経済的に困窮する高齢者が増加!支援策が急務に
生活困窮者のための住居施設「無料低額宿泊所」
11月5日、厚生労働省は、「社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援の在り方に関する検討会」を実施。経済的に困窮し、単身での生活が困難な高齢者への「住居面」での支援体制作りについて話し合いが行われました。
「社会福祉住居施設」とは、いわゆる「無料低額宿泊所」と呼ばれる施設のことです。
もともと住居の人の一時的な住まいとして作られていましたが、近年では定住化が進み、終の棲家になってしまう高齢者が増加。
今回の検討会では、生活保護を受ける高齢者へのサポートを、社会福祉事業のひとつである社会福祉住居施設(無料低額宿泊所)に正式に委託できる仕組み作りが話し合われています。
厚生労働省のスケジュールによれば、来年4月ごろまでに、委託先となる社会福祉住居施設の建物、住居部分に関する具体的な「基準」を決めていく予定です。基準の大枠については、今月に開催される第2回検討会から内容を詰めていくとしています。
しかし、この社会福祉住居施設・無料低額宿泊所ですが、実際のところどのような施設で、どんな生活を送れる場所なのでしょうか。まずは今回の検討会が開催された背景にある「生活保護を受ける高齢者の増加」について見ていきましょう。
高齢者世帯の生活保護受給が最多更新
厚生労働省は10月3日、全国で生活保護を受けている65歳以上の高齢者世帯(一時的な保護停止を除く)が、7月時点で前月比987世帯増となる88万791世帯(約210万人)であったと発表しました。

生活保護受給世帯数の推移をみると、ここ数年は景気の改善により減少しています。
しかし、減っているのは障害者世帯などで、高齢者世帯はこの20年で3.4倍に増加。
特に2000年代に入ってからは、急速に増え続けています。
今や高齢者世帯が全受給世帯の5割以上を占め、生活保護受給者数では全体の半数近い47%が65歳以上の高齢者です。
高齢化の進展とともに、経済的に困窮する高齢者も増加しています。特に、低所得で一人暮らしの高齢者の場合は状況が深刻。住まいを失うケースも増加しているのです。
政府は社会保障費を抑制するという名目のもと、生活保護の見直しを実施。今年10月に行われた改正では、全受給世帯の67%において受給額が減額する形となり、低所得高齢者の生活に大きな影響を与えているとみられます。
行き場を失う高齢者たち
アパートにも老人ホームにも入れない高齢者が増加
高齢になると、一人暮らしをしている場合、一般の民間賃貸物件を借りようとしても、孤独死する恐れや家賃滞納の懸念から断られることが多いされています。
また、生活保護が想定している住居費に比べて家賃が高いために、実際に住むことができるアパートを見つけられない高齢者もいます。
さらに、もし要介護状態になれば、日常生活における支援も必要。
低所得者向けの介護施設として特別養護老人ホーム(特養)がありますが、2016年4月時点で、特養における入所待ちをする「待機者」の数は約36万6,000人に上り、即入居が難しい施設が多いのが現状です。

さらに特養の場合、入居要件として「要介護3以上」という規定があり、重度者の入居が優先され、要介護2以下の軽度者は入りにくくなっています。
こうした問題を解決することを目的に2011年から「サ高住」の導入が開始されましたが、入居費用が高額な物件が多く、実際のところ生活保護受給者にとっての利用は簡単ではありません。
住まいを失う経済的に困窮した高齢者は、年々増えつつあるのです。
行き場のない高齢者の受け皿になっているのが”大規模無低”
無料低額宿泊所(通称「無低」)とは、「生計困難者のために、無料又は低額な料金で利用させる施設(社会福祉法第2条第3項第8号)」として定義されている施設。
もともと生活保護法は自宅で生活支援を行う「居宅保護」が原則であり、救護施設や更生施設などはあくまで補助的な保護施設としての位置づけに過ぎません。
特養やサ高住も入居しにくい中、生活保護を受けている高齢者の受け皿として機能するようになったのが「無低」だったのです。
厚生労働省の調査によれば、2015年6月時点における全国の無低の数は537ヵ所。入所者数は計1万5,600人で、そのうち生活保護受給者は1万4,143人です。
また、無低のうち「個室がある施設」は462ヵ所で、「個室以外の居室のみの施設」が75ヵ所。
個室がある施設における居室面積は、「4.95~7.43平方メートル未満」の施設が全体の33.8%を占め最も多く、以下「7.43~9.9平方メートル未満」(26.0%)、「9.9~13平方メートル未満」(19.0%)と続きます。
さらに提供されているサービス(複数回答)としては、「苦情窓口の設置」(95.9%)、「自立支援のための職員配置」(87.2%)、「食事提供」(85.3%)、などが多いです。

そんな中、2000年代以降で特に数を増やしているのが、入所者が多く要介護者も多い「大規模無低」。法的規制が少なく設置運営基準が緩いこともあり、1999年に特定非営利活動促進法(NPO法)が成立すると一気に広まりました。
「無料低額宿泊所」が抱える大きな問題
入所が長期化している入所者は全体の6割に
すべての無低に問題があるわけではないですが、改善の必要性を指摘されている施設は少なくないのが現状です。
制度上、無低は事業を開始したときに都道府県知事などに届け出なければなりません。
しかし厚生労働省の調査によると、届け出がなく「社会福祉各法に法的位置づけのない施設」が全国で1,236ヵ所あり、そのような施設で生活する入所者数は1万6,578人に上るとのこと。
届け出をしている無低よりも、施設数、入所者数ともに多いのです。
また、現在多くの無低で設置されている簡易個室(隣人とのスペースが、薄い間仕切りの壁のみで十分に区切られていない個室)に対しては、火災時に被害が拡大するなど安全面の問題が指摘されています。
さらに、「一時的」な住まいであるはずの無低に長期滞在する人が増えていること(入所期間が長期化している入所者は全体の6割に達するとのデータもある)、大人数を無理に収容するなど運営方針に問題のある施設が少なくないこと、を問題視する有識者は少なくありません。
立場の弱い高齢者を搾取する悪質な業者も増えているとみられていますが、国が定めているガイドラインには法的拘束力がないことから、2015年に行われた調査によれば、これまで自治体による行政処分が行われたケースはわずか7件。
自治体側は既に10年以上前から権限強化につながる法整備を国側に要望していますが、十分な対応は行われてこなかったのです。
厚労省が「大規模無低」を追認する可能性が
このような問題を受け、冒頭で紹介した今回の検討会では、無低への規制強化が重要な議題となっています。
しかし、そんな改善策について考えるはずの場で、厚生労働省は劣悪な生活環境である「簡易個室」を最低基準として容認・公認するのではないか、と懸念する声が少なくありません。
日本における「健康で文化的な最低限度」の「住まい」については、すでに具体的な面積・設備基準が国交省の「最低居住面積水準」の中で定められています。
ところが今回の検討会の成り行き次第では、簡易個室という最低の水準以下の「住まい」を、厚労省が定めて定着させることになりかねないのです。
そうなると、無低の活用が本当に低所得高齢者の生活を守り支えることにつながるのか、大きな疑問が残ります。問題の解決に向けたより踏み込んだ施策が求められているのではないでしょうか。
今回は無料低額宿泊所の問題を取り上げました。高齢化が進み特養などの介護施設が不足する中、一人暮らし・低所得の高齢者の生活を守る「無低」はどうあるべきなのか。国・厚生労働省によるしっかりとした検討が必要とされています。
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2020年9月7日 制定