養護老人ホームの3割が平均入所率を下回る結果に
地域によって措置入所数の格差があることが判明
2019年4月、「公益社団法人全国老人福祉施設協議会」が公表した調査結果によると、全国の養護老人ホームにおける平均入所率は89.9%であることが判明。
その一方で、平均入所率を下回る施設が3割にも及んでおり、市町村によって、措置入所数に地域格差があることが明らかになりました。

養護老人ホームを擁する市町村だと、1市町村につき措置者数が66.1人でしたが、ない市町村はたった6人。さらに、施設がない668市町村のうち、108の市町村が措置者数ゼロとなっています。
現在、養護老人ホームに関しては、自治体が予算を控えるために入所者を意図的に施設に回さない「措置控え」が大きな問題となっており、今回の結果は、それが浮き彫りとなった形となりました。
養護老人ホームは生活困窮者が対象
養護老人ホームとは、経済的に困った高齢者を養護し、社会復帰へと導く施設。経済困窮者の養護を目的とするため、基本的には、自立できる人が入所対象です。そのため、介護サービスは基本的には行っていません。
介護職員の配置についても義務ではなく、介護が必要なときは施設に所属する職員と相談のうえで、外部のサービスを利用するということになります。
介護が目的でない以上、要介護度が重度になれば、必然的に養護老人ホームでは対応できなくなりますから、ほかの専門的な施設へ転居を勧められます。
入所するための費用ですが、生活困窮者のための施設ですから、入居一時金は基本的になく、月額の費用はゼロから14万円。資産・所得が低い場合は、居住費および食費の軽減も受けられるようになっています。
養護老人ホームに入るには、まず市区町村の窓口や、居宅介護支援事業所に相談し、入所基準を満たしているかを相談。
もし満たされていたら市区町村の窓口に申し込みを行います。
その後、入所調査を受けて「入所判定委員会」が審査。
審査が通れば養護老人ホームへの入所が可能となります。
定員割れでも養護老人ホームに入所できない原因「措置控え」
条件を満たしていても入所できない理由とは
養護老人ホームと役割の似ている施設に、特別養護老人ホーム(以下特養と記載)があります。
特養は要介護度が重度の方しか入所資格が基本的にはなく、資格があったとしても希望者が多いため、入るには時間がかかります。
一方で、養護老人ホームは要介護度が低い方でも入所することができ、入所待ちも基本的にはありません。
養護老人ホームは生活に困窮している人が主な入所対象者。
そういった意味では養護老人ホームの入所条件は、特養と違ってゆるく満たしやすいものとなっています。
しかし、特養の場合は入所条件を満たせば、待機という形にならない限りは誰でも入所できますが、養護老人ホームはその限りではありません。
入所の可否は市区町村によって判断されるので、そこで拒否をされてしまったら、入所条件を満たしていたとしても、入所はできないのです。
根拠を挙げると、養護老人ホームの入所対象とすべき生活に困窮した高齢者は増加しており、生活保護を受給する高齢者は増加傾向にあります。しかし、養護老人ホームの施設数・入所者数は、減少傾向にあるのです。

条件を満たしていたとしても、入所できないのは「措置控え」が原因としてあります。
「措置控え」とは、自治体が予算を抑えるために措置(入所)を拒否すること。
適切な判断によって入所の拒否が下されたならまだしも、「措置控え」によって入所できないケースが現在頻繁に起きていると問題になっているのです。
一般財源化されたために自治体が費用をすべて持つことになった
こうした「措置控え」が起こる原因として、ふたつの理由が挙げられます。
まず2005年に三位一体改革によって、保護費用が一般財源化されたことです。
これによって、自治体は財政がかつてないほど苦しくなり、定員割れが起こっているにもかかわらず、養護老人ホームの「措置控え」までしなければならなくなりました。
生活困窮者を救済する代表的な制度として生活保護が挙げられますが、こちらは費用の4分の3が国から支給されるので、自治体が費用を全額負担する養護老人ホームよりも多く推奨されるとのこと。
養護老人ホームにひとり入所するだけで、生活保護4人分の財源が必要とするので、「措置控え」にいっそう拍車がかかるわけです。
もうひとつの理由として、自治体の受付職員に社会福祉士や精神保健福祉士など、福祉の国家資格を持つ専門職が少ないこともあるでしょう。
本来、生活保護よりも養護老人ホームの入所が適切な方はたくさんいるのに、専門職でないからそこまで目が届かないということです。
措置控えが続くと8050世帯の生活を脅かすことに
8050世帯は年々増加傾向にある
この措置控えが今後も続くことで、被害を受けるのは8050世帯です。
8050世帯とは、50代の子どもを、80代の親が支えている世帯を指します。
8050世帯の収入はほとんどが親の年金なので、生活が困窮している場合がほとんど。
つまり、将来は措置対象になる可能性が高いわけです。
8050世帯は中高年の引きこもりによって構築される世帯であり、年々増加しています。内閣府はこの3月、現在我が国における引きこもりの数は、61万人を突破したと発表しました。

そんな状況の中、自治体は措置控えによって養護老人ホームに入所措置数を減らしているのはこれまで述べてきた通り。定員が減るということは、今後増えていくであろう8050世帯の受け皿も減少していくということです。
高齢者にくわしい自治体の職員が少ないことが問題
養護老人ホーム受け入れによる自治体の問題点としては以下があります。
まず挙げられるのが、「入所判定委員会の開催される回数に限りがある」ということです。
通常、入所判定委員会は市町村や地域包括支援センターに設置されていますが、この委員会は、自治体の予算措置を伴うことから、限られた回数しか開催されないのです。
そしてこのことが、緊急を要するような生活が困窮している高齢者の受け入れを困難にしています。
もちろん、判定委員会は「老人ホームの入所措置等の指針」として、養護老人ホームの求めに応じて開催できることに条文上はなっていますが、実質的に機能不全に陥っていることは否めません。
また、「自治体の調査機能が脆弱化している」こともあります。
一般社団法人日本総合研究所が2014年に発表した調査によれば、2000年に介護保険制度が施行されてからというもの、自治体における高齢者福祉担当職員が措置の対象者を調べたり、そうした高齢者の心身や生活をアセスメントする技術がないことを指摘。
もしそれが事実なら、自治体の福祉セクションそのものが心肺停止状態に陥っていることになります。
困窮高齢者の「最後の砦」ともいわれる養護老人ホーム。定員割れで潰れる施設があるにもかかわらず、入所資格のある人が入れないのは不条理というほかなく、改善すべき事態としかいいようがありません。
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2020年9月7日 制定