農業分野を通じて障がい者に社会復帰を促す農業連携とは
政府が農福連携する事業所を3,000ヵ所増やすことを目標に
6月4日、政府は農業分野における障がい者の活躍を通じて農福連携を展開することで、彼らが社会進出する政策をまとめました。
農福連携とは、障がい者が農業分野で活躍し、自信と生きがいをもって社会参加できるように支援する取り組み。農林水産省はこの農福連携について、農業における課題と、障がい者の福祉における課題、双方の課題解決に繋がるメリットがあると謳っています。
この取り組みについて政府は、農業事業者と福祉施設との間で「それぞれのマッチングを進める取り組みを充実させる」としています。
障がい者による作業を補助する器具を入れるなど、環境整備にも力を入れていくとのこと。
今後、農福連携を積極的に取り入れることで、政府は現時点では日本人の大半にとって耳慣れない「農福連携」という取り組み自体の認知度を広げることも目的としています。
最終的には、2024年までに3,000もの農福連携に取り組む団体を増やしていくことを目指すとしています。
背景には農業の人材不足があった
現在、日本農業従事者数は減少の一途をたどっています。
農林水産省による統計資料『平成25年度食料・農業・農村の動向』によると、2013年度調査の段階で基幹的な農業従事者は1995年からの20年足らずで約半数に減少。
従事者の平均年齢も66.5歳と高齢化が進み、後継者もいないことから、人材を募っています。

その一方で、高齢の障がい者による勤労意欲は年々増加しています。現に、2007年度と比べて2016年は、障がい者による新規求職申し込み件数は全体で10万人も増加しているのです。
しかし、日本ではまだまだ障がい者にとって、働き口がないというのが現状。あったとしても、彼らが自立できるにはほど遠い給料しか支給されません。
日本は生活保護や生涯年金などの分野は世界レベルでみても充実しています。
ところが、障がい者の就労状況については充実という言葉からはかけ離れた段階にあり、一般的に企業も障がい者を労働力として積極的とはいえない状況です。
つまり、障がい者にとって適切な労働環境で働ける場所が少ないのです。
農業の人手不足と障がい者の雇用不足、これらを同時に解決する策として、農福連携という考え方が生まれました。農家側の人手不足を解消し、福祉側の働く場所を開拓できれば、一挙両得というわけです。
農福連携における環境整備はまだまだ不十分
農業活動は就労訓練として役に立っている
農業と福祉、両方の需要を解消するために生まれた農福連携ですが、果たしてお互いに役目は果たせているのでしょうか?
障がい者サイドでは、障がい者就労施設において農業に取り組んだ結果、「就労訓練ができるようになった」との報告や、「地域住民とのコミュニケーションができるようになった」との報告が上がっています。

農業サイドでは「人材として貴重な戦力になる」と述べた農家が80%にも上っているとのことで、場所によっては、農福連携は地域活性化のきっかけにもなっているようです。
例えば、福井県の知的障がい者施設では農福連携によって耕作放棄地の再生への取り組みに積極的に励み、担い手のない農家の農地を借り入れ、農産物を栽培しています。
その地域にはスーパーマーケットがないため、その機能を施設が引き継ぐことによって、地域を活性化させているようです。
農業マニュアルと土地の確保が課題
労働力の確保や修業機会の拡大といったニュースが前向きな空気を生み出している一方で、課題も残ります。
農業サイドでいえば、働く障がい者のための作業マニュアルや、指導方法、農業・福祉の支援制度などといった知識や理解の不足がまず挙げられます。
さらに、障がい者の安全性に配慮した設備や道具類の整備、トイレなどの環境整備なども課題。
福祉サイドでは、農地・支援制度などに対する知識や理解の不足が挙げられています。
また、農福連携を行う際に必要な農地の確保も課題として上がっています。そして、これが一番の問題なのですが、農家側と福祉側との双方の日常的な接点が少ないということが上がっています。相互の理解が進まず、会議が円滑にできないのです。
農福連携を取り持つ指導役「ジョブコーチ」とは
政府、農福連携のために指導役育成へ
この「相互の理解が進まない」という問題に対して、政府は農業・福祉のどちらにも精通している指導役を育成することにしました。農福連携の指導役となる人材の育成をすべく、まず国は農業研修施設を整備する方針を立てたのです。
農林水産省は、2019年度の当初予算で10億円を計上、茨城県水戸市の農林水産研修所の中に障がい者向けの園芸施設を設けることを発表しています。
ミニトマトやリーフレタスなどを栽培することになっているというこの園芸施設は、バリアフリー対応の農業用ハウスや宿泊棟を備えているとのことです。
ここに、初年度はまず3人の障がい者を雇用する見通しだといいます。そして、2年目は10人程度の障がい者を雇用。収穫だけでなく、包装、設備の洗浄などの作業にも携わって貰うとのことです。
さらに、施設内には、都道府県の職員や農業法人や農業協同組合の職員なども受入れ、農作業の現場において作業指導を行う「ジョブコーチ」を育成します。ジョブコーチは、一定期間の研修を経た後、全国の農業の現場で障がい者の就労をサポートする流れです。

一般の農家や農業生産法人が障がい者に働く場を提供する動きは十分に広がっているとはいいがたく、それなりの環境整備が今後必要となっていくでしょう。
農福連携は介護施設の新たな収入源としても注目されている
農福連携について、現状ではまだまだ問題が多いというのが現状です。
「農福連携」の認知度がそれほど広まっていないこともあり、一般の農家や介護施設、農業生産法人が障がい者に働ける場を提供できる数には限りがあります。
また、多くの都道府県でまだ専用の問い合わせ窓口もないなど、初歩的な設備も整ってはいません。
しかし、その一方で、介護施設の新たな収入源となる可能性も大いに秘めていることは否定できません。農福連携に積極的な自治体が徐々に増加しているのは、この取り組みに将来性を見出している農家や事業所が少なからず存在するからと考えられます。
いずれにせよ、農福連携が失敗に終わらないためには、「農」「福」双方に通じた人材をどれだけ見つけられるかにかかっているのは間違いないでしょう。
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2020年9月7日 制定