農林水産省、高齢者の食料品購入事情について調査結果を発表
食料用品購入が困難な買い物弱者が増加している
現在、食料品を買える店舗まで直線距離で500メートル以上あり、かつ自動車を利用できない人、いわゆる「買い物弱者」が増加しています。

6月8日、農林水産省は、食料品を買うのに困難な状況にある65歳以上の高齢者(買い物弱者)が、2015年時点において全国で824万6,000人に上るとの推計結果を発表しました。
10年前の2005年から21.6%の増加(約147万人増)という結果となっています。
また、都道府県別にみると、65歳以上人口における買い物弱者の「割合」では、1位が長崎県の34.6%で、以下青森県の33.8%、秋田県の31.1%と続きます。
一方、買い物弱者の「人口数」では、高齢者人口の多い大都市圏において、近年急速に増え続けているのです。
2015年の国勢調査と2014年の商業統計に基づいてその実態に関する調査・分析を実施したところ、食料品を買える店舗として想定されているのは、野菜・果実・食肉・鮮魚の各小売業者、百貨店、総合スーパー、食料品スーパーやコンビニです。
調査方法については、今まで自動車の利用状況については、5年前の前回調査までは自動車の有無で判定していましたが、今回の調査では個人単位で自動車利用ができるのかに基づいて判定。より実態に近い調査結果が得られたとのことでした。
買い物弱者の増加は団塊世代が高齢者になる2025年からより深刻に
買い物弱者については、先ほども触れた通り、「食料品を販売する最寄りの店まで直線距離で500メートル以上あり、自動車の利用ができない人」を想定しており、端的に言えば、日常生活で買い物に困難を感じている人を総称したものです。
特に高齢者(65歳以上)の場合、本人の心身状態が衰弱すると遠方に買い物に出かけることが難しくなる場合も多く、住んでいる地域の商店が廃業・撤退したりすると一転して買い物弱者に陥ることもあります。
総務省によると、食料品販売店(スーパーやコンビニ)まで500メートル以上離れていて、かつ自動車を持たない65歳以上人口は、2010年時点では38万2,000人でしたが、2025年には59万8,000人にまで増加するとのことでした。
特徴的なのは、農村地域と都市的地域とを比較して今後の予測値の推移をみた場合、都市的地域の方がはるかに増加割合は高いということです。都市部における買い物弱者の問題は、団塊の世代が75歳以上を迎える2025年以降、さらに深刻化していくと考えられます。
買い物弱者が増加している原因は?
買い物弱者が都市的地域に集中している理由
東京、名古屋、大阪の三大都市圏における買い物弱者人口は、2005年時点では262万1,000人ほどでしたが、2015年にはその44.1%増となる377万6,000人にまで増加。
三大都市圏以外の地方圏では7.4%増にとどまっていることを考えると、人口集中地域において買い物弱者の問題が深刻化しつつあると言えます。
農林水産省は、大都市圏の高齢者に買い物弱者が増えている要因として、高齢者人口が増えていることに加え、飲食料品店が減少していること、そして大型商業施設の立地場所が郊外化していることなどを指摘。
今回の調査・分析結果を、自治体による買い物弱者への支援のほか、企業による出店戦略の策定、移動スーパーの訪問ルート設定などに活用してもらいたいとしています。
スーパー・コンビニの倒産増加と高齢者の免許返納も要因
東京商工リサーチの調査によると、2004年度から2013年度にかけての全国のスーパーにおける倒産件数は50~94件の間で推移し、2013年度では年間で77件が倒産。
倒産したスーパーを負債別にみると、50億円以上の大型倒産は少ないのに対して、1億円未満の負債で倒産するケースが多発しており、地域性・地元性の強い中小スーパーにおいて倒産が相次いでいる状況です。

また、コンビニエンスストアの倒産件数は、2017年度までの5年間で連続して増加しており、2017年度においては過去2番目に多い51件となっています。
コンビニ業界全体でみると店舗数・売上高ともに伸びているのですが、一部の地域ではスーパーなど他業態との競争が激化。
倒産数増加の原因となっているのです。
通常、最寄りの店が倒産しても、自動車を保有し運転できれば買い物弱者になることは避けられるのですが、近年、高齢ドライバーによる運転免許証の自主返納者数が増加。
2017年における75歳以上の免許返納者数は、前年比9万336件増となる25万2,677件となっています。
高齢者の交通死亡事故割合が増えている現在、免許証を返納する高齢者の増加は望ましい傾向であるのは間違いありません。
しかしその一方で、自動車の運転をやめることで買い物弱者になってしまう恐れもあるため、高齢者に免許証の自主返納を促すのであれば、返納後の移動手段に関するケアについても十分に配慮する必要があります。
買い物弱者を救うにはIT技術の活用を
ロボット・ドローンで配送する
買い物弱者を救済する手法として、現在注目を集めているのが、無人飛行機・ドローンです。
ドローンもある程度大型化すると大きな荷物を運ぶこともでき、買い物弱者のもとに食料品を運ぶ手段として期待されています。
本格的に導入を検討している自治体も多く、例えば今年3月には大分県佐伯市で、買い物弱者対策を目的とした日用品の運搬実験が行われました。
また同じく買い物弱者対策として実用化に向けて検討されているのが、本人が運転しなくとも走行する「自動運転車」。
交通事故の不安があるため自動車の運転をあきらめた高齢者であっても、自動運転車があれば遠方まで買い物に出かけることができるので、買い物弱者に陥らずに済むのです。
そのほか、買い物弱者の多い地域へトラックに商品を載せて訪問する「移動スーパー」の普及、都市部のマンション・団地におけるエレベーターの完備など、買い物弱者の解消に向けた取り組みはさまざまな形で行われつつあります。
スマートフォンによるネット通販
また最近では、スマホによるネットショッピングにより、食料品をはじめ生活に必要なものはほとんど購入することができるので、買い物に出かけられない高齢者にとっては非常に有用です。

かつては高齢者の間で敬遠されていたスマホですが、ここ数年は普及が進んでいます。
MMD研究所の調査によれば、60代のスマートフォン所有率は2015年時では25.9%でしたが、2017年には46.8%にまで増加。
スマホを使ったネットショッピングが高齢者の間にさらに広まっていけば、買い物弱者に陥らずに済む人がそれだけ増えることにつながります。
ただ、スマホでの買い物に慣れていない場合は慣れるまで時間が掛かること、誤操作で思いがけず課金したりしないようにすることなど、気を付けるべき点もあるので注意が必要です。
さらにスウェーデンでは、興味深い試みが行われています。
それは「無人コンビニ」と呼ばれるもので、人件費の節約により、通常では採算が取れない地域でもコンビニを呼び込むことができると注目を集めているのです。
日本でも同様の試みが広まれば、買い物弱者解消の一助になるでしょう。
今回は、高齢者の買い物弱者に関する問題を扱い、その現状と解消策について考えてきました。高齢化が進む中、高齢者の「買い物難民」をいかに減らすかは、日本社会全体の課題とも言えそうです。
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2020年9月7日 制定