高齢ドライバーによる事故、依然として減らず…
認知症の疑いがある高齢者を警察が現行犯逮捕
8月6日配信のTBSニュースによると、認知症の疑いが強いにもかかわらず、周囲の説得をはねつけ、車の運転を続けていた69歳男性が、逮捕されました。
この男性は10年も前から、車による帰宅途中に帰り路がわからなくなるなどの認知症状が現れており、周囲ともしばしばトラブルになっていたといいます。
この69歳男性は、運転を止めるように家族が注意しても一切聞かず、先月、車検更新のために自動車販売店を訪れました。
そのとき店員に向かって、明らかな認知症を疑わせる言動があったといいます。
そのため、販売店が警察に相談し、警察も運転を止めるよう説得しました。
しかし、男性はまったく応じなかったということで、警察もやむをえず、男性が自宅から車で出た際、車検切れのままで運転したという疑いで現行犯逮捕したのです。
その後、この69歳男性は医師の診察を受けることとなり、認知症と診断されました。
しかし、現在も自分が認知症であることは否認しています。
2017年に免許を取り消された人は前年の3倍に
警察がここまでして高齢ドライバーの運転を危険視しているのは、やはり高齢者による運転事故が多いからでしょう。
頑なに免許を返納しない高齢者について「免許を取り上げるべきか否か」という議論が尽きませんが、そうした状況の中、警察も思い切った対応をせざるを得なくなったとみられています。
その対応のひとつとして、昨年3月に改正道路交通法が施行されました。
75歳以上のドライバーの認知機能検査を強化した内容となりましたが、この検査を今年3月末までの1年間に、全国で210万5,477人が受け、最終的に免許を取り消されたのは1,892人に及びました。
この数字は、法改正前の約3倍という数字になっています。

2016年における交通事故の死亡者数は3,904人で、これは前年比でみると-213人、-5.2%という数字となり、むしろ死亡者数自体は減っています。
ところが、死亡事故を起こした高齢者の割合は年々上がっており、2016年は過去最高の54.8%となりました。先述の法改正による検査で「認知症の恐れがある」との判定を受けたのは5万7,099人に及びます。
高齢者が運転を止めない背景とは?
認知機能検査は具体的に何をするのか
認知機能検査は、時間の見当識、手がかり再生、時計描画という3つの項目に関して、検査用紙に記入して記憶力や判断力を判定します。
具体的には、検査時の年月日、曜日、時間を回答する「時間の見当識」、イラストを記憶し、課題を行った後で、最初に記憶したイラストを回答する「手がかりの再生」、イラストを記憶し、課題を行った後で、最初に記憶したイラストを回答する「時計描写」で構成されます。
その後、採点が行われ、「記憶力・判断力が低くなっている(=認知症の恐れがある)」「記憶力・判断力が少し低くなっている(=認知機能低下の恐れがある)」「記憶力・判断力に心配がない(=認知機能低下の恐れがない)」と判定が出ます。
もし「記憶力・判断力が低くなっている」との結果であった場合は、認知症の恐れがあるとして、警察から連絡が入ります。そして臨時適性検査(専門医による診断)を受けてもらい、医師の診断書の提出が求められます。
もしそこで認知症の診断が出た場合、聴聞などが行われた後、免許が取り消されることがあるのです。
また改正法によって、75歳以上は、高齢者講習を受けなければ免許の更新ができないことになりました。これは、記憶力・判断力に合わせて行われる講習で、検査の結果に基づいて、車を運転する際にアドバイスをもらい、運転時の映像に基づいて個人指導も行います。
そうした検査の導入の成果というべきでしょうか。運転免許の自主返納は、昨年だけで42万2,033件(暫定値)もありました。これは前年より7万6,720件増となっており、75歳以上が実に約6割を占めています。
80歳以上の高齢者で運転に自信を持っているのは7割以上
大阪大学大学院にある人間科学研究科の教授である佐藤眞一氏と、色彩福祉研究所の研究員である島内晶氏の論文「高齢者の自動車運転の背景としての心理特性」によると、高齢者が運転を止めない大きな理由として、「自分の運転に自信を持っている」ことを挙げています。

同論文では、心理学において、自分がどんな人間かを主観的な自己認識のことを「メタ認識」と呼ぶことに触れたうえで、「自分は運転が上手だ」「自分は優良運転者だ」という認識を高齢者がしやすいということを述べています。
こうした「メタ認識」を持った高齢者が、周囲の意見に耳を傾けなくなり、運転を続けるわけです。自分でルールを作り出したり、自分は悪くないという感情に流されたり、事故さえ起きなければ構わない、他人に気を配らないといった自己認識にも繋がってきます。
同論文が指摘する「メタ認識」は、高齢者が日常生活を送るうえで、ポジティブな意識に繋がり、それを持つのは必要不可欠なことです。しかし、ドライバーとしてはかなり危険な自己認識といえるかもしれません。
高齢ドライバーのために周囲ができることは?
運転を止められなかった監督義務者の責任は大きい
ところで、ここまで読んだあなたが、いつまでも運転をやめない自分の親に対して、「どうせ次の免許更新の時に落とされるし、それまでかな」と考えているとしたら要注意。
なぜなら、それで事故を起こした場合、損害賠償が直接あなたのもとへ請求される恐れがあるからです。
事故を起こした加害者本人が、認知症などによって責任能力なしと認められたとき、被害者は加害者本人でなく「監督義務者」に損害賠償の請求ができます。
過去の判例を紐解いていくと、同居している場合、監督義務者と法的に受け取られる可能性は、けっして低くはありません。
「自動車保険には、法律で定められた強制加入の自賠責保険があるから大丈夫」と思ったら大間違い。自賠責には上限があり、被害者が死亡した場合は、一人につき3,000万円までしか保険が下りない決まりとなっています。
高齢の運転を止める方法は?
前章で、「メタ認識」を持った高齢者は、実感年齢と実年齢のギャップから、自信の運転に自信を持っていることを述べました。このような認識を持っている高齢者が、周りの助言なくして自ら運転をやめるのは、基本的には考えづらいです。
なぜなら、高齢者は実感年齢と、実年齢(暦年齢)のギャップが大きいから。現に、掲載のグラフをみても、還暦を迎える高齢者でも、その実感がないと答える高齢者は多いのです。

もし、自分の親や親戚の運転を止めさせたければ、車のキーを預かったり、車を別の場所に移動させたり、バッテリーを外して動かなくしたり、廃車にしたりといったある種の強硬手段が検討されることになります。
しかし、多くの専門家の指摘によると、免許や車を取りあげられたことで、高齢者が自信を喪失して、うつになったり、軽度の認知症が重度になってしまうケースが少なくないというので、注意が必要です。
かと言って、「認知症だから運転」「ボケてるから止めて」といった自尊心を傷つける言葉は、高齢者を頑なにする結果に繋がるので禁物と言われています。
むしろ、「事故に遭うと心配だから車の運転は引退しよう」など、本人のことを気遣う言い方が勧められます。よりスムーズにことを進めるには、家族だけではなく、周囲の力を借りることが肝要です。
主治医やケアマネージャーの助言を、本人に向けて求めるなど、外堀から丁寧に固めていくことが定石と言えます。あるいは、ドライバーを卒業するお祝いのようなものを開くなどして、アフターケアにも気を遣うことが必要です。
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2020年9月7日 制定