日本は他国に比べて高齢化がものすごい勢いで進んでいます。団塊の世代の定年退職もすでに始まっており、定年後に高齢者がどのような生活を営むのかが問われています。
そうしたなか注目されているのが、高齢者の雇用問題です。
定年を迎えるまではバリバリと会社で働いていても、定年後は年金を受給し仕事をせずに生活する高齢者がいる一方、「生活の糧を確保したい」などの理由から、継続的な就労を希望する高齢者もおり、働く高齢者も最近ではかなり増えてきています。
高齢雇用は日本に何をもたらしているのでしょうか。
その光と影を考えてみました。
労働者のうち1割以上が高齢者。働きたい高齢者もグングン増加
働く高齢者は681万人!5人に1人の高齢者は、定年後の継続雇用を選択
総務省統計局の最新の労働人口調査では、高齢者の就業者数が着実に増加。2014年時点ですでに681万人もの65歳以上高齢者が働いています。高齢者数が3200万人超となっている現代において、これは5人に1人という数字になってます。

ちなみに、2014年の就業者数全体は6351万人となっており、就業中の65歳以上の高齢者の比率は約10.7%に上ります。
言い換えれば、就業者の1割以上を占めており、今後さらなる高齢者の増加が見込まれることを考えれば、その数は決して無視できない存在といえるでしょう。
8割以上の高齢者が、定年後も「働きたい」
実際に働いている高齢者はもちろん、「働きたい」と望んでいる高齢者も増えています。
総務省統計局が2012年に行った就業構造基本調査のデータを見ると、最近の5年間で高齢者の就業希望者比率が増加。
同調査で最も高齢無業者の就業希望者比率が高かったのは、東京都で17.1%でした。
2007年に実施した前回の就業構造基本調査では約13%だったため、5年間で4%以上も上がっており、上昇傾向が続いていることがわかります。
65歳以上の就業希望割合(男女別)
| 定年後の希望 | 割合(%) | |
|---|---|---|
| 男性 | 継続就業 | 84.7 |
| 就業休止 | 14.1 | |
| 女性 | 継続就業 | 81.3 |
| 就業休止 | 16.9 |
就業希望の高齢者の増加については、都道府県別にみてもその傾向が顕著です。
2007年の総務省の就業構造基本調査の結果と比べても、2012年時点では、47都道府県中、男性高齢者の就業希望比率は36都府県で上昇。
女性高齢者の就業希望比率も、40の都府県で上昇しており、全国的な傾向であることがわかります。
高齢者の雇用促進・就業支援は、国ではなく、自治体を中心に着々

こうした高齢者の雇用を促進するべく、さまざまな政策が動き出しています。
そのなかには、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」の設置や、同機構によるイベントや啓発活動、あるいは調査研究などもありますが、地方自治体による高齢者の就業支援が最も身近な政策だといえるでしょう。
具体的には、高齢者を雇用する企業に対する支援などがそれにあたり、例えば東京の中央区では、「高齢者雇用企業奨励金」という制度を設けて、高齢者を雇う企業に対して経済的な支援を提供。
奨励金の給付にはいくつかの要件が設けられているものの、企業も高齢者を雇用することでメリットを享受できる仕組みだと言えるでしょう。
奨励金の交付要件も見ておきましょう。
まず問題となるのがもちろん、高齢就業者の年齢。
就業者が65歳以上でなければならず、さらには、ハローワーク(公共職業安定所)、ないしはシルバー人材センターから紹介された人が、奨励金の対象となります。
ほかにも、半年以上継続して同一企業で働いていることや、経営者の親族ではないことも、要件として求められています。

一方、奨励金交付金額についても工夫がなされています。交付される金額については、高齢就業者の労働時間と被雇用期間で決まります。具体的には、労働時間を週20時間以上30時間未満とする高齢者を6か月間継続雇用すれば、1人あたり2万円の交付となります。
継続して、同じ高齢者がさらに6か月就業した場合には、3万円という計算です。加えて、週30時間以上働く高齢就業者では、同一の条件でそれぞれ、最初の6か月で4万円、さらに6か月間継続雇用した場合には6万円の交付が実施されます。
こうした高齢者雇用を促進する制度が設けられており、就業を希望すれば高齢者でも職を得やすい環境づくりは着々と進んでいます。すなわち、「働き続けたい」という希望を持つ高齢者に寄り添った社会をつくるべく、さまざまな支援がすでに提供されているのです。
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いろいろな形で支援の仕組みが整備されつつあるものの、現時点では、まだまだ課題もあります。その一つが、就業を希望する高齢者全員が働けるわけではないない、ということです。
2014年の厚生労働省の「高齢者の雇用状況」によれば、希望者全員が働ける企業は70.1%となっています。つまり、まだ約3割の企業では高齢者が定年後の継続就業を希望したとしても、働けない可能性があるということです。

このように、高齢就業者の能力や、職場の環境によって求められることも異なるという難しさもあります。ほかにも、高齢就業者らが職場でどのような役割を果たすのか明確ではないという事情も。
会社の状況にもよりますが、日本労働研究機構「職場における高年齢者の活用等に関する実態調査」の調査によると、高齢就業者には主に、「経験や人脈を活かした第一線の仕事」「専門知識・ノウハウの提供 」「後進の指導・助言的役割」が期待されている一方で、「経験技能を必要としない軽微な仕事 」を求める向きもあります。
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また、高齢就業者の待遇の問題も。わかりやすい例では、高齢就業者の大半が現在、非正規の職員や従業員として働いているという現状があります。
2012年の総務省の労働力調査のデータでは、高齢就業者のうち、雇われている人、すなわち被雇用者は353万人となっており、そのうち259万人が通常の被雇用者です。
加えて、通常の雇用者の69.1%が非正規社員・職員という形態で労働しています。
これは、高齢被雇用者の約半数に上る水準で、大半が不安定な条件で就業しており、正規職員に比べてよくない待遇で働いていることになります。
職場での処遇も、年功序列の賃金体系ではなく、「仕事・役割・貢献度を基軸とする賃金制度」とすることも求められているのが現状です。
さらに、企業は高齢就業者の能力の低下を前提に、シルバー人材の給与を抑制しようとするかもしれませんが、給与水準が著しく低下する場合には、就業を希望する高齢就業者数が著しく縮小する可能性もあります。
ほかにも、高齢就業者が両親の介護が必要になった場合、安定的な就業も困難になってしまいます。そのため、たとえ自社の定年退職間近の社員が就業継続を希望しても、受け入れに抵抗を覚える企業も出てくる可能性があるのです。
高齢就業者については、「加齢に伴い職業能力も低下する」とみられていることもあり、高齢者を雇用すると生産性が低下するのではと思われている面もあります。
高齢者の雇用は積極的に推進され、「数」は確実に増えてきました。
そんな時代背景にあって、ある程度の“待遇”を求めるのであれば、仕事への「質」も求められる時代になるというのは間違いないでしょう(裏を返せば、選り好みしなければ仕事はいくらでもある、とも言えるでしょうか)。
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2020年9月7日 制定