みずほ情報総研株式会社が身元保証人に関する調査結果を発表
身元保証・引受人がいない場合、施設の3割が施設入居を拒否
今年3月に、みずほ情報総研株式会社による介護施設における身元保証人に関する調査報告が発表されました。
その結果、利用者と契約を交わす際、身元保証人や身元引受人がいない場合は、入居の受け入れを拒否している介護施設が30.7%であることが明らかとなったのです。

また、施設において「身元保証人がいる被介護者は施設の中に何名いるか」という調査では、一番割合の低い特別養護老人ホームですら、60%近くいるということでした(他は80%以上)。
身元保証人がいないと受け入れを拒否する理由としては、主に「緊急時(事故など)の連絡先」の問題、「亡くなった場合のご遺体、遺品の引き取り」の問題、「入院する場合の入院手続き(入院契約)」の問題という3つの理由が挙がっており、いずれも80%以上の施設が筆頭に挙げているものです。
身元受け入れ人や、身元保証人などの署名が得られないケースの対応をみると、「条件付きで受け入れる」とした施設の条件では、「市区町村に相談する」と答えた施設が55%となり、さらに「成年後見制度を申請してもらう」と答えた施設が74.4%に上りました。
今回は、この成年後見を含む身元保証人を巡る問題について解説したいと思います。
身元保証人がいない場合の成年後見制度
我が国では、認知症などで判断能力が不十分となり、遺産分割の協議に参加することなどが困難な人のために、成年後見制度という制度があります。
後見人の職務は、「身上監護(しんじょうかんご)」、つまり被後見人(本人)らしく過ごせるように心身の状態を常に把握し、場合によっては適切な福祉サービスの手続きを行うというもの。
連絡も含めた手続きは後見人が担うことになるので、介護施設側から見れば、成年後見人は身元保証人のような立場になるわけです。
後見人は、家庭裁判所に申し立てをすることによってなることができます。申し立てのできる人は、本人または4親等以内の親族であり、申し立てる親族がいない場合は、市区町村長です。
介護施設に入居するのに身元保障・引受人が必要な理由
緊急時などの手続きに困ってしまう
日本おける介護施設の運営基準は、「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」と規定しています。
にもかかわらず、現実的に介護施設に入るのに、身元人保障が施設側から強く求められ、それに見合わないと入居を拒否されてしまう理由は、いうまでもなく、身元保証人がいないと現実的に介護の現場でさまざまな不都合が起きてしまうからです。
例えば、市町村社協や、地域支援機関では、「医療同意を代わりに求められて困った」「継続的な支払い能力と手段・入所拒否」「死亡時の引受人がいない」といった問題が発生しており、これらは施設側が、入居者に身元保証人を求める理由を裏付けするものと言えるでしょう。
金銭的なトラブル
施設側が挙げた、入居者に身元保証人を求めるさまざまな理由についてはこれまで見てきた通りですが、みずほ情報総研は、これらをさらに単純化し、身元保証人がいないことで生じる問題を、「金銭に関すること」「医療に関すること」「対処(退去)時に関すること」「死後事務に関すること」の4つのカテゴリーに問題を分けました。
特に、同総研はすべての調査の結果を踏まえた上で、4つの中で最も「金銭に関する」問題を重視しており、「生活保護ではない低所得、無年金の方で問題が起きやすい」「扶養義務者以外に連帯保証を求めることが果たして適切なのか?」「後見制度は費用面の課題がある」「後から遺族が出てきてトラブルになることもある」といった現場の声を紹介しています。

事実、介護施設が身元保証人にも求める役割の大半は、金銭的なトラブルに対しての解決です。お金の問題は下手をすると施設の運営に関係するということもありますので、手堅くいきたいのでしょう。
国の定めた「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」という規定に反した場合、施設は行政処分を受ける可能性もあります。
しかし、こうした状況の中、一部の施設が成年後見人を立て、リスクを回避することで、身元保証人のいない入居者でも受け入れ可能にしているのです。
身元保証人を必要とする契約をする際の欠点
身元保証人が身近にいない
みずほ情報総研株式会社による同調査では、「総世帯数に占める単身世帯の割合」の推移も挙げられており、それによると、総世帯数に占める単身世帯率も、未婚化や親子の別居化を背景に、1970年の 5.9%から 2015年には 34.5%へと約5.8倍に高まっていることも同調査では指摘。
さらに「このような単身高齢者が介護サービスを必要とするニーズは確実に高まってくる」と締めくくっています。

こうした状況の中、身元引受人がいない高齢者はこの先増加するとみられ、彼らが施設を必要とするような事態も日常的な光景になるかもしれません。
成年後見制度には印鑑登録をできないなどの欠点が
成年後見制度が来るべき身元引受人不在の奥の手として大活躍しそうにもみえますが、この制度自体がさまざまな問題を抱えています。
最も重要なのは、成年後見人になると次のような制約がでてくるということです。
- 印鑑登録をすることができなくなる
- 一定の職に就くことができなくなったり資格を失ったりする(その職種は200以上にわたる)
- 株式会社の取締役や監査役(役員)になれなくなる
被介護者の財産管理ができなくなるという意味で、成年後見人がいざ必要となったとき、これらは大きな壁となりそうです。
また、成年後見人には基本報酬を支払わないといけないというのも簡単にこの制度が普及しているとは言いがたい要因となっています。
制度自体、現在見直しが進んでいるものの、現在のところその恩恵で施設に入居できるのは、身元保証人のない高齢者のごく一部に過ぎません。
身元保証人のいない高齢者を巡る問題の背後には、さまざまな課題が山積みされています。
その一つが医療同意を巡る問題です。
被介護者に医療行為を行う際には同意を得る必要があります。
しかし、成年後見制度を使っていて、被介護者が判断できない場合は後見人が判断しなければいけないのです。
これは、身元保証人がいても医療現場ではしばしば浮上する問題であり、同総研の資料でも、関係諸機関における今後の連携に期待を寄せる形となっています。今後、さまざまな問題を孕んだ身元保証人問題が、今後医療・介護の現場でクローズアップされてゆくでしょう。
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2020年9月7日 制定