厚労省、介護福祉士試験の受験者数半減についてアンケート
試験を諦めた理由TOP3がすべて実務者研修がらみ
「介護福祉士の国家試験を受験する人が大きく減少したのはなぜか」。厚生労働省の委託によって昨年度実施されたアンケート調査の結果が、先日公表されました。
それによると、介護福祉士の資格をまだ保持していない人(調査対象者の48.5%)のうち、「受験を目指したものの、途中でやめたことがある」と答えた人は半数近い46.3%に上っています。
また、その理由を尋ねたところ、「実務者研修を受講するのに必要な費用負担が大きかった」との回答が52.7%を占め最多となり、以下「実務者研修のため通学して講義・演習を受けるのが負担だった」が44.9%、「実務者研修に必要な研修時間が長い」が44.0%と続きました。

介護業界では、介護福祉士の受験者数が激減した理由として、「実務者研修が義務化された影響が大きい」との見方が大半を占めています。
今回の調査結果でも、受験をやめた理由として実務者研修の費用負担や通学負担などが高い割合を占めており、そうした見方の正しさが改めて裏付けられる形となったわけです。
今回公表されたアンケート調査は、厚生労働省が民間のシンクタンクに委託するかたちで昨年の8月に実施されました。
全国約8,000ヵ所の介護施設・事業所、および約3万2,000人の介護職員が対象となり、29.5%の施設と事業所、25.6%の職員から有効回答を得ています。
2017年の介護福祉士試験の受験者数、前年度と比べて半分に
厚生労働省の資料によると、介護福祉士の受験者数は、第1回目の試験(1989年実施)では1万1,973人(合格者数2,782人、合格率23.2%)でした。
その後、受験者数は次第に増えていき、第12回の試験(2000年実施)では5万人を突破して5万5,853人(合格者数2万6,973人、合格率48.3%)となり、第18回の試験(2006年実施)では10万人を超えて13万34人(合格者数6万910人、合格率46.8%)まで増加。
第28回(2016年実施)の試験における受験者数は、15万2,573人(合格者数8万8,300人、合格率57.9%)となっていました。
ところが、2017年1~3月に実施された第29回の試験では、受験者数は前年比7万6,250人減となる7万6,323人となり、前回の試験から半数近くも減ってしまったのです。
受験者の合格率は72.1%(合格者数5万5,031人)と高かったものの、前回よりも合格者数は3万3,269人も減少。
人材不足が続く介護業界で、介護福祉士を確保できていないことを問題視する声も高まりました。
介護福祉士試験の受験者数が半減した2つの理由
実務経験ルートにおける実務者研修が大きな足かせに
今回発表されたアンケート調査では、介護福祉士の受験をあきらめる大きな要因として、「実務者研修の大変さ、負担の大きさ」が改めて浮き彫りにされる結果となりました。では、この実務者研修とはいったいどのように行われるのでしょうか。
実務者研修とは、高度な介護サービスを提供するために、介護現場の実情に合った実践的な知識・技術の習得を目的とした研修のことです。
「介護職員基礎研修」「ホームヘルパー1級」に相当するもので、研修を修了するには、合計450時間の講義や演習を受講する必要があります(「介護職員初任者研修」「訪問介護員研修」を修了しているかどうかで、受講すべきカリキュラムは変わります)。
介護職員として働きながら通学や通信で学ぶとなると、相当の日数がかかることは避けられません。
介護福祉士試験の第28回までは、実務経験が3年以上あれば受験資格を得ることができました。
いわゆる「実務経験ルート」と呼ばれる介護福祉士の資格取得方法です。
しかし、制度改正によって、第29回試験から、この実務経験ルートによる受験資格に「実務者研修」の受講が義務化されました。
厚生労働省としては介護福祉士の「質」の強化を狙っての制度改正でしたが、今回のアンケート結果でも明らかなように、受験者数減少の原因となっているのが現状と言えます。
実務者研修費用の助成金があることを知らない
ただ実務者研修の費用面に関しては、「介護福祉士実務者研修受講資金貸付制度」という都道府県の福祉協議会による助成制度があります。
この制度を利用することで、実務者研修の受講費用や参考図書の購入費用について、最大20万円まで貸付を受けることができるのです。
その後、介護福祉士の資格を取得し、2年間の介護業務に従事することで返還は全額免除されます。
実務経験ルートでの受験を目指す人にとっては、心強い制度だと言えるでしょう。
しかし、今回発表されたアンケート調査結果によれば、この国の貸付制度のことを「知らない」という人は76.4%にも上り、「知っている」人23.6%の中で、実際に活用したことのある人も18.5%のみとなっています。

さらに、貸付制度があることを職員に教えている介護施設や事業所は34.6%しかなく、残りの65.4%の施設・事業所では、職員に対する周知を行っていないこともわかりました。
この結果を受けて厚生労働省は、調査の総括として「施設・事業所による職員への情報提供が不十分」であることを指摘し、貸付制度を周知・普及していくことも重要であると述べています。
介護福祉士の人数を増やす方法は?
資格を持っていてもメリットがほぼない現状
介護福祉士の資格を持つことによる利点のひとつが、給与のアップと言われています。
しかし、株式会社ウェルクスが介護福祉士に対して行ったアンケート調査によれば、「介護福祉士の手当はいくら支給されているか」という問いに対して、回答の半数近くが「0円~5,000円」。
介護福祉士の資格を持っていても、給料がほとんど変わらない職員は多いのです。
また、「介護・医療の知識が増えた」ことなどによって、全体の約8割の人が介護福祉士を取得して良かったと答えてはいるものの、「さらに取得したメリットを感じるには、どうなればよいですか」との問いに対しては、ほとんど人が「給料アップ」と回答。
また、約8割の人が、介護福祉士の資格を持っていても「業務内容に変化なし」とも答えています。

見合った給料をもらっているという実感が持てず、さらに任される業務にも何ら変わりがないとなると、介護福祉士の資格取得を目指す動機は持ちにくく、このままでは受験者数の増加もそれほど見込めないのではないでしょうか。
資格取得による給与・待遇の改善が一番の要望
厚生労働省は昨年、介護職にキャリアパスを導入し、介護福祉士を「チームリーダー」として介護現場の中核的存在と位置付ける方針を決定しました。
しかし、こうした仕組みを導入しても、待遇・賃金がより具体的な形で向上しない以上、介護福祉士の増加は難しいでしょう。
今回公表された厚労省の委託によるアンケート調査では、「介護福祉士の国試を受験する人を増やすにはどうすればよいか」について施設・事業所に尋ねています。
それによると、最も多かった回答が「資格手当を付与することによる処遇の改善」。
ほかにも、「介護福祉士をキャリアパス上で明確に位置づけること」「実務者研修に参加しやすいようにシフトの調整を行う」などが挙げられています。
政府あるいは施設・事業所は、個人の意欲・やりがいなどに頼らず、給与アップや待遇の改善など「介護福祉士の地位向上」を今後さらに図る必要があるでしょう。
今回は、介護福祉士試験の受験者数が減少している現状について取り上げました。介護福祉士の資格をめぐっては、受験者増の方法を含め、今後も議論が続きそうです。
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2020年9月7日 制定