厚生労働省が「生活援助」についての研修内容を明らかに
生活援助従事者研修の詳細が判明
訪問介護の生活援助を中心としたサービスの担い手を育成するために、短時間の新研修が来年度から新たに行われます。
その名は、「生活援助従事者研修」。
この研修を修了した職員については、訪問介護事業所の人員基準(常勤換算2.5人以上)の対象としてカウントすることが可能となります。
厚労省によって通知がなされた新研修の内容は次の通り。
カリキュラムはトータルで59時間。
受講者の負担を軽減する観点から、このうち29時間を上限として、通信学習による実施も認めるルールを設けてあり、実際どのくらい通信学習で行うかは、実施主体の事業者や都道府県などが定めます。
介護職員初任者研修(130時間)を受ける場合は、重複する内容を省略でき、残りの71時間のみ済ませれば、修了とみなされます。
また、他の研修を終えた人は、新研修の課程の一部を免除することができ、都道府県の判断で認知症介護基礎研修の修了者は56時間に、旧3級ヘルパー研修の修了者は47時間に、新たな「入門的研修」の修了者は43時間に短縮出来ます(本来は59時間)。
さらに、特別養護老人ホームなどで介護職員として一定期間働いた経験のある人も一部免除が可能となるのです。
生活援助従事者研修とは
生活援助従事者研修は、訪問介護の「生活援助」の部分を中心としたサービスの担い手を育成するための研修です(生活援助については後述)。人材の裾野を広げることによって、マンパワーの確保につなげることを狙いとしています。
生活援助従事者研修のカリキュラム内容は、初任者研修と同科目で、時間数が59時間(初任者研修の130時間の約半分)と定められていますが、研修時間については、メリハリを付けた上で、全体に半分未満に短縮。具体的には以下の通り。
- 職務の理解が2時間(介護職員初任者研修では6時間)
- 介護における尊厳の保持・自立支援が6時間(同9時間)
- 介護の基本が4時間(同6時間)
- 介護・福祉サービスの理解と医療との連携が3時間(同9時間)
- 介護におけるコミュニケーション技術が6時間(同6時間)
- 老化の理解が4.5時間(同6時間)
- 認知症の理解が4.5時間(同6時間)
- 障害の理解が3時間(同3時間)
- こころとからだのしくみと生活支援技術が24時間(同75時間)
- 振り返りが2時間(同4時間)
※生活援助従事者研修において、「老化の理解」「認知症の理解」に関しては「老化・認知症の理解」としてひとつとなり、時間は9時間となります。
各科目について「講義」と「演習」を一体で実施することになり、「こころとからだのしくみと生活支援技術」においては、「移動・移乗に関連した実習」が2時間盛り込まれることに。
また、これらとは別に30分程度の筆記試験による「修了評価」が行われる見込みとなっています。
生活援助従事者研修を実施する背景とは
訪問介護を「生活援助」と「身体介護」に分けた理由
「生活援助」とは、一言でいうと、被介護者が一人暮らしであったり、家族や本人が何らかの理由で家事を行えない場合に、必要な身の回りの世話をしながら日常生活をサポートするサービスのことをいいます。
具体的には、食事の準備(調理・配膳など)や掃除・洗濯・ゴミ出し、日用品などの買い物代行に加え、服の補修や部屋の片付け・整理整頓などがこれに含まれます。
ちなみに、社会保険制度上の訪問介護においては、他の家族の部屋掃除やペットの散歩、来訪者への接客など、被介護者以外の世話は対象に含まれておらず、利用者はこれらを依頼することができません。
もう一つの「身体介護」は、介護職員が家庭を訪問して、被介護者の身体に直接触れながら行う介護サービスのこと。具体例には食事中の手伝いや見守りを行う「食事介助」や「入浴介助」、車椅子や車への乗り降りなどの手伝いを行う「移乗介助」などが挙げられます。
また、「排泄介助」、床ずれ(褥瘡)予防や防止のために体位を変える「体位変換」などもその範疇で、「衣類着脱介助」「散歩補助」「口腔洗浄」なども含まれるのです。
こうした中、生活援助は「プロの介護者の必要があるのか」という議論が長らく続いていて、生活援助従事者研修が行われる背景はそうしたところにあります。
今までは生活援助については介護福祉士も従事していたのですが、利用者や家族から「掃除や洗濯をしてほしい」という要望が絶えず、介護事業所では、時間給の高い介護福祉士を出すと利益が見込めません。
そんなこともあり、訪問介護は「生活援助」と「身体介護」に、分けられることになったのです。
人手不足の解消
さらに、人手不足を解消すべく、介護業界により参入しやすくするために生活援助従事者研修と併せて入門的研修も行われることになりました。
入門的研修は、未経験者が介護分野への参入に不安を感じるであろう、介護保険制度に関する内容や、トイレへの誘導や衣服の着脱などの基本的な介護の方法、認知症に関する基本的な理解、緊急時の対応方法などを修得する研修です。

2017年の8月に行われた社会保障審議会介護の給付費分科会では、介護職員の年齢構成をグラフ化した資料が配布されました。
それによると、介護職員(施設等)は、30から49歳が主流で、訪問介護員に おいては、60歳以上が約3割を占めるなど、中高年が中心になっていることから、新たな研修制度を設けることによって訪問介護の門戸を広くすることも意図されているのではないかとみられています。
「生活援助」と「身体介護」をわけることの問題点
1ヵ月100回の生活援助は「異常」なのか?
昨年11月1日、社会保障審議会の介護給付費分科会の中で、厚労省は参考資料として、財務省の予算執行調査を配布しました。そこには、訪問介護が月90回以上の21人の個別事例が要介護別と17市区町村別に明記されて一覧表となっていました。
最も多い訪問回数101回は北海道標津町で、この回数をみて、会場は驚きと共に受け止められましたが、「認知症の人と家族の会」理事の田部井康夫氏が、「100回以上といっても、1日3回朝昼晩と行けば3回になる。
実際に生活していく上では必要。
本当は身体介護として入らなければいけないのに、回数を入れないから、家事援助という形で回数が多く入ることで身体介護もカバーして在宅をやっと成り立たせているというのが実情」という趣旨の反論を行いました。
この反論は、介護現場の厳しい現状を生々しく示した内容であり、参加者全員の耳を傾けさせるに余りある切実なものでした。
厚労省はこのときの分科会で、掃除などでも身体介護と見なすケースがあることを明確化させた上で、身体介護と生活援助の報酬にメリハリを利かせる案を示し、利用者の自立支援につながる身体介護の報酬を相対的に高くする傍ら、その一方で生活援助の報酬引き下げをにらんでいることを匂わせました。
前述の101回というデータも、“生活援助中心型サービスの不適切な利用”を広く世の中に訴える意図があった可能性があります。このとき、厚労省は、生活援助の利用に上限を設けることも提案しました。
生活援助の報酬引き下げで人材確保に影響は?
そんなふうに、いよいよ現実味を帯びてきた生活援助中心型サービスの報酬引き下げですが、厚労省が提案しているような「生活援助中心型ヘルパー」を新たに採用するプランに対して、介護現場では「そもそも時間給が低かったら、人なんて集まらないのではないか」という懐疑的な声も少なくありません。
訪問介護員の離職率は他産業系と比べると高く、超高齢社会が今後も続いていくことを考えると早急に人材を補給しなくてはなりません。

また、生活援助中心型サービスの報酬引き下げによって、新たな研修の修了者ばかりでなく、訪問介護を行う介護福祉士の給与水準にも影響を及ぼすことは避けられないという声もあります。
厚労省は、生活援助中心型サービスを「新研修の修了者」「介護福祉士」のどちらが提供しても、報酬には差をつけない方針だからです。
厚労相が目論む生活援助の報酬引き下げが、もう一方で同省が長年推進している介護人材の確保という大事業をもし仮に妨害するようなことがあれば、それは本末転倒という他はありません。
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2020年9月7日 制定