ACPとは患者本人と家族、医療チームによる終末期の話し合いのこと
厚労省、ACPの愛称を「人生会議」に決定したと公表
11月30日、厚生労働省は、人生の最終段階で受ける医療やケアについて本人や家族、医療チームが繰り返し話し合いを行う「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」の愛称を、「人生会議」に決定したことを公表しました。
今後は医療や介護の現場で、「人生会議」という言葉が頻繁に使われるようになるかもしれません。また、発表が行われた11月30日を、「いいみとり(看取り)」の語呂合わせから「人生会議の日」と定められました。
今年の8月~9月にかけて、厚生労働省はACPの愛称を全国から募集。集まった応募の総数は1,073件となりました。
選考は同省が選んだ「ACP愛称選定委員会」によって行われました。
「人生会議」を応募したのは、静岡県浜松市で働く女性看護師。
愛称の決定を受け、ネット上では「イメージがしやすい」「覚えやすい」と高く評価する声が多い一方、「漠然とし過ぎている」「やや違和感がある」といった声もみられます。
専門家と話し合い患者本人が望む最期を目指す
ACPとは、将来に起こる可能性がある病状の変化に備えて、本人や家族、医療チームが今後の治療方針について話し合うプロセスのことを指します。
ACPは、まず医療従事者から患者本人へ説明が行われます。その後、患者と医療・ケアチームで十分な話し合いを行い、患者本人の意思決定を軸としながら、人生の最終段階における医療・ケアのあり方を決めるというのが原則です。
欠点としては、時間の経過や心身状態の変化、医学的評価の変更などによって本人の意思が変化することも考えられるので、患者が自らの意思をその都度示し、伝えられるよう支援する必要があることです。

また、場合によっては患者が自らの意思を伝えられない状態になることもあり得るため、話し合いは家族などを含めたうえで、繰り返し行わねばなりません。
この話し合いに先立って、本人は家族や親族といった信頼できる人を、「自分の意思を推定する者」としてあらかじめ定めておくことも重要です。
もし、話し合いの中で、適切な医療・ケア内容の合意が得られない場合については、複数の専門家からなる話し合いの場を別途設けて検討を行い、適宜助言を受けることも必要になります。
いずれの場合も、話し合われた内容はすべて文書にまとめておくのが原則。法的な規定こそありませんが、ACPにおいて作成される書類は、医療施設・介護施設にとって内容通りに行われるべきものとしての効力を持ちます。
終末期における意思決定の難しさがACP登場の背景にある
事前指示書だけでは患者の意思を伝えづらい
ACPの始まりとしてあるのは、「終末期において約70%の患者は、自分の医療・ケアに関する意思決定ができない」という背景からです。
「もし事前に病状の認識を確かめて、あらかじめ意思を理解しておけば、仮に本人が重体となった場合でも、どのような医療・ケアを行えばよいのか判断できるのではないか」という思想を元にして、ACPの考え方は生まれたわけです。
この思想に基づいてまず誕生したのは、AD(アドバンス・ディレクティブ)という概念でした。ADは日本語で「事前指示書」と呼ばれ、将来自分が判断能力を失った際に備え、自分に対して行われる医療行為について前もって意思表示しておくことです。
1970年代のアメリカではADが国を挙げて推進されましたが、その後に行われた比較研究によって、ADを導入しても患者の死亡日数、患者・家族の満足度に差異がなかったことが明らかにされ、患者のQOD(クオリティ・オブ・デス:死の質)の観点から見れば、有効ではなかったことが証明されたのです。
ADが有効でなかった理由としては、「医療知識を持たない患者が将来を予想して計画を建てることは困難であること」「事前指示書を作成したときの判断がずっと同じとは限らない」「代理決定者(家族など)には、本人がなぜそのような判断をしたのかわからない」「法律の観点から、ADの内容をそのまま医療・ケアの場で活かせない場合がある」などが言われています。
そこでADに代わって登場したのがACPです。
ACPでは、本人・代理決定者・医療者が、本人の意向や大切なことをあらかじめ「話し合うプロセス」が重視されます。
そしてそのプロセスを共有することで、本人がどう考えているのか代理決定者や医療者は深く理解できるのです。
この点が、指示書を残すだけのADとは大きく異なります。
延命治療を望まない人が9割弱!QODに高い関心が
今や日本は超高齢社会に突入しており、それに伴って毎年亡くなる人の数も増加しています。
厚生労働省の人口統計によれば、2003年に史上初めて年間死亡者数が100万人を突破し、2016年時点で約131万人、2039年には約167万人に達する見込みとのこと。
日本はまさに「多死社会」へシフトしつつあると言えます。
年間死亡者数が増え続ける中、死に対する考え方・死生観も多様化しているのが現状です。内閣府が「最期を迎えたい場所」を尋ねるアンケート調査を行ったところ(2012年)、最も多かった回答は「自宅」(全体の54.6%)でした。
つまり、「QOD(クオリティ・オブ・デス)」を重視して、人生最後の時間を住み慣れた場所である自宅で過ごしたいと考える人が増えているのです。

また、「死期が近くなった場合も延命治療を受けたいか?」というアンケートに対して、全体の91%もの人が「受けたくない」と回答していることも、QODに重きをおいている人が多いことの現れと考えられます。
このような社会状況の中、QODの向上に関係するACPは、極めて重要な概念になりつつあるわけです。
ACPについて考えるためには、知名度を上げる必要性が
医師や看護師にもACPを知らない方が多い
ところが、一般国民だけでなく相談員として関わるはずの医者や介護職員においてさえ、ACPに対する認知度が低いのが現状です。
厚生労働省の「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(2017年)によれば、ACPについて「よく知っている」と回答した人の割合は、「医者」が22.3%、「看護師」が19.9%、「介護職員」が7.6%、「一般国民」は3.3%という結果でした。

一方、ACPの概念について説明をしたうえでその賛否を尋ねたところ、医者と看護師、介護職員、そして一般国民のすべてにおいて「賛成である」が過半数を突破。
また、一般国民に人生の最終段階(終末期の治療方針や治療を受ける場所など)について問うアンケートをしたところ、さまざまな意見が飛び交っており、一様ではない回答結果が得られています。
この調査結果からわかるのは、日本国民はACPの考え方に対しては賛成派が多く、さらに死生観も人によって異なるということ。
そのため、専門家を交えた相談をして最後のあり方を決めるACPへの潜在的なニーズ・必要性は、大きいと考えられるでしょう。国民にACPについて考えてもらうには、医療・介護関係者を含め、社会全体の中で認知度を上げる必要があります。
自らの望む死を叶えるために「人生会議」は不可欠
ACPについて話し合うことは、自分の最期について考え、相談することなので、辛い作業と思われるかもしれません。
しかし、相談の有用性についてアンケートを行ったところ、回答者の90%以上が「相談してよかった」と答えている調査結果もあります。
自分の望む死がどのようなものかを周囲の人に伝え、共有することは、望まない死を迎えないようにするうえで重要なことです。
ただ、患者が自ら望む最期を実現するためには、国民に対してもそうですが、まずは医師や看護師、介護職員といった専門職のACPに対する認識・理解度を高めることが必要です。
そのためには、国・厚生労働省が主導して普及・啓発活動をさらに進めていくことが求められます。
今回はACPについて考えてきました。ACPの愛称をわかりやすい「人生会議」と変えることで、認知度を高める一定の効果は期待できるでしょう。こうした周知活動を、今後さらに継続する必要があります。
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2020年9月7日 制定