年々、高齢者の運動能力は上昇している
2017年の運動能力調査で高齢者の体力が過去最高を記録
スポーツ庁は10月7日、2017年度体力・運動能力調査の結果を公表しました。成績の合計点では特に高齢者が向上傾向にあり、70歳以上の男性と65歳以上の女性では過去最高を記録。高齢者の体力、運動能力の充実ぶりが目立つ結果となりました。

体力・運動能力調査は、東京オリンピックが開催された1964年度以降、毎年度実施され、1998年度に調査項目を変更して現在に至っています。
1998年度以降、多くの年代で向上傾向にありますが、特に65歳以上の高齢者は健康志向の高まりなどが影響し、60点満点で5~6点も伸びました。
今回の調査は、2017年5月~10月にかけて、6歳から79歳までの約6万5,000人を対象に実施され、反復横跳びや握力など最大で9項目について結果を得点化。
70歳以上の年代においては男女とも過去最高を更新し、「開眼立ち」(片足立ちの持続時間の計測)や「上体起こし」(腹筋の筋力チェック)などほとんどの項目において向上していました。
さらに運動を週1日以上する人の割合は、65歳以上の全世代で6割を超える結果となっています。
運動習慣がある人は生活の充実度が高い
65歳以上については6項目、60点満点で結果が出され、「上体起こし」と「6分間歩行」(6分間の歩行距離を測定する)は各年齢層(65~69歳、70~74歳、75~79歳)の男女で向上が見られました。
合計点の平均は75~79歳の男性では36.28点、女性では36.03点となり、どちらも4年連続で新記録を更新しています。
1998年度からの20年間で、6点ほど向上しています。さらに70~74歳の男女および65~69歳の女性においても、過去最高の合計点となりました。65~69歳の男性は、過去2番目の成績となっています。
また今回の調査では、高齢者の運動習慣・歩行能力と生活の充実度に関連性があることも示されました。
現在の運動の実施状況別に、休みなしで歩行できる時間に関する回答割合を見ると、男女とも「運動習慣がある人ほど、長時間歩ける人の割合が多い」ことが明らかにされています。
つまり、歩行能力と生活の充実度との関連性を見た場合、男女ともに「長く歩ける人ほど、生活の充実度が高い人の割合が多かった」のです。
スポーツ庁は今回の結果を受けて、「高齢者が健康を強く意識して、ウォーキングなどの運動を実施する機運が高まっている」と分析。高齢者の健康志向が、運動能力の向上につながっているとの見解を示しました。
高齢者になるほど運動量・回数が増えるのはなぜ?
老化を意識し、病気を予防する意識が高まる
2014年に厚生労働省の委託によって行われた「健康意識に関する調査」によれば、「健康にとって、最もリスクになること」という質問に対し、65歳以上の37.7%が「生活習慣病を引き起こすような生活習慣」と回答しています。
さらに「普段から健康に気を付けるように意識していますか」との質問に対しては、65歳以上の69.1%が「健康のために積極的に行っていること、特に注意を払っていることがある」、および「健康のために生活習慣に気をつけている」と回答しています。
20歳~64歳で同じ回答をしている人の割合は50%未満となっており、こうした調査結果からも、高齢者の健康意識が高いことがわかるでしょう。
また、内閣府が60歳以上を対象に行った「平成26年度高齢者の日常生活に関する意識調査」では、「自分が高齢者だと感じる時」について尋ねたところ、「記憶力が変化したと感じた時」あるいは「外見が変化したと感じる時」よりも、「体力が変化したと感じた時」の回答が最も多い(回答者の58.0%)結果となりました。
高齢者が老いに伴う衰えを認識するうえで、認知機能や外見ではなく、特に体力の面を重要視していることがこの調査結果から伺えます。
週3日以上の運動は生活習慣病のリスクを低減する
また、体力の維持に気を使う高齢者の姿は、文部科学省が2013年に行った「体力・スポーツに関する世論調査」からも読み取ることができます。
この調査によると、高齢になるほど「1週間あたり3日以上(年間151日以上)」スポーツに取り組む人の割合が高いという結果が出ているのです。

60~69歳だと42.4%、70歳以上だと53.6%と半数以上の高齢者が週に3日以上の頻度でスポーツを楽しんでおり、30~39歳の12.4%、40~49歳の17.4%と比べても、高齢者が意欲的にスポーツに取り組んでいることがわかります。
実際、週に3日以上運動することで、肥満・メタボリックシンドロームを予防し、高血圧・糖尿病を防ぐというデータもあるので、スポーツは高齢者の長寿に貢献していると言えるでしょう。
また、総務省統計局が行った高齢者調査(2012年)によれば、高齢者が行っているスポーツの種類として最も多いのが「ウォーキング・軽い体操」(38.3)%です。
以下多い順に、「登山ハイキング」「機具を使ったトレーニング」「ゴルフ」「サイクリング」「釣り」「水泳」という結果でした。
日本経済が縮小するなか、レジャーや健康食品などの健康関連市場はシニア層の消費者を中心に拡大しおり、今後も高齢者の健康志向は高まると見られています。
無理な運動がもたらす「高齢者の突然死」とは
「運動しすぎ」で心筋梗塞のリスクがアップする!?
運動・スポーツは健康に対してプラスの効果があるのは間違いないですが、体の状態を考えずにやり過ぎるのは禁物です。
高齢者の運動中の突然死の発生数は、最も多いのがゲートボールで(30%)、次いでゴルフ(27%)、ランニング(12%)、登山(7%)、水泳(5%)の順です。

例えば、高齢になるほど動脈硬化が原因で血管のしなやかさが失われやすくなります。いわば血管も老化するのであり、そんな状態で過度な運動をすると、突然心筋梗塞や脳卒中などの重篤な病気を発症しかねません。
男性の場合は女性よりも運動中の心室不整脈による突然死の発症率が9割高いというデータもあります。血圧が高めであるシニアにとっては、運動不足だけでなく、運動のし過ぎも健康を失うリスクにつながると言えるのです。
またゴルフや、山登りも、高齢者だからこそ注意せねばなりません。老いに伴い体力が低下していることや、前の晩が睡眠不足だったことなどを考えずに無理をすると、脱水状態に陥りやすくなります。
さらにコンディションが良くない状態でスポーツをすると、自律神経のバランスが崩れやすくなり、冠動脈がきちんと拡張しない恐れも出てくるので注意せねばなりません。
冠動脈がきちんと拡張しなくなると、そこに運動中の発汗・脱水によってドロドロになった血液が流れ込むので、血管が詰まりやすくなり、心筋梗塞を引き起こしやすくなるのです。
適切な運動量は「最大心拍数」でわかる
高齢者がスポーツ・運動をするうえで大事なのは、「自分の適正な運動量を知ること」と「当日のコンディションに合わせて、運動量を調整すること」です。
適正な運動量を知るための指標としては、「最大心拍数」や「最大酸素摂取量」などがあります。最大心拍数とは最も激しく体を動かしたときの心拍数で、「220から年齢を差し引いた数値」で計算されるのが一般的です。
例えば65歳だと、「220-65=155回」、75歳だと「220-75=145回」になります。
ただ高齢者の場合は、最大心拍数の50~60%を目安にして運動すると、体に無理をかけずに済むでしょう。
運動中の心拍数は活動量計を装着すればわかりますが、ない場合でも「話ができるほどの運動」を心掛ければ、無理のない運動量になります。
また睡眠不足や疲れを感じる場合、あるいは気温が高いときなどは、運動をやめる、もしくは控えることが必要です。
「運動は毎日続けないと意味がない」という考え方は、体調不良時でも無理な運動をしようとする傾向を生むので危険です。
自分にとって適度な運動・頻度が、高齢者には大切になります。
今回は、「2017年度体力・運動能力調査の結果」を皮切りに、高齢者の運動について考えてきました。健康維持のために運動・スポーツは大事ですが、過度に取り組むことは厳禁です。適度に楽しみながら取り組むことが、長寿につながります。
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2020年9月7日 制定