新加算の算定要件がついに正式決定!
介護職員の賃上げ新加算、名称は「特定処遇改善加算」
厚生労働省は2月13日に、経験を有する介護福祉士らの賃上げを目的とした、今年度の10月に創設される新たな加算の名称を公表しました。加算の名称は『介護職員等特定処遇改善加算』となりました。
もともと、この加算はスキルのあるベテラン介護職員の賃金について、ほかの産業などと同レベルの水準に高めることを目的として、現行の介護職員処遇改善加算へ上乗せするために創設されたものです。
加算の詳細が明らかになる以前は、政府が「勤続10年以上の介護福祉士の月給を8万円相当上げる」と発表していたこともあり、勤続10年以上の職員だけが対象であると考えられていました。
しかし、実際の算定要件には勤続10年以上という記載はされておらず、くわえて介護職員以外の職種に対してもある程度の配分が可能とされています。そのため、事業所の裁量で、柔軟さを持って運用ができるのではと見られています。
今後、この特定処遇改善加算に関する細部の通知や様式は、2019年3月末までに発出される見通しとなっています。
各サービスの加算率公表、どのサービスが対象に?
今回の特定処遇改善加算は、現在ある介護職員処遇改善加算と同様に、サービスごとに加算率が設けられています。
この加算には加算率が高めである加算(Ⅰ)と加算率が低めである加算(Ⅱ)の2段階にわかれています。特定の条件を達成することで加算(Ⅰ)が取得でき、そうでない場合は加算(Ⅱ)を取得するという形です。
加算(Ⅰ)の中でも特に加算が多いものとして、訪問介護の6.3%、次いで認知症対応型通所介護、認知症対応型行動生活介護の3.1%、介護老人福祉施設の2.7%などが挙げられます。
こうした加算率は、財源として用意される2,000億円を、2017年に行われた介護サービス施設・事業所調査と、2015年に行われていた社会福祉士・介護福祉士就労状況調査に基づき、勤続10年以上の介護福祉士の割合が多いサービスへの分配を多くなるように調整されたものです。
そのため、調査結果で最多の17.3%を占めた訪問介護や、12.5%の老健、12.3%の特養老人ホームなどのサービスに、多く分配されるような形になっています。

こうした加算は看護師や介護助手、リハビリ職、ソーシャルワーカーなど、対象範囲を拡大して行うべきであるという声は根強くありました。
その影響か、多職種への一定の配分が認められましたが、あくまでも今回の加算では介護福祉士の勤務が条件となっています。
ベテラン職員の有無や職場環境への取り組みで加算が大きく変わる
事業所側の待遇改善策が問われる取得要件
特定処遇改善加算を事業所が取得できる条件は3つ。ひとつは「現行の介護職員処遇改善加算の(Ⅰ)から(Ⅲ)までを取得していること」です。
これは任用要件や賃金体系の整備にかかわる「キャリアパス要件Ⅰ」、資質向上のための研修の実施などにかかわる「キャリアパス要件Ⅱ」のいずれか、(Ⅰ)の場合は両者に加えて一定の基準に基づく昇給の仕組みなどにかかわる「キャリアパス要件Ⅲ」を満たすことが前提条件となります。
ふたつ目は「介護職員処遇改善加算の職場環境等の要件について『複数の取り組み』を行っていること」。くわえて、賃金以外の処遇改善の取り組みを実施にかかわる「職場環境等要件」も満たす必要があります。
みっつ目は「介護職員処遇改善加算に基づく取り組みにおいて、ホームページへの掲載などを通じた見える化を行っていること」となります。つまり、職場環境の改善や、職員の育成への取り組みが十分である事業所が対象となるのです。
このうえで、特定事業所加算や日常生活継続支援加算、サービス提供体制強化加算、入居継続支援加算など、各サービスに応じた加算を受けることが、特定処遇改善加算の加算(Ⅰ)を受ける条件です。
それに当てはまらない場合は、加算率が低めの加算(Ⅱ)を取得します。これらの条件について、加算を事業所単位ではなく、法人単位での運用を認めるかなど議論すべき点も残っています。
特に、条件のひとつである「介護職員処遇改善加算の職場環境等の要件について『複数の取り組み』を行っていること」については、実効性の高い取り組みに限定するべきという強い要望が関係者から寄せられています。
「リーダー級介護職員」が事業所全体の加算を左右する
特定処遇改善加算によって事業所に配分された資金のスタッフへの配分は、一定以上の裁量が事業所に認められています。
とはいえ、この加算の本来の主旨である「スキルのあるベテラン介護福祉士への処遇改善」という部分がおろそかにならないために、ある程度のルールが設定されました。
それは、分配するスタッフについて①『経験・技能のある介護職員(リーダー級介護職員)』、②『その他の介護職員』、③『その他の職種』に分類するというものです。
リーダー級介護職員はその他の介護職員に対して2倍以上の賃上げ額にすること、その他の職種の賃上げ額がその他の介護職員の2分の1を上回らないようにすることが明記されました。

くわえて、『経験・技能のある介護職員(リーダー級介護職員)』においては事業所の中で月額8万円の賃上げとなる、あるいは賃上げ後の賃金が年収440万円以上となる人が1人以上いること、『その他の職種』は年収440万円以下の人だけを対象にすることも定められています。
『経験・技能のある介護職員(リーダー級介護職員)』とは、基本的には勤続10年以上の介護福祉士を対象とするものですが、“勤続10年”という部分への考え方については、事業所の裁量で設定が可能となっています。
つまり、事務所に『経験・技能のある介護職員(リーダー級介護職員)』に相当するベテランのスタッフが多ければ多いほど、②や③へ分配できる資金も多くなっていく形になっているのです。
「事業所の裁量」に任せて介護福祉士の処遇改善は成功するのか
実は「勤続10年以上」でなくても処遇改善の対象になる
冒頭で述べたように、今回創設される特定処遇改善加算は、当初は勤続10年以上の介護福祉士が対象となると予想されていました。
これは、内閣府の発表した新しい経済政策パッケージの中で、「勤続10年以上の介護福祉士に月8万円相当の処遇改善を行う」とされていたからです。
しかし、今回発表された算定条件の中には、「経験・技能を有する介護福祉士のうち1人は、月8万円以上の賃金改善の見込みまたは改善後の賃金が年440万円以上」と規定されており、勤続10年という記載はありません。
加算率の計算根拠として、年2,000億円となる原資を「勤続10年以上の介護福祉士の賃金が、月8万円相当上昇するように配分する」と明記されていますが、それ以外の文章ではこうした文言は使用されていません。
そのため、今後発出される見通しである通知類などにおいても、勤続年数について厳密に定められないのではないかというのが一般的な見通しとなっています。
上記の分配においても、経験・機能のある介護職員について、勤続10年の定義を事務所の裁量で設定できると説明しました。こうした点も含めて、配分する職員の勤続年数などは、事業所が比較的柔軟に対応し、運用できる形になっているのです。
まだまだ残る加算への懸念点
厚生労働省はこの特定処遇改善加算について、細部までまとめた通知を今年の3月中下旬までに発出するとしていますが、現状で懸念するべき点も多く残っています。
まず、現在までの発表では明らかにしていない部分が多くあるという点です。
月8万円の賃上げか、年収440万円以上の人を1人確保しなければいけないとした先述の分配におけるルールについて、例外を認めるケースについては今後の通知で伝えるとしている部分なども、その一例です。
やはり先述したように、加算を法人単位でも扱えるのかという問題なども、いまだ不透明である部分として挙げられています。
また、賃上げの分配について事務所の裁量が認められることにも少なからず懸念の声が出ています。

加算こそ行われたものの、実際には介護スタッフへの賃上げには繋がらなかったという事態が起こることも十分に考えられるからです。
今回の改正は介護業界にとって非常に大きなものであり、その影響にも今後注視していく必要があります。政府には、今回の加算がしっかりと待遇の改善につながるよう、万全の体制を整えることが望まれています。
「ニッポンの介護学」では、これまでにも介護福祉士の処遇改善加算についての記事を公開しております。本記事とあわせて、ぜひご覧ください。
『第595回 リーダー級職員は年収440万円まで賃上げ決定!新加算で介護職員が収入増を実感できるかが鍵に』
『第587回 新加算でケアマネと介護福祉士の給与が逆転する可能性!新加算の導入は介護現場に新たな軋轢を生む原因に…』
『第584回 新加算によるベテラン介護福祉士の賃上げ決定へ!もらえる人・もらえない人の不公平感をなくす基準づくりが焦点に』
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2020年9月7日 制定