介護保険法施行規則改正で訪問介護の運営基準が見直される
2級ヘルパーのサービス提供責任者が4月から廃止へ
厚生労働省は、1月10日に発表した『介護保険最新情報 Vol.693』のなかで、2019年4月1日から訪問介護の事業所に配置されるサービス提供責任者の任用要件をより厳格化することを発表しました。
今までは、2級ヘルパーも認められていましたが、この措置により、初任者研修の修了者、もしくは2級ヘルパーがサービス提供責任者になることが例外なく禁じられます。
この厳格化は、今年度の介護報酬改定を巡る協議のなかで提案され決定したもので、介護におけるサービスの質を向上させるための施策の一環です。
既に2級ヘルパーの資格を持っている職員がサービス提供責任者を務めている事務所などに配慮し、今年度の3月31日まで、既に従事している人に限ってサービス提供責任者を継続することを認める経過措置が取られていました。
2019年4月からの厳格化に伴い、今までサービス提供責任者に2級ヘルパーなどを配置していた事業所に対して取られていた、報酬の30%減算措置も廃止されることになります。

今回の制度の見直しは、より多くの優秀な人材を育成し、介護におけるキャリアパスをより明確にすることを目的としたものとされています。厚生労働省には、サービス提供責任者を介護福祉士のような専門性の高い人材に担ってもらうという狙いもあります。
サービス提供責任者の役割が明確化する
サービス提供責任者の任用要件の厳格化と同時に、サービス提供責任者の訪問介護の現場での役割も明確化されます。
まず、口腔に関する問題、あるいは服薬状況などをはじめとした気づきに関して、ケアマネージャーなどの多職種にわたる関係者と共有することが義務付けられました。
ほかにも、サービスが実際に行われた時間を記録し、それがケアプラン上の標準時間と大きく差がある場合は、ケアマネージャーと協議を行い、修正することも役割のひとつとされています。
また、自らの事業所のサービス利用を優先するために、ケアマネージャーなどに対して不当な働きかけをしてはならないという決まりも新たに明文化されました。
これは、介護施設が要介護度の比較的低い人に対して、本来必要ない多くのサービスを受けさせたり、収入の少ない入所者に介護保険の限界までサービスを詰め込んだりする、「囲い込み」とよばれる問題への対策の一環であるとされています。
そのため、サービス提供責任者だけではなく、事業者もその適用対象です。
こうした施策が行われた背景には、介護サービスの向上だけではなく、毎年拡大を続けている介護給付費を適正化するという狙いもあるのではないかと専門家は指摘しています。
人手不足で業務が増加するサービス提供責任者
在宅介護におけるサービス提供責任者の重要性は増している
そもそも、サービス提供責任者の役割は、訪問介護サービスの運営や計画にかかわり、円滑なサービスの提供を行うのがその職務です。
具体的には3つほどメインとなる仕事があり、ひとつ目はケアマネージャーが作成したケアプランに沿って利用者と相談しながら訪問介護計画書を作成し、その通りにサービスを提供できるようにコーディネート業務を行うというものです。
ふたつ目はホームヘルパーの取りまとめ役として、適正な人員配置などのスタッフ管理、あるいはその育成や指導に携わるというものになります。そしてみっつ目は利用者の状態などについて情報を収集し、それをケアマネージャーやスタッフに提供するというものです。
2025年に団塊の世代が後期高齢者となるなど、高齢化社会が進む日本では、地域による介護や看取りが必要となりつつあります。
そのため訪問介護の需要が増し、かつ人手不足が深刻化する現在の介護業界では、人材の管理を行うという役割がより必要とされておりサービス提供責任者の重要性も高まりつつあります。
しかし、多様な業務に追われ、サービス提供責任者が本来の業務に集中できていない状況になっているとの指摘もあります。
1ヵ月のうち3.7%しか本来の業務ができていない
2010年に社団法人シルバーサービス振興会が発表した『サービス提供責任者の業務の実態把握と標準化に関する調査研究事業報告書』では、サービス提供責任者の業務が阻害される原因についてアンケートを行いました。
その結果、「非常にあてはまる」と「ややあてはまる」と回答されたものとして、「必要なヘルパーの人員が確保できない」が73.1%を占めています。
さらに66.2%が「自身で行う事務作業量が多すぎる」、63.9%が「十分に質が高いヘルパーを確保できない」、63.8%が「サービス提供責任者の介護報酬上の位置づけが不明確」などが多数を占めています。

また、厚生労働省が発表した別の資料では、サービス提供責任者の1ヵ月間の業務うち、訪問業務を全体の4割以上にあたる77時間も行っており、そのうち63時間を訪問介護の業務に当てています。
その結果、書類作成や人員の管理といった業務に支障が出てしまい、自身が訪問介護を行わざるを得なくなり、そのほかの業務に忙殺されるという悪循環に陥ってしまっているのです。
1ヵ月の勤務時間の3.7%しか利用者把握をはじめとしたサービス提供責任者としての本来の業務を行えていないとされています。
サービス提供責任者のキャリアパス形成が課題に
介護報酬のなかでの評価が鍵になる
このような現状を解決するためには、サービス提供責任者を巡る状況を改善する必要があると言えます。先述の通り、業務量が非常に多いこと自体も改善するべきですが、それにくわえて制度上の問題も多く指摘されています。
まず、人員配置基準が明確にされているのにもかかわらず、介護報酬上では評価がなされていないのも問題点のひとつです。
サービス提供責任者の業務については、介護報酬上の評価がないために、サービス提供責任者自身も直接介護サービスに出向かないと収益が確保できない構造が出来上がっています。
そのため、明確なキャリアアップとしての道筋として考えられない部分があるのか、キャリアアップとしてケアマネージャーへ転身する志向を持つ人が多いという調査結果もあります。
これはまた給与面でも言える問題で、2013年の介護労働安定センターによるの調査では、サービス提供責任者の月収はヘルパーの平均より2万5,000円高い21万5,000円程度となっています。
多岐に渡る業務とその量、職自体の重要性と給与が釣り合っているのかという、疑問の声も上がっています。
業務に専念できる環境づくりが大切
こうした課題を解決していくには、サービス提供責任者がその本来の業務で評価され、専念できる環境を整える必要があります。
まず、サービス提供責任者が本来メインとするべき業務である、訪問介護計画書の作成、あるいは利用者とのアセスメントやモニタリングに注力できる環境を作り上げることです。これが可能になれば、当然訪問介護サービス自体の質が高まることにもなります。

そのためには、サービス提供責任者という職業自体をしっかりと評価する報酬体系を作り上げ、サービス提供責任者自らが訪問介護を行わなくても収益が確保できるようになることが大切です。
サービス提供責任者の質を追い求める施策だけではなく、制度上、あるいは介護報酬上の評価を見直し、それに伴う業務の効率化を行うことが、今後求められていくことになります。
今回はサービス提供責任者の現状について考えてきました。サービス提供責任者の役割を明確化させ効率的な訪問介護を実現していくことが、最終的には介護の質を向上させ、よりよい高齢化社会を作ることになるのではないでしょうか。
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2020年9月7日 制定