齢階層別に見た場合、65~69歳では69.4%、70~79歳では53.6%、80歳以上でも23.4%に上っています。
インターネットというと若い世代が利用するものだと考えられがちですが、実態としては、高齢者世代の多くの人が利用しているのです。

また高齢世代(60歳以上)におけるインターネットの利用目的・用途としては、「電子メールの送受信」や「地図・交通情報の提供サービス」が多い中、「ソーシャルネットワーキングサービスの利用」が約2割、「商品・サービスの購入・取引」が約3割、「金融取引」を行っている人も1割以上います。
SNSやネットショッピングなど、生活の中でインターネットと深く関わる高齢者が年々増えているのが現状です。
そして、MMD研究所が行った「2017年シニアのスマートフォン利用に関する調査」によれば、60~79歳でスマートフォンを利用している人は48.2%と半数近くになっており、日常的にスマホを使いこなすシニア層が増えている結果が出ています。
気軽にネット利用ができるスマホもまた、若者だけではなく高齢者世代で使いこなしている人が増えているわけです。
デジタル終活とは、個人のデータに対する死後の取り扱いを生前から考えて活動しておくこと
パソコンやスマホを通して日常的にインターネットを利用している高齢者が増えている中、注目を集めつつあるのが「デジタル終活」です。
デジタル終活とは、「デジタル遺品」(パソコンやスマホなどの電子機器内、及びネット上にある、本人の死後も残り続ける個人的なデータ)に対する死後の取り扱いについて、生前から考える活動のことを言います。
デジタル遺品となるデータとしては、以下のものが一般的です。
- 利用方法の再考・解約方法を確認すべきデータ(例:有料のWEBサービス)
- 思い出となるデータ(例:画像ファイルやSNS関連の無料のWEBサービス)
- 相続対象となるデータ(例:ネットバンク、ネット証券、クレジットカード会社のWEBサービス)
- 葬儀・プライバシー関連のデータ(例:家計簿の管理記録、住所録管理(葬儀・通夜の連絡に活用できることも)
- メール記録、仕事上の文書
またデジタル終活のプロセスとしては、
- ①パソコンやスマホ、あるいはネット上にどのような個人的なデータがあるのかをできるだけ調べ、まとめておく
- ②遺品として遺すべきデータと、隠し続けるべきデータとを分類する
- ③デジタル遺品に対して行って欲しい処置を記したエンディングノートを作成し、家族・親族に伝える
というのが基本的な流れになります。相続対象となるデータについては、状況に応じて正式な遺言書を家族に遺しておく必要も出てくるでしょう。
デジタル終活を行っていないと怖い理由は?
パスワードがわからずデータにアクセスできない
デジタル終活の必要性が認知されるようになったのは、故人のパソコンやスマホ、ネット上のデータにログインする場合にID、パスワード・パスコードが必要な場合があり、それを家族や周囲の人に知らせないまま亡くなる人が多いからです。
そのことがきっかけで後にトラブルが生じるケースが多々起こり始めたと言います。
特にネットバンキング、株取引など金銭取引に関係するデータは相続に関わるものでもあるため、それが確認できないとなると、相続がままならないという状況も起こりうるのです。
もしID、パスワード・パスコードを教えないまま本人が亡くなった場合、専門の業者にお願いして閲覧できるようにしてもらえばよい、と思われる人もいるかもしれません。
ところが、(データを閲覧できるようにする)業者側は、持ち込まれた機器が本人・所有者のものでない限り、個人情報保護の観点からデータを取り出すことは原則行っていませんし、2016年からはマイナンバー法も施行されているので、個人情報を漏洩するようなことを行えば厳しい罰則を受けることにもなります。
ですので、本人が生前に然るべき対策を取っておくことが必要になるわけです。
残された家族が負債を抱える可能性も…
デジタル終活を怠ると、場合によっては残された家族が多大な負債を抱えてしまうこともあります。
その最たる例が、ネット上でのFX取引。
FXは比較的リスクの少ない取引とは言われていますが、予期せぬ暴落によって大損失を招くリスクがあるのも事実。
その場合、本人が亡くなった後であっても、家族に対して追加証拠金の請求が来るということも起こり得るのです。
さらに故人が趣味で会員となった有料サイトも、本人が解約の手続きを取らない限り、ずっと支払いが続けられることになります。故人が亡くなって何年も経ってから家族が気づき、相当額の金額を無駄に費やしていたということも十分に起こりうる事態です。

また故人がブログ、SNSを行っていた場合、亡くなった後に長い間放置されたままだと、アカウントが乗っ取られることもあります。
その場合、故人になりすまして嘘の情報が発信される、誇大広告がたくさんサイトに貼り付けられるといった不正利用が行われ、故人と交流していた人に多大な迷惑をかけることにもなり兼ねません。
デジタル遺品への対策をしっかりと行っておかないと、金銭面だけでなく人間関係においても大きな損失を招く恐れがあるのです。
「デジタル終活」をするなら早いうちに準備!
生きている期間=元気である期間ではない
厚労省は3月9日に開かれた有識者会議で、2016年時点の健康寿命は男性72.14歳、女性が74.79歳 だったと発表しました。
健康寿命とは健康上において問題なく日常生活を過ごせる期間のことで、「平均寿命」よりも男性で8.84歳、女性で12.35歳ほど若い年齢となっています。
つまり、病気で寝たきりになっているなどの要介護状態になっている期間が、平均寿命と健康寿命の差によって表されるのです。

そして、「平成29年版高齢社会白書」によれば、要介護状態となる原因として多いのが「脳血管疾患」(17.2%)と「認知症」(16.4%)。
いずれも重篤化すると意思疎通が難しくなる病気でもし発症した場合、状態によっては家族・親族にその意思を伝えることが難しくなります。
こうした現状を踏まえると、デジタル終活に取り組むのは自身が健康なうち、つまり健康寿命が尽きる前に行っておくことが得策だと言えるのかもしれません。
認知症にかかると正常な判断ができなくなる
意思疎通を行うことが困難になる病気として、認知症があります。
認知症は脳の神経細胞が壊死することで起こる病気で、2012年時点における高齢者の有症率は約15%です。
発症した場合、もの忘れなどの記憶障害のほか、場所・時間・人物の判別がつかなくなる見当識障害、理解・判断力の障害、実行機能障害などが起こります。
そうなるとデジタル終活を行うとしても、本人が自分のログインIDやパスワード・パスコードを思い出せない、あるいはそれを記した物の保管場所がわからなくなるという事態に陥るのです。
また認知症が進むと、もの盗られ妄想、せん妄、幻覚・錯覚、暴言といったBPSD(行動・心理症状)の症状が現れる場合もあります。
こうした症状が本格的に出てくると、デジタル遺品への対応策として健康時には考えられないような非合理・不適切な判断を下してしまう恐れも出てくるのです。
今回はデジタル終活について取り上げ、その必要性と、自身が健康なうちに行っておくべきことの重要性について考察しました。家族に余計な負担を遺さず、良い思い出だけを遺すためにも、デジタル遺品対策は早めに取り組んでおくことが大切です。
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2020年9月7日 制定