加齢とともに骨密度が低下する「骨粗しょう症」
高齢者に多い大腿骨骨折は冬に増える
日本整形外科学会の調査によれば、10月から3月までの冬の期間は、「大腿骨付近の骨折」が4月から9月に比べて約2割増加するそうです。寒さで体が縮こまり普段ならなんでもない場所でも大きな怪我につながりやすいというのが要因だとされています。
この部位の骨折の患者の8割が女性とされており、中でも高齢の女性に多いとされています。高齢者の場合は、骨折後に寝たきりになる可能性もある危険な骨折です。
この原因となっているのが「骨粗しょう症」。
これは、骨の強度が低くなり、骨折を起こしやすくなる病気で、主な原因として加齢や運動不足、女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏が挙げられます。
閉経を迎えた女性は、ホルモンバランスが崩れてエストロゲンが不足するため、骨を作る動きが急速に衰え、骨粗しょう症になりやすいのです。
日本骨粗鬆症学会の資料によれば、2007年時点で大腿骨頚部骨折の発生数は14万8,100人とされており、そのうち11万6,000人が女性となっています。また、大腿骨の骨折と並んで高齢女性に多いのが、背骨の圧迫骨折です。
背骨はスポンジが固くなったような構造の海綿骨という形状をしています。そのため、骨の表面積が多くなって代謝が早くなり、加齢などで弱くなりやすいという特徴があるのです。
近年、高齢化が進む日本で、こうした骨粗しょう症による骨折をする人が急増しています。
骨粗しょう症女性の死亡率は平均の2.43倍も
骨粗しょう症の患者数は、日本国内で約1,280万人。女性の患者はその中、約980万人いるとされています。日本人の10人に1人はこの病気になっているということから、骨粗しょう症は“新国民病”とも呼ばれる病です。
医師会の公表している資料によれば、日本人女性が骨粗しょう症になっている割合は、50代では7%と低いものの、60代で30%、70代で37%、80代で42%と、60代を境に急激に上昇します。

これらを合わせて計算すると、50代以上の女性の4人に1人は骨粗しょう症といわれています。
女性に比べれば3分の1以下の数ながらも、男性の骨粗しょう症患者も300万人に上るとされています。
男性の場合は、喫煙者や糖尿病がある人に症状が顕著だとされています。また、男性は女性よりも体が大きいことから、骨粗しょう症による骨折の危険性がより高く、骨折後も重篤化しやすいというリスクも存在しています。
2009年にオーストラリアで行われた調査では、大腿骨頸部を骨折した場合、女性ではの2.43倍の死亡リスクがあったのに比較して、男性では3.51倍だったことが判明しています。
高齢者の大腿骨骨折は要介護化の最大の原因
認知症よりも怖い高齢者の”骨折連鎖”
高齢者の骨粗しょう症は、実は骨折だけでなく「要介護化の危険度を高める疾患」だと言われています。
厚生労働省が公表する「国民生活基礎調査」の2016年度版によれば、転倒や骨折と関連する関節系疾患は、要介護認定のうち、要支援1~2になる原因としては、脳血管疾患やなどを抑えて第1位となっています。
骨折は介護を必要とするようになる原因として圧倒的に多いのです。

大腿骨近位部は、骨折をすると歩行が困難になる骨折部位です。
そのため、背骨の骨折と股関節部の骨折を起こすと身体機能が低下。
再び骨折をして、1~3割が最終的に寝たきりになってしまうなどの「骨折連鎖」とも言うべき事態が起こってしまうのです。
高齢者は「骨折連鎖」によって寿命が平均よりも短くなるなど命にかかわる危険が指摘されています。
そのため、この骨粗しょう症で骨折のリスクが高くなっている人ほど、早期の健診により、要介護化の防止が必要です。
正しい手術を受けられず、術後に歩けるのは4分の1
しかし、この骨粗しょう症や、それがもたらす大腿骨頸部骨折を始めとした骨折に対して、日本の医療体制の整備の遅れも、この病気を原因とした要介護化に拍車をかけていると指摘されています。
脆弱性骨折ネットワーク(FFN)によれば、日本は骨粗しょう症や筋力低下を原因として起こる脆弱性骨折に対して、適切な予防や治療が行われていない国のひとつに数えられています。
その理由として、骨折後に手術をするまでのタイムラグや多いことや、対応に問題があるというのです。本来、骨折したあとの手術は36時間以内が望ましいとされているのですが、日本では、手術までの待機時間が平均4.4日と大きな差が生じています。
また、手術後に「免荷」と呼ばれる加重を掛けずに骨が付くのを待つ期間も、逆に高齢者の筋力の低下させてしまうと指摘されています。
事実、大腿骨付近の骨折から術後1年で以前と同じような歩行ができる人は全体の4分の1に過ぎず、半数は介助が必要となると言われています。
また、骨粗鬆症財団の発表では、自治体が行っている骨粗しょう症の検診の受診率は、全国平均で5.2%と低迷していることが発覚しており、これも大きな問題となっています。
約1,000万人に「隠れ骨折」の恐れがある
治療を受けている人は20%しかいない
この受診率の低さは、検診に限った話ではありません。先ほど述べた通り、日本では1,280万人ほど骨粗しょう症の患者がいるとされていますが、このうち治療を受けているのはわずか300万人程度にとどまります。
つまり、8割弱の人々は骨粗しょう症を放置してしまっており、それを原因として、骨折に繋がる状況が生まれているのです。
骨粗鬆症財団が発表している資料によれば、1987年における大腿骨近位部骨折発生患者数は5万3,200人でしたが、2012年の調査では17万5,700人と3.3倍に急増。

これは、超高齢社会において、骨粗しょう症になりやすい高齢者の増加を表していることも確かですが、この病に対しての予防を行っていない問題も影響している部分もあります。
この影響は大腿骨の骨折だけではなく、先述した背骨の強度が下がることで圧迫骨折を起こす、いわゆる「隠れ骨折」の急増にも表れています。
こちらは痛みなどの自覚症状がすくないものの、腰痛や身長の縮みなどのサインがあると言われていますが、これらを自覚しても放置したままの人がほとんどです。
日常生活に支障をきたす恐れがあるにもかかわらず、早期の発見や治療が必要だということが十分に認知されていないのです。
薬で骨を若返らせる新薬が開発中止に
骨粗しょう症に対して、効果のある新薬の開発を多くの製薬会社が手掛けています。代表的なものとしては、「プラリア」が挙げられるでしょう。
これは半年に1回皮下注射をすることで、骨折抑制効果があるとされる治療薬で、日本では2013年より承認され、使用されています。
しかし、これに続く新薬として開発されていた「オダナカチブ」は安全性の問題で2016年に開発が中止され、その次の新薬も心血管系の安全性に懸念が示され、承認審査が保留状態となるなど、状況は芳しくありません。
くわえて、こうした新薬は、臨床試験などにかかるコストが莫大となりがちなことから、新薬の開発は停滞しているとされています。より効果の高い新薬が注目を浴びるのは、10~20年後になるのではないかと見られているのです。
そのため高齢者は、骨折などによって寝たきり、あるいは日常生活に支障が出ないよう、日常から予防に努めることが必要です。
自治体の行っている検診に参加する、あるいは少しでも異変を感じたら病院に行くなど、こまめなケアを行ったうえで、適切な治療を受けるよう、周囲の心がけも高齢者の骨粗しょう症による骨折を防ぐうえで、重要なのです。
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2020年9月7日 制定