大手保険会社、ダブルケア経験の有無についてアンケートを実施
大学生の子どもがいる人の3割がダブルケア経験者
7月18日、ソニー生命保険株式会社は、大学生以下の子どもを持つ人の約3割が、親の介護と子育ての期間が重なる「ダブルケア」を経験しているとの調査結果を発表しました。

調査は大学生以下の子どもを持つ30~55歳、男女1万7,000人からの回答を元に行われ、そのうち、現在ダブルケアに直面している人の割合は16.3%。これまで経験した人と合計すると、29.1%に上っています。
ダブルケアとは、我が子の「育児」と親・親族の「介護」を同時に担うことです。1970~80年代頃は、育児と介護を行う時期には時間差があることが多く、ダブルケアに直面する人は少数派でした。
しかし現在、女性の社会進出が進む中で晩婚化・晩産化が進み、育児をする時期に親の介護も行わねばならない世帯が増えつつあります。
例えば、30代後半で結婚し、40歳で初めて子を持ったという場合、子育てが大変になる時期における親の年齢は70代前後。いつ要介護状態となってもおかしくない年代となっているわけです。
また、昔とは違って現代では、親の介護を担う兄弟姉妹の数が少なく、親戚関係・地域関係が希薄な場合も多いため、ダブルケアの負担をうまく分散することが難しくなっています。
もしダブルケアと仕事の両立をせねばならないとなると、その負担は計り知れないほど大きくなるでしょう。
「ダブルケア」という言葉を聞いたことがある人は8.1%のみ
内閣府男女共同参画局の「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」(2016年発表)によると、日本におけるダブルケア人口は推計約25万人。
15歳以上に占めるダブルケアを行う人の割合は約0.2%で、育児を行う人全体のうちダブルケアに直面している人の割合は約2.5%、介護を行う人全体のうちでは約4.5%です。
高齢化と女性の社会進出が今後も進んでいくことを考えると、人数・割合ともさらに増えていくことが予想されます。
また、ダブルケアを行う人の年齢構成をみると、男性では30代が40.0%、40代が38.2%、50代が15.3%、女性では30代が43.3%、40代で40.4%、50代で6.1%。
男女ともに30~40代でダブルケアを行っている人が多く、全体の約8割を占めています。
しかし、ソニー生命保険が中心となって2015年に行われた調査(大学生以下の子どもを持つ母親1,000人を対象)によると、「ダブルケア」という言葉を聞いたことがある人の割合は、全体の8.1%のみです。
ダブルケアという言葉自体があまり普及しておらず、突然その状態に陥って困惑する人も多いのが現状と言えます。
ダブルケアに対する理解を深め、事前に準備をしておくことが必要です。
ダブルケアの背景は晩婚化と少子化によるもの
晩婚化による出産年齢の上昇で第1子を生むのが30歳超え
「平成29年版少子化社会対策白書」によると、日本人の平均初婚年齢は夫、妻ともに上昇が続いており、晩婚化が進行しつつあります。
2015年時点では夫が31.1歳、妻が29.4歳となっていますが、1985年当時は夫が28.2歳、妻が25.5歳でしたから、それよりも夫は2.9歳、妻は3.9歳ほど年齢が上昇。

また、それに合わせて平均出生年齢も上がっており、2015年における出生時の母親の平均年齢は、第1子が30.7歳、第2子が32.5歳、第3子が33.5歳です。
これは1985年当時と比較すると、第1子で4歳、第2子で3.4歳、第3子で2.1歳も上昇していることになります。
晩婚化が進み、出生年齢が上がってくると、子どもの育児期間もそれに合わせて後ろ倒しにならざるを得ません。
そうなると親の介護が必要になる時期と重なりやすくなります。
生命保険文化センターによると、介護保険の「要支援・要介護認定者」の割合は、65~69歳で2.9%、70~74歳で6.1%、75~79歳で12.9%です。
育児期間中に親が60~70代になった場合、ダブルケアに陥るリスクはそれだけ高くなると言えるでしょう。
晩婚化が進んだ原因としては、若いうちは仕事に打ち込みたいと考える高学歴の女性が増えたことに加え、「結婚に対して良いイメージが持ちにくい」「結婚に必要性を感じない」など価値観が多様化したことや、「金銭的に余裕がない」など経済的な理由も大きく影響していると言われています。
少子化によって親族間での助け合いが減少
ソニー生命保険が中心となって行った調査によれば、大学生以下の子どもを持つダブルケア未経験の母親918人に、「親・義親が要介護状態となったときの相談先を知っていますか」と尋ねたところ、全体の69.7%が「知らない」と回答しました。
もし親に介護が必要となったらどうすれば良いのか、親族間において十分なコミュニケーションが取れていない人が多いのです。
また日本では戦後一貫して少子化傾向が続いてきました。第二次世界大戦前は合計特殊出生率が4~5を記録していましたが、子どもが多いということはそれだけ兄弟姉妹が多く頼れる親族が多かったわけです。
しかし少子化社会では、育児も介護も一人で背負わねばならない状況が増え、さらに仕事との両立を求められるとなると、心身への圧迫感は相当なものになります。
晩婚化、晩産化、そして社会の少子化などが複雑に絡み合うことで、「ダブルケア」の現象は生まれてきたわけです。
ダブルケアの負担を解決する方法は?
ダブルケアによる負担は「体力」「精神」「金銭」
ダブルケアの経験がある人に「ダブルケアにおいてどのようなことが負担に感じるか」を複数回答で尋ねたところ、全体の80.5%が「精神的につらい」、73.2%が「体力的につらい」、69.5%が「経済的負担」を挙げています(ソニー生命保険などが行った調査より)。
心身への負担のこと、お金のことで困難に直面する人がやはり多いわけです。

内閣府の「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」によると、2016年時点でダブルケアに直面している25万人のうち、女性は約17万人、男性は約8万人で、女性の方が2倍以上も多くなっています。
そしてダブルケアを行っている女性に「周囲からの手助け状況」を尋ねたところ、配偶者や兄弟姉妹などから「まったく手伝ってもらえない」と回答した人の割合が、男性よりもかなり高くなっているのです。
ダブルケアに直面してその負担を1人で抱え込んでいるのは、男性よりも女性に多いのが現状です。
女性に負担をかけているこうしたダブルケアは、就業状況に与える影響も少なくありません。
同じく内閣府の調査によると、ダブルケアをしながら就業している人(有業者)の割合は、男性の場合は9割以上なのに対して女性の場合は5割以下。
さらにダブルケアに直面したことで「業務量・労働時間を減らした」という人は、男性が約2割なのに対し、女性は約4割に上っています。
親族とのコミュニケーションがダブルケア攻略の鍵に
内閣府の同調査によれば、ダブルケアに直面しても「業務量・労働時間を変えなくて済んだ」という人にその理由を尋ねたところ、「育児サービスを利用できた」と回答した人は男性23.8%、女性38.2%、「病院・老人福祉施設などを利用できた」と回答した人は男性31.6%、女性29.2%でした。
育児・介護サービスを活用できるか否かが、ダブルケア負担減少におけるカギになるでしょう。
また、「ダブルケアが行う者が行政に充実してほしいと思い支援策」について尋ねたところ、男女とも「保育施設の量的拡充」「育児・介護の費用負担の軽減」「介護サービスの量的拡充」を挙げる人の割合が高いです。
今後、ダブルケア負担者の肉体的負担・金銭的負担の緩和をいかにして行うかは、行政側が取り組むべき今後の大きな課題です。
今回はダブルケアの問題について考察してきました。
ダブルケアを乗り越えるうえでは、介護・育児サービスに加え、親族を頼ることも重要。
今後ダブルケアに直面することが予想されるなら、早いうちから介護の準備の一環として、親族とコミュニケーションをとっておくことも大事かもしれません。
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2020年9月7日 制定