虚弱化の一歩手前「プレフレイル」がいま問題に
厚労省の有識者会議でプレフレイルへの対策が提言される
2018年10月24日に開かれた厚生労働省による「高齢者の保険事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議」の場では、昨今その危険性が指摘されている「フレイル」の予防について取り上げられ、議論が行われました。
フレイルとは、加齢によって筋力、認知機能などが低下し、生活機能障害や要介護状態、死亡のリスクが高くなる状態のことで、一般的には「健康な状態と要介護状態の中間」として捉えられています。
今回、会議の場でフレイルの前段階である「プレフレイル」も論題となり、個別支援が必要となる一歩手前の段階にいる高齢者について適切に状況を把握し、必要なサービスに接続することが重要との指摘が行われています。
同会議で厚生労働省は、保険事業の目的・意義に関するこれまでの議論を「保険事業の接続について」と「後期高齢者の特性への対応について」の2つに整理。
このうち後者については、「後期高齢者のフレイルを予防する観点から、保険事業においては社会参加の要素も重要」としたうえで、「医療保険の保険事業と介護保険の介護予防事業等を一体的に進めていくことについてどのように考えていくか」が論点として取り上げられるなど、会議当日はフレイル対策にかかわる多様な議論が行われました。
250万人の高齢者がフレイルに該当する可能性がある
日本は今や超高齢社会へと突入し、内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によれば2025年時点で高齢化率は30%を突破し、2060年には40%近くにまで上昇すると推計されています。
そうした高齢化の進展の中で懸念されているのが、フレイル有症者の増加です。フレイルの有症率は加齢とともに増加していき、60代後半では5%前後なのに対し、後期高齢者世代である80歳以上になると35%近くに達するとのデータもあります。
体が脆弱化したフレイルの状態になると、身体能力が低下し、死亡率が上昇。なんらかの病気にかかりやすくなる、入院が必要になるといった、ストレスに弱い心身状態に陥ります。
例えばフレイル状態になると肺炎の発症や骨折などが起きやすくなり、病院への入院をきっかけにそのまま寝たきり状態になることも少なくありません。

高齢者におけるフレイルの増加は、要介護状態の高齢者が増えることにもつながるため、現在、厚生労働省も全国で予防に取り組もうとしているわけです。日本では現在、少なくとも250万人がフレイルに該当するのではないかとも言われています。
プレフレイルと要介護は関係している
高齢者の半数近くがプレフレイル有症者に
プレフレイルとフレイルの状態を判断する方法としては、5つの項目が基準とされています。
- 年間4.5あるいは5%以上の体重減少が起こっている
- 疲れやすい状態が週に3~4日以上ある
- 歩行速度が低下している
- 筋力が低下している
- 身体的な活動量が低下している
以上の5項目のうち、3項目以上該当するとフレイル、2項目以下の場合はフレイルの前段階となるプレフレイルであるとされます。
国立長寿医療センターの研究調査では、フレイルに該当した高齢者の割合は6.9%、プレフレイルに該当した人の割合は49.6%と半数近くに達しました。

また、認知的機能の脆弱化(軽度認知障害、認知的フレイルとも呼ばれる)がみられる高齢者は、認知機能が健常な高齢者に比べて、要支援・要介護状態に移行するリスクは2~3倍高いとも言われています。
認知機能の衰えは認知症発症の危険性を高めるだけでなく、要介護状態となるリスクも増大させることになるため、早い段階で状態を把握し、対策を行う必要があるのです。
プレフレイルの原因は身体的な機能低下だけではない
プレフレイル(フレイル状態)となる背景には、さまざまな要因がかかわることが多いです。
例えば身体面の場合、食欲不振によって起こる慢性的な低栄養状態と加齢によって生じる骨格筋量の減少が相互に影響して起こることが多く、この両者が悪循環をもたらし、身体機能の低下を進行・加速化させ、要介護状態に至ることが少なくありません。
さらに身体的な面だけでなく精神的、社会的な要因が重なり合って起こるのも、フレイルの特徴です。うつ病や認知機能の低下、さらには独居で社会交流機会が減少し、人と接する機会がなくなっていることも、フレイルを引き起こす要因として位置づけられています。
また、フレイルの原因を考えるうえで重要なのが、骨格筋力・骨格筋量が減り身体機能が低下する「サルコペニア」です。フレイルを引き起こす「筋力の低下」や「歩行速度の低下」は、通常サルコペニアと診断されます。
ただ、サルコペニアは筋力など身体上の機能低下に着目した症状ですが、フレイルは身体的側面だけでなく、精神的な側面や社会的な側面など、幅広い要因を含んだ症状です。そのため、サルコペニアはフレイルのひとつの要因として考えられるのが一般的とされています。
プレフレイルへの予防策が急務
フレイルの治療法は未だに見つかっていない
近年、高齢者医療の場で注目されているフレイルですが、現在の医学においては具体的な治療法が未だ見つかっていません。
栄養面と運動面、そして薬物療法を組み合わせた治療法に期待が寄せられているものの、肝心の薬物療法については、研究途上の段階なのです。そのため今のところ、診断や治療に関する実践的なガイドラインについて、十分な整備が行われているわけではありません。
実際に行える予防対策としては、まずは身体機能や筋力を維持してサルコペニアの状態に陥らないように、散歩など低負荷の運動を続けることや日常的に栄養バランスの良い食事を摂っていくことが大事です。
国立長寿医療センターは、「栄養」(アミノ酸の摂取)、運動(筋肉を収縮させる)、インスリンの3つが「筋肉をつくる刺激」として大切であると指摘。
刺激に対する反応性は加齢によって低下しますが、刺激が一定以上あれば筋肉合成は正常に行われるとされ、特にアミノ酸の摂取は、毎食一定以上の量を摂ることが望まれるとしています。
まだ即効性のある治療法がないからこそ、日頃からの生活習慣の見直しなど、日常的な心掛けが大切なのです。
大切なのは75歳未満の高齢者も含めた「早期の健康づくり」
厚生労働省は現在、本格的に高齢者のフレイル対策に乗り出しつつあり、今年の通常国会に介護保険法や高齢者医療確保法などの関連法の改正案を提出するとしています。
法改正の目的は、介護保険の介護予防と医療保険の保険事業の一体的な実施。制度間の縦割りで別々に行っている現状を改善し、より合理的で成果の出るフレイル対策の体制を作ること狙いです。このままいけば、2020年度から新たな制度が導入されます。

制度化が予定されていることのひとつが、高齢者サロンなど「通いの場」の高機能化です。後期高齢者医療制度の保険者・国が費用を捻出し、保健師やリハビリ専門員、歯科衛生士などを配置。
効果がまだまだ乏しいと指摘されている通いの場での医療の視点に基づく支援を充実化させる構想が描かれています。
また、フレイルになる前の段階から早期の準備を進めていくためには、必ずしも75歳以上に限定せず、75歳未満の高齢者も含めた「早期の健康づくり」も必要です。
こうした支援の実現によってより効果的なフレイル予防ができることが期待されています
今回は高齢者におけるフレイルの問題について考えてきました。
要介護状態の高齢者を減らしていくには、フレイル予備軍と呼ばれる「プレフレイル」の段階から予防することが重要。
フレイルを防ぐためにどのような施策が制度化されていくのか、今後も注目を集めそうです。
みんなのコメント
ニックネームをご登録いただければニックネームの表示になります。
投稿を行った場合、
ガイドラインに同意したものとみなします。
みんなのコメント 2件
投稿ガイドライン
コミュニティおよびコメント欄は、コミュニティや記事を介してユーザーが自分の意見を述べたり、ユーザー同士で議論することで、見識を深めることを目的としています。トピックスやコメントは誰でも自由に投稿・閲覧することができますが、ルールや目的に沿わない投稿については削除される場合もあります。利用目的をよく理解し、ルールを守ってご活用ください。
書き込まれたコメントは当社の判断により、違法行為につながる投稿や公序良俗に反する投稿、差別や人権侵害などを助長する投稿については即座に排除されたり、表示を保留されたりすることがあります。また、いわゆる「荒らし」に相当すると判断された投稿についても削除される場合があります。なお、コメントシステムの仕様や機能は、ユーザーに事前に通知することなく、裁量により変更されたり、中断または停止されることがあります。なお、削除理由については当社は開示する義務を一切負いません。
ユーザーが投稿したコメントに関する著作権は、投稿を行ったユーザーに帰属します。なお、コメントが投稿されたことをもって、ユーザーは当社に対して、投稿したコメントを当社が日本の国内外で無償かつ非独占的に利用する権利を期限の定めなく許諾(第三者へ許諾する権利を含みます)することに同意されたものとします。また、ユーザーは、当社および当社の指定する第三者に対し、投稿したコメントについて著作者人格権を行使しないことに同意されたものとします。
当社が必要と判断した場合には、ユーザーの承諾なしに本ガイドラインを変更することができるものとします。
以下のメールアドレスにお問い合わせください。
info@minnanokaigo.com
当社はユーザー間もしくはユーザーと第三者間とのトラブル、およびその他の損害について一切の責任を負いません。
2020年9月7日 制定