
「何にでも“地域包括ケア”なんて名付ければ良いってもんじゃないでしょ」なんて声が聞こえてきそうですが、今回は、地域包括ケア“病棟”についての特集です。
2014年度診療報酬改定によって、「地域包括ケア病棟」という新しい病棟が新設され、すでに多くの病院でこの病棟が開設されています。
地域包括ケア病棟とは、亜急性期と呼ばれる急性期の時期を過ぎた、リハビリや退院支援を行う回復期に相当する患者や、自宅で治療中に、急な不調をきたしたり、怪我をした患者を受け入れる病棟です。
地域包括ケア病棟は、今どれくらい普及しており、どのような課題があるのでしょうか。現状について考察するとともに、利用者サイドのメリットとデメリットについて考えてみました。
3年後には3~5倍に!?国の肝いりとも言える地域包括ケア病棟の現状、そして行く末は?
大都市と地方都市とで、充実の度合いに明暗…
地域包括ケア病棟協会によれば、2015年4月時点で、地域包括ケア病棟の届出を行っているのは約1173病院。また、その病床数は3万床以上と推計されています。
| 都道府県 | 届出数 | 都道府県 | 届出数 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 福岡県 | 97 | 26 | 和歌山県 | 17 |
| 2 | 大阪府 | 67 | 島根県 | ||
| 3 | 兵庫県 | 60 | 28 | 宮城県 | 16 |
| 4 | 東京都 | 59 | 群馬県 | ||
| 5 | 熊本県 | 50 | 福井県 | ||
| 6 | 北海道 | 48 | 31 | 徳島県 | 15 |
| 7 | 愛知県 | 45 | 32 | 青森県 | 14 |
| 8 | 岡山県 | 42 | 栃木県 | ||
| 9 | 神奈川県 | 39 | 34 | 山形県 | 13 |
| 10 | 広島県 | 38 | 福島県 | ||
| 11 | 大分県 | 37 | 千葉県 | ||
| 12 | 鹿児島県 | 36 | 奈良県 | ||
| 13 | 長野県 | 31 | 38 | 秋田県 | 12 |
| 14 | 長崎県 | 29 | 静岡県 | ||
| 15 | 埼玉県 | 28 | 滋賀県 | ||
| 16 | 愛媛県 | 24 | 41 | 鳥取県 | 10 |
| 17 | 高知県 | 23 | 42 | 富山県 | 9 |
| 18 | 岐阜県 | 22 | 43 | 沖縄県 | 8 |
| 京都府 | 44 | 岩手県 | 7 | ||
| 20 | 新潟県 | 20 | 香川県 | ||
| 石川県 | 46 | 三重県 | 6 | ||
| 22 | 山口県 | 19 | 47 | 山梨県 | 3 |
| 23 | 茨城県 | 18 | |||
| 佐賀県 | |||||
| 宮崎県 | |||||
合計の中でも最も多いのが福岡県の97で、次いで大阪府が67、兵庫県が60…と、大都市を要する自治体に、地域包括ケア病棟が数多く設置されていることがわかります。
反対に、少ないのが山梨県の3、三重県の6、香川県と岩手県の7…と、10以下という自治体も見受けられるのが現状。地方都市において整備が進んでいないことに理由は判然としませんが、地域による格差が生じているのは紛れもない事実のようです。
| 既に稼働している(53病院) | |
| 稼働が決定している(43病院) | |
| 稼働を予定している(32病院) | |
| 開設の時期を検討している(28病院) | |
| 開設するかどうかを検討している(102病院) |
これらの病院の中で、2014年に258病院に対して行われたアンケート調査では、すでに稼働しているのは21%、稼働が決定しているのは17%、稼働を予定しているのが12%と、ほぼ半数の病院が稼働に乗り出しています。
そもそも地域包括ケア病棟は、2014年度の診療報酬改定によって、急性期と在宅の橋渡しの役割を期待されて新設されたものですが、その数は、2~3年後には現在の3~5倍にまで増えると見通されています。
地域包括ケア病棟の3つの機能と基準とは
地域包括ケア病棟は、どのような特徴を持つ病棟なのか、もう少し詳しく見てみましょう。地域包括ケア病棟とは、基本的に、以下の3つの機能を有するものです。
1.急性期からの患者の緊急時の受け入れ
2.在宅等からの患者の緊急時の受け入れ
3.在宅への復帰支援(院内でのリハビリと退院支援/地域内でのケアマネなどを中心とした在宅移行支援)
届出は、許可されている病床が200床未満の医療機関で、1病棟のみ可能。
入院期間は60日以内、リハビリは1日2単位以上。
入院料のうち、ある一つの規定を算定するには、在宅復帰率70%が条件と、「早期からのリハビリ」と「退院調整」に重きが置かれているのが大きな特徴です。
看護配置は13対1以上で、専従の理学療法士、作業療法士または言語聴覚士が一人以上、専任の在宅復帰支援担当者が一人以上必要となっています。
地域包括ケア病棟協会の会長は、「医療・介護の需要と供給に順応しやすい“最大で最強の病棟”」と表現しているわけですが、では一体、私たちにとってのメリットとは一体どんなものなのでしょうか? メリットの影に潜む不安点と併せて考えてみます。
地域包括ケア病棟、患者と介護者へのメリットとは
患者にとってのメリット

地域包括ケア病棟は、すでに病院経営に貢献している例もあり、課題をきちんと解決しているところもあります。
従来の一般病棟や急性期病棟と比べれば、骨折やがんなどの手術や治療後に、リハビリの時間もないまま自宅に帰されるといったことはなく、病院で療養・リハビリができるのは、患者にとっては安心といえます。
また、自宅で介護を受ける人が、病気や怪我がこれから悪化しそうなときに、早期から緊急入院できることは、回復しやすく治療期間も短くて済むため、これもまた大きなメリットです。
介護者にとってのメリット

患者だけでなく、自宅で待つ家族などの介護者にとっても、地域包括ケア病棟はメリットがあるといえます。最も大きいのは、自宅では療養できない病気や怪我が起きた際に、緊急入院させて一時的に患者を預けることができること。
さらに、リハビリや在宅復帰支援まで行ってくれるのは、介護する側からしても、いざ自宅へ帰ってきたときに、何をしてあげればいいかを把握しやすいところがあるでしょう。
入院中は、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士がリハビリ指導をしてくれるほか、胃腸の調子が悪ければ管理栄養士が食事指導や配食サービスの紹介などをしてくれるため、帰宅後、生活面で戸惑うことも少なくなりそうです。
在宅復帰率の高さは特筆…でも、退院の理由&内容には十分な注意が必要!?
地域包括ケア病棟が、患者や介護者にとって本当に安心できるかどうかは、なかなか判断しにくいところ。
もし、病院の医療者によるリハビリや、在宅ケアのスタッフやサービス機関、介護施設との連携が不十分なまま、自宅へ患者を戻された場合、介護者にとっては大きな負担となってしまう可能性もあります。
厚生労働省のデータを見ると、地域包括ケア病棟の在宅復帰率70~80%の医療機関は16%、80~90%は41%、90~100%は31%と、多くが基準の70%以上を上回っています。

特に、退院支援は地域包括ケア病棟にとって大きな課題となっています。
自宅に帰ったものの、生活できるレベルでないために、生活に支障をきたしてしまうことも考えられます。
そのため、ケアマネージャーなどの在宅医療のスタッフやケアサービス機関などと、連携を図ることが非常に重要になってきます。
退院後、自宅に帰ることができない患者への対応として、介護施設との連携も必要です。しかしこの数値がそのまま、患者と介護者の満足に直結しているかといえば、そうとも言い切れません。ただ単に在宅へ送り出しているだけの可能性も否定できないからです。
こうした課題があることから、病院によっては、退院前の試験的な外泊や外出支援を実施したり、退院後の14日間に訪問看護を利用できる制度などを設けて、そのすき間を埋めてようとしているところもあります。
介護サービスとしっかりとつながった地域包括ケア病棟になっているかどうかが、利用者にとって大きなポイントと言えそうです。
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2020年9月7日 制定