厚生労働省が新たな混合介護の指針を通知
訪問介護と通所介護のルールが明確化された
9月28日、厚生労働省は訪問介護と通所介護における「混合介護」のルールを改めて整理し、都道府県などに通知しました。
混合介護とは、要介護認定を受けた人が、自己負担1~3割で利用できる介護保険適用内サービスと、全額負担で利用する介護保険適用外サービスの両方を利用すること(事業者側にとっては「提供すること」)です。
今回の厚生労働省の通知では、まず介護事業者側に対して、介護保険適用外サービスの運営方針、目的、料金などを別途設定し、利用者に文書を通して丁寧に説明した上で、十分な同意が必要であることを改めて明記されました。
また、契約前後に利用者担当のケアマネージャーに介護保険適用外サービスの内容と提供時間を知らせ、介護保険適用内サービスとは費用請求・会計を分けて行うよう求めています。
さらにケアマネージャーに対しても、介護サービス事業所から報告のあった介護保険外サービスについて、ケアプランの「週間サービス計画票」の中に記載するように要請しました。
混合介護に対しては、遵守すべきルールが国によって明確に定められていないため、自治体ごとに解釈や取り扱い方が異なるのが現状です。
現場からは「制度上、グレーな領域になっている」との不満の声が上がっていました。
こうした声を受け、政府は昨年6月、「規制改革実施計画」を通して一覧性と明確性のある指針を示すよう厚生労働省に指示。今回の通知は、それを受けて行われたわけです。
混合介護で介護の負担を大きく軽減できる
混合介護には、介護士側(サービスを提供する側)と被介護者側(サービスを受ける側)それぞれにメリットがあります。

まず介護士側にとっては、介護保険適用外サービスを提供することで介護事業者が介護報酬以外の形で収入を得ることができ、それにより介護士への待遇改善・給与アップが期待できる、という点が挙げられるでしょう。
介護業界では人手不足が続いていますが、待遇面・給与面で改善がみられれば、人材確保が容易にもなります。また被介護者側にとっては、介護事業者側にお願いできることが増え、生活の質を高めやすくなるという点が大きなメリットです。
さらに、介護保険適用のサービスだと、提供の対象・範囲が「要介護認定者本人に関わる限り」という形で厳密に規定されており、被介護者とその家族を総合的にサポートしてくれるサービスの利用は難しい面がありました。
しかし、混合介護によって、被介護者の家族をも対象とする広範囲・高品質のサービスを受けられるようになり、介護者の介護負担を減らせるようになります。
特に介護者が仕事と介護の両立をしている場合、保険外と保険内のサービスを計画的・合理的に組み合わせれば、介護者の負担を大きく減らし、介護離職のリスクを回避しやすくなるでしょう。
生活により密着した介助も認められるように
訪問介護で保険適用外サービスが可能になる
今回の厚生労働省による混合介護のルール通知は、「訪問介護」と「通所介護」に関して行われました。
まず訪問介護については、介護保険適用では提供できないサービス提供ができるようになり、例えば保険適用のサービス利用前後あるいは提供の合間に、ペットの世話や庭の草むしりなどの保険適用外サービスが利用できるようになります。

また外出支援についても、通院時の乗降介助などの保険適用のサービスに続けて、介護報酬の算定対象とはならない院内介助や、自宅への帰り道に利用者の趣味や娯楽のために立ち寄った場所での介助などが認められるようになりました。
さらに、保険適用のサービス提供前後あるいは提供の合間に、同居する家族の部屋の掃除や、家族のための買い物代行なども行えます。
ただし、利用者本人の食事と同居家族の食事を同時に調理するなど、訪問介護と保険適用外のサービスを同時一体的に提供することは認められていません。
買い物や美容室への外出支援も可能に
これまで通所介護では、保険適用と保険適用外とを明確に区分できることから、理美容サービスや併設する医療機関での受診などが介護保険適用外のサービスとして認められていました。
今回の新たな通知では、理美容サービスをはじめ、事業所内で行われる健康診断、採血、予防接種、さらに利用者の希望によって外出する際の個別同行支援、物販や移動販売、レンタルサービス、買い物の代行サービスなども、通所介護で提供できる混合介護に含まれています。
なお健康診断、採血、予防接種については、医療法をはじめとする関係法規を守ることが前提で、無資格者によるマッサージの提供は禁止されています。
また通所介護事業所の職員が外出時の同行支援をする場合、同行中は職員が通所介護に従事する時間に含まれなくなるので、職員・事業者側は注意が必要です。
さらに物販や移動販売、レンタルサービスについては、認知機能が低下している利用者に高額な商品の販売は行わないようにすること、なども今回の通知に盛り込まれています。
混合介護解禁で2つの問題点が噴出
混合介護が利用できるのは富裕層ばかりとの声も
混合介護にはメリットが多い一方、解禁されることで生じる問題点も少なくありません。まずは、混合介護における介護保険適用外サービスは全額自己負担となるので、利用者の介護費用が増えてしまう点が挙げられます。
そのため、混合介護は一部の富裕層しか利用できないのではないか、と指摘する声も多いです。
例えば富裕層の世帯は、訪問介護を利用する際、「要介護者分の洗濯だけでなく家族分の洗濯もしてもらう」、あるいは「要介護者の部屋だけでなく、家族の部屋の掃除もしてもらう」といった混合介護を利用することで、家族介護者の身体的負担を減らせます。
しかし経済的に余裕のない世帯だと、介護保険適用外のサービスを利用できるだけの費用負担ができないため、家族介護者の負担を富裕層ほど減らせません。
混合介護が普及するにつれ、すべての人に平等に生活支援・自立支援のサービスを提供するという介護保険の理念が崩れてしまう恐れがあるわけです。
さらに、混合介護によって保険外のサービスが提供されるようになると、悪徳業者による利用者の囲い込み、さらには認知機能が低下した高齢者に対する不適切なサービス(不当なほど高額、本人に必要ないサービス)の押し付けが行われる恐れもあります。
ケアマネージャーの負担軽減策が必要
また今回の混合介護解禁の通知では、介護保険適用外のサービスをすべて週間サービス計画表に盛り込むよう要求するなど、ケアマネージャーが行うべき複数の新たな業務についても明記されました。
しかしケアマネージャーは、医療保険や介護保険における住宅改修など介護以外のさまざまな専門知識が要求され、責任と負担は年々増え続けているのが現状です。

その上、今回の通知にあるように介護保険適用外のサービスまでチェック、管理せねばならないとなると、さらに業務の繁忙さが増すことになります。
忙しい割には給与が少ないということもあってケアマネージャーのなり手不足・人材不足が続いている中、さらに仕事量を増やす今回の通知は、ケアマネージャーの不足に拍車をかけることになりかねません。
現在既に、介護支援専門員(ケアマネージャー)資格の受験者数、合格者数が増えていない状況が続いています。ケアマネージャーが足りなくなると介護の質は低下するので、今回のような通知を行うならば、人材減少を食い止める策も併せて必要でしょう。
今回は混合介護のルールについて取り上げました。混合介護をケアプランに組み込ませるためには、ケアマネージャーの知識と判断力が一層必要になります。
混合介護を希望する利用者に対して適切なケアプランを提示できるかの手腕がますます問われることになるでしょう。
しかしそれだけケアマネージャーの業務量・負担が増加することにもなり、なり手不足の深刻化も懸念されます。
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2020年9月7日 制定